ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「しあわせの雨傘」 カップルで愉快になろう〔14〕 

しあわせの雨傘」 
ジャージのオバサンになった 
カトリーヌ・ドヌーヴ
 



【原題】POTICHE
【英題】  
【公開年】2010年  【制作国】仏蘭西  【時間】103分  
【監督】フランソワ・オゾン
【制作】
【原作】ピエール・バリエ ジャン・ピエール・グレディ
【音楽】フィリップ・ロンビ
【脚本】フランソワ・オゾン   ピエール・バリエール   ジャン・ピエール・グリディー
【言語】フランス語
【出演】カトリーヌ・ドヌーヴ(スザンヌ・ピュジョル)  ジェラール・ドパルデュー(モリス・ババン)  ファブリス・ルキーニ(ロベール・ピュジョル)  カリン・ヴィアール(秘書ナデージュ)  ジュディット・ゴドレーシュ(ジョエル)  ジェレミー・レニエ(ローラン・ピュジョル)  エヴリーヌ・ダンドリー(-)     

【成分】かっこいい コミカル ゴージャス 楽しい 笑える 1977年 フランス

【特徴】「シェルブールの雨傘」の美少女カトリーヌ・ドヌーヴ氏がジャージがよく似合う有閑オバサンとなって登場する話題作。

 邦題は主人公の夫が雨傘工場を経営する設定のため、ドヌーヴ氏の代表作である「シェルブールの雨傘」とかけて付けられたようだが、作品内容とはあまり関係ない。
 とはいえ、この邦題のおかげで物語の展開が予測できそうでできなくする効果がある。

 全体にコミカルで明るい雰囲気で日本の少女漫画のラブコメになりそうな内容だが、そこはオゾン監督、家族のありようを考えさせられるラストへと流れる。
 舞台設定は70年代だが、フランス語を解する知人によれば劇場公開時のフランスの政界を風刺しているとの事。

【効能】自分自身に裏付けの無い自信がこみ上げる。

【副作用】家族秩序に軋みが生じる。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
さすが仏映画は政治的だ。

 主人公は「シェルブールの雨傘」(余談1)でヒロインを演じた美少女カトリーヌ・ドヌーヴ氏、あれから50年近くが経過、本作撮影時は70近いお婆さんなのだが若々しい。赤いジャージ姿でジョギングする姿で、すっかり所帯じみた主婦キャラを強調しているのだが、還暦前の元気なオバサンにしか見えない。

 予告編から、日本の少女漫画のラブコメにありそうな内容に思えた。
 カトリーヌ扮するヒロインは雨傘の製造販売を手掛ける老舗の令嬢、夫は日本でいう入り婿でヒロインと結婚して会社の経営権を握りバリバリ金儲けをする。性格は典型的な亭主関白だ。ヒロインは夫の方針に従って貞淑な良妻賢母型の貴婦人の型に甘んじる。
 成人した子供が2人いるが、どちらかといえば父母の方針には批判的、取り分け娘は今どきの若奥さんで、夫婦仲は倦怠期ゆえ離婚を検討中、母親を人生の悪い見本と思っている。

 ところが、夫が病気で倒れて入院、代わりにヒロインが会社経営を担う羽目となったところで話が急展開。
 最初は慣れない会社経営で社員たちからの嘲笑を浴びたが、ヒロインの主婦目線とヒロインの家庭的会社経営方針が実り労働争議でギスギスした雰囲気から職場環境が急速に明るく楽しいものとなり、人心の掌握と会社経営の立て直しに成功してしまう。どちらかといえば、距離を置いていた娘や息子も協力するようになった。

 私も含め多くの観客は、主客転倒・下剋上、意外な才能に目覚めた温室育ちの主婦が社員の支持を背景に社長として君臨し、夫は従順な主夫となるところでエンド、と思っただろう。日本のホームドラマや少女漫画であれば、当然ここで終幕である。
 ところがそれは中盤までの話、後半が予想を裏切る展開だった。さすがフランス映画、さすがオゾン監督。

 後半から亭主関白の夫が巻き返しを謀る。その展開上で明らかになる若き日のヒロインの奔放な愛の遍歴。予告編では昔の彼氏は肥え太ったドパルデュー氏扮する如何にも労組活動家風の市長(余談2)だけだったが、出は出るは交尾の思い出。少なくとも人たらしの才能は昔から発揮していたのではないのか。
 ありがちな利害関係とはいえ、なんと娘はヒロインとの良好な関係を捨てて裏切り、株主総会での緊急動議でヒロインは社長を解任されてしまう。

 ここで終わりと思いきや、ヒロインは夫と離婚調停に踏み切るとともに社長の経験を活かして国政選挙に討って出る。嫉妬心からネガティブ情報を流してしまった市長も国政に討って出ていたので対立候補、息子は父を捨てて崇拝するヒロインの選挙参謀として活躍。娘は夫とのヨリを戻し専業主婦時代の母親を懐かしみ、母親の寝た子をおこしてしまったことを悔やみ泣いて離婚に反対する。
 選挙は見事勝利、敗れた市長は未練たらしく「君の敵は俺より君の夫だ」と電話で言ってくる。2人の電話会談に息子が割って入って支持者たちに顔を見せるよう促される。
 ヒロインは支持者たちと大団円、勝利の凱歌。不思議なハッピーエンドだった。

(余談1)ミュージカル嫌いの私だが、これはあまり違和感なく観れた。何故なら、全台詞が歌だからである。「ウエストサイド物語」のように突然歌いだしたり踊ったりはしないのでストレスは少なかった。プラットホームでの別れの場面が意外にあっさり。プラットホームの別れの場面は名シーンと讃えられ、私もその劇中歌は小学生の頃にテープに録音してよく聞いていた。
 当時のカトリーヌはまだ10代、少し頬がピンク色の横顔は素直に美しいと思った。

 なお、本作の邦題「しあわせの雨傘」は内容とは全く無関係だが、中盤までは邦題から連想する展開で物語は進む。
 原題の「POTICHE」は字幕では「飾り壺」と訳されている。ようするに特に道具として使っている訳ではないオブジェとして置いているモノというニュアンスなのだろうか。この単語、英語にもなっていて「首の細い壺」という意味に変化している。

(余談2)少し見ないうちにえらい肥え太りよった。が、たしかに労組活動家らしくていい。私が知る労組活動家たちもけっこう肥えた人が多いからだ。なにしろ多忙でよく人と会うので慢性的に睡眠不足と暴飲暴食になりがち、健康に気を遣ういとまが無い人が多い。



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