ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

参院安保特、成立前提で検討資料明るみ。今こそ統帥権干犯問題の戦訓を思い出そう。 近頃の現象[一一六五] 

<参院安保特>成立前提で検討資料 
防衛省「2月施行」


 共産党の小池晃氏は11日の参院平和安全法制特別委員会で、防衛省統合幕僚監部が安全保障関連法案成立を前提に作成したとする内部資料を提示した。資料は「最も早いパターン」として法案成立を8月、施行を来年2月とし、米軍による南シナ海での情報収集活動への自衛隊の関与▽南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)での駆けつけ警護・宿営地共同防衛の実施--などを「検討事項」として記載していた。(毎日新聞)

【雑感】ざっと考えて以下の問題点を突っ込まれても仕方がない。

 中谷防衛大臣の国会答弁「承知していない」→事実なら文民統制崩壊の疑い。

 法案成立を前提にロードマップ→自衛隊制服組による国会軽視。

 自衛隊を「軍」と表記→憲法9条の建前崩壊。

 内部資料漏洩→特定機密保護法抵触の可能性。

 新聞には総理大臣の動静を伝えるコーナーがある。そこで総理はどこへ行き誰と会ったのかをこと細かく伝えている。私はその記事に目を通していなかったが、知人筋からの情報では頻繁に安倍総理は自衛隊の高級幹部と会っていた事が報道されていたらしい。
 という事は、安倍総理の内々の指示で今回の安保法制成立後ただちに動けるよう計画書を作った、と考えた方が自然だろう。

 何もかも決まってから動くのではなく、内々に段取りを組んで準備する事は日常よくある事で、これを「軍部暴走」とか「国会軽視」とか「文民統制崩壊」との批判に不快感を抱く者は少なくないと思う。
 臨機応変の段取りやないか、自衛隊という看板は建前で国際法上は軍隊であるのは周知の事実やないか、そんな事より小池晃議員の行動は特定機密保護法に抵触するんやないか、と私が安倍氏のシンパなら反発する。

 しかしである。我々日本人には苦い戦訓があるのだ。
 それは戦前に起こった統帥権干犯問題である。これによって当時の大日本帝国憲法が無力化して軍部独裁の状態になってしまった。


 よく欠陥憲法といわれている大日本帝国憲法だが、成立当時の19世紀社会ではそれなりによくできた憲法だった。それ以前の日本は軍司令官(将軍)が政府(朝廷)から実権を奪って幕府(司令部)が国政を牛耳る時代が数百年単位で続いてきた。そのため軍の統帥権を天皇が持つことに規定した。勝手に下部組織が軍を掌握して政府をつくらせないためだ。
 軍の大権を保持している天皇も好き勝手に行使はできない。帝国憲法により議会の承認が必要だったからだ。

 ところが第一次大戦後、世界で軍縮の機運が高まった。日本も軍縮を断行する(余談1)わけだが、国際会議での取り決めは現代の私が見ても欧米列強に都合よく、日本には都合が悪い不公平な内容だった。当然、軍部は怒り心頭で納得しない。そこで統帥権を持ち出して内閣に対抗する。軍の大権は天皇陛下にある、統帥権の無い総理大臣が勝手に天皇陛下の軍隊を削減するのは統帥権干犯ではないのか、と。(余談2)

 この統帥権干犯問題は時の野党(余談3)も便乗して内閣を追及していった。統帥権を政争の具に使ったのだ。かくして、その後の歴史が示すように統帥権は独り歩きをして軍部を暴走させ帝国憲法は有名無実化する。
 総理大臣とは陸軍大臣と海軍大臣も一員として参画する内閣の主宰者であり、それは帝国憲法によって規定されている。なのにこの一件以降の総理から軍事にかかわる権限を奪う形となった。帝国憲法によって帝国議会は天皇の統帥権行使を承認する機関であったはずなのに、統帥権干犯を口にした鳩山一郎らは自らそれを放棄した格好になったからだ。

 そして今回の小池晃議員の行動が「特定機密保護法」に抵触する声が出ている事は、一連の法律の危うさも露呈している。日本では共産党が与党のチェック機関を果たしてきた。旧社会党や社民党、あるいは民主党ではない。高級官僚が内部リーク先として共産党を選ぶ、つまりそれだけ信頼されている政党でもある。

 右派から見れば共産も社民も同じ反日勢力に見えるだろうが、実は全く似て非なるものである。共産党は革命政党を名乗りながら早々と全学連や全共闘などの学生運動から手を引き、文化大革命の中国や金日成の北朝鮮とも交流を絶ってきた。代わりに深入りして痛い目を見たのが社会党や社民党である。共産党は頑迷なイメージとは裏腹に、非常に目端の利く政党である。
 共産党が存在するからこそ、行政へのチェック機関たる存在が担保されてきた。だが「特定機密保護法」を持ち出されると国会や共産党にチェック機能を奪う事になる。統帥権干犯問題とは違う形での国会無力化が復活する。

 この統帥権問題を戦訓にしなければならない。政権を持つ者が憲法を無力化してしまうとどうなるかを戦訓としなければ、それは亡国の挙である。

(余談1)戦艦のトン数上限の取り決めに従って、戦艦として建造中だった赤城や加賀が航空母艦に変更されたのは有名な話。その結果、第二次大戦前夜に質量ともに世界一の空母を擁する機動部隊が誕生した。

(余談2)映画「226」で反乱軍将兵らが「我々は〇〇閣下の軍隊ではありません。天皇陛下の軍隊です」という台詞があるがそれと同じ理屈だ。

(余談3)このときの野党急先鋒は立憲政友会の鳩山一郎、鳩山由紀夫氏の祖父である。このとき追及を受けた総理は濱口雄幸、まもなく右翼の襲撃で重傷を負うが、その濱口に鳩山一郎は登院要求を繰り返した。濱口は無理を押して登院したため命を縮めた。

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軍縮の理想に燃える濱口雄幸総理を主人公とした小説。TVドで北大路欣也氏が濱口に扮してドラマ化されている。


 
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[ 2015/08/12 01:34 ] 日誌・・近頃の現象 | TB(0) | CM(0)
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