ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「極限水域 ファースト・アフター・ゴッド」 孤独を楽しむ時に〔56〕 

「極限水域 ファースト・アフター・ゴッド」 
ロシア産潜水艦モノ
 



【原題】Первый после Бога
【英題】FIRST AFTER GOD  
【公開年】2005年  【制作国】露西亜  【時間】97分  
【監督】ヴァジリ・チィギンスキ
【制作】
【原作】
【音楽】アレクサンドル・ザセピン
【脚本】イリナ・アブラメンコ
【言語】ロシア語
【出演】ドミトリー・オルロフ(マリーニン大尉)  ウラジミール・ゴスティウキン(旅団長)  ニーナ・ルスナローヴァ(チーフ)  ミハイル・ゴミアスヴィリ(シャラビゼ)  リザ・ボヤルスカヤ(ターニャ)  イリーナ・ヴィエルクランド(アーニャ)  セルゲイ・ゴロブチェンコ(ガリエフ)     

【成分】かっこいい 不気味 切ない 勇敢 悲しい 絶望的 1944年 独ソ戦 第二次大戦

【特徴】ロシア産の潜水艦モノ海洋アクション。
 出身階級が貴族であるためソ連秘密警察から睨まれながら任務を遂行していく若き艦長の奮闘が描かれている。

 どちらかといえば、「Uボート」のように潜水艦内部の生活描写には重心が無く、「眼下の敵」のような海洋アクションでもなく、貴族階級出身ゆえソ連邦では不利な立場の艦長とソ連秘密警察の少佐との緊張感が主軸なので、潜水艦モノとして観ないほうが良いかもしれない。

 なお、Yahoo!などの映画サイトでは原題を「PERVYY POSLE BOGA」と表記しているが、これは英語ではない。ロシア語のローマ字表記である。意味は邦題では副題となっている英語タイトルと同じである。意訳すると「神様の次に尊いもの」、つまり語り部の少女にとっては主人公のマリーニン大尉を指す。

【効能】プラトニックな恋愛感情を抱く少女に共感。プラトニックな恋愛感情を抱く少女に萌え。

【副作用】全体に陰鬱で平板な描写が続くので気が滅入る。盛り上がりに欠け疲れる。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
国民性の違い? 
ロシアのエンタメ戦争映画は 
どこか暗くてねちっこいところがある。


 ロシア産潜水艦映画である。
 私の見解を先に行ってしまうと、何もかも安っぽいB級海洋アクションと言ったほうがいい。
 魅せ場であるはずの戦闘場面は中途半端で、2005年制作であればもう少しCGなどで誤魔化せたのではないかと思う。艦内生活の描写も、潜水艦映画の金字塔「Uボート」の足元にも及ばない。
 脚本もこなれていない。ヒロインらしき人物が2人もいる。主人公とヒロインたちとの関わり方が私にはどうも消化不良のような感がする。
 また主人公の身内には反逆者がいて秘密警察のGPUに睨まれる。これはロシア的といえばロシア的なのだが、95分の尺に入れるにはもう少し噛み砕く必要を感じた。

 パッケージから見てもチープ観を感じるのだが、敢えて観たのはアメリカ映画との違いを楽しみたかったからだ。
 同じ戦争映画でも、アメリカ映画とロシア映画とでは雰囲気は全く違う。アメリカは「コンバット!」が代表的で基本的に明るくて開放的なイメージがある。ところがロシア映画は旧ソ連時代を引きずっているのか、それともスラブ人特有の文化なのか、陰があってねちっこい。
 アメリカ映画が乾燥した夏の太陽を思い浮かべれば、ロシア映画は湿っぽい冬の弱い陽ざしを感じる。

 主人公は歳の頃30代前半くらいの若い海軍大尉で潜水艦の艦長を務めている。少し陰があってややくたびれ感のある士官、任務中は寡黙で仕事一筋という感じで、艦が危機的状況でも表情は殆ど変わらない。
 ところが陸に上がるとけっこう色男ぶりを魅せて羽目を外す。街でヒロインの一人フランス人女性と知り合いベッドイン、出撃命令が出ても無視してしまういい加減さ。代わりに出撃した潜水艦が返り討ちにされてしまう。
 暗い生い立ちがありそうな渋い青年艦長というキャラで登場したのに、このギャップは観ていてけっこう嬉しくなる。

 そんな彼をGPU少佐(余談1)がネチネチと監視する。髭面のチャイコフスキーみたいな顔で、いつも何かに不満げでだるそうな表情で含みのある言葉を発しながら陰険に絡み、まずは「大尉、許可をとっていない銃を持つのはまずい」と大尉愛用の拳銃を取り上げる事から干渉を強めていく。
 主人公の父親は帝政ロシア時代の海軍提督、兄は白系ロシアの軍人、GPU少佐は大尉を獲物と踏んで虎視眈々と罠を仕掛け、それにのってしまった主人公は逮捕され拷問にかけられる。最初から冤罪で締め上げ自分の手柄にする魂胆だ。

 驚いたのは主人公の上司たちである。英雄の称号を持つ海軍きっての稼ぎ頭を奪われてはたまったもんではない。日ごろからGPUの干渉で士気が下がり鬱陶しく思っていた。
 護送船に追いつくと艦隊司令官の権限で主人公を奪い返す。主人公は「容疑者」の身分のまま艦長に復帰、大尉より歳上らしい副長が「艦長不在時異常なし」と大声で報告、艦の留守を守る部下たちは艦長への忠誠心を満面に魅せて迎え入れる。

 主人公の潜水艦は激闘の末ドイツ艦隊に勝利し大破したまま母港に帰還。司令官をはじめ大勢の戦友たちは埠頭に集まり歓声を上げる。精も根も尽き果てた風情の大尉はふらふらと上陸、ところが生還を喜ぶ司令官の顔が曇る。横から陰険そうなGPU少佐が歓喜に水を差すように割って入ってきたのだ。
 ところが少佐は「大尉、許可をとっていない銃を持つのはまずい」と言いながら押収した実弾入りの拳銃をそのまま返却し去っていった。さすがに獲物にするのはまずいと思ったか。

 なぜ「first after God」なんて英語の副題がついたのか? 映画の冒頭はレニングラードから疎開してきたハイティーンの少女が登場する。彼女がいわば語り部として物語を進めていく役割を担うのだが、最後まで主人公と直接関わる事は無い。
 疎開先へ向かう船であるオバサンと知り合い、口利きで軍港の士官食堂らしきレストランのウエイトレスとして働く。そこで主人公に一目惚れして遠くから眺めるだけなのだ。
 彼女にとっては神に次いで尊い存在という事でつけられた副題なのだが、彼女の存在感が希薄なので感情移入できない観客にとっては、「そうなんや」としか言いようがない。

 ロシアは古き良き日本みたいにプラトニックな恋愛感情を尊重している国民性なのかな? フランスやハリウッドなら雄と雌の即交尾になってしまうイメージだが。
 釈然としないが、こういうのは嫌いではない。

(余談1)国家政治保安部。秘密警察みたいなもの。反乱分子だけでなく反乱分子になる可能性があれば現時点では無実でも逮捕する。
 スターリンの死後に解散となったが、スタッフの多くはそのままKGBに移った。



晴雨堂スタンダード評価
☆☆ 可

晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作



 
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