焦点:難民危機が問うEUの真価、
再び深まる「東西の亀裂」 欧州は現在、中東やアフリカ、アジアから流入する難民にどう対応するかをめぐり、各国間で深い亀裂を抱えている。難民問題をめぐる各国の不和は欧州連合(EU)の価値を揺るがし、ユーロ圏改革などへの一致団結した行動力も弱める可能性がある。(ロイター)【雑感】トルコの浜辺に打ち上げられた3歳児
アイラン君の姿。冷たい波が容赦なく押し寄せる波打ち際で俯せになって寝ているような姿は世界中に配信され、難民対策に渋々の態度に見えたイギリスなどの国々の背中を強打する効果を生む。写真を撮影した記者や幼児の父親の念が通じたかのように世論が盛り上がりつつある。
日本の大手マスコミの多くは打ち上げられた
アイラン君の姿にボカシを入れてよく見えないようにしていたが、マスコミよりも先にネット上ではボカシ無しの写真が拡散していた。私も義憤から中東のメディアであるアル・アラビアのTwitterにあるボカシ無しの写真を見つけると即座にリツイートした。
義憤から拡散させたのだが、Twitter上で問題の写真が溢れるにつれて気分が悪くなった。動悸が激しくなり正視できなくなっていく。というのも、私の息子も3歳で背格好や着ている服などがよく似ていて、大きな頭に短い髪の特徴が酷似していて、そのうえ息子の就寝スタイルは俯せなので、波打ち際の男児の写真がネット上やTVで拡散・報道されるたびに胸が苦しくなるのだ。これは比喩ではなく、まことに生理現象として気分が悪くなってしまった。
アイラン君の父親は取材に対し「俺の息子をよく見ろ」と言ったそうである。その結果、世界中から共感が湧き起こり、これまでドイツだけが積極的に難民受入姿勢を示してきたが、EU全体としても動かざるを得なくなった。ハンガリー政府は
シリア難民を足止めしていたが、ようやく重い腰を上げて国境線を開けた。
さて、たぶん多くの日本人は遠いヨーロッパの出来事だと思っているだろうし、3歳児の子供を持つ多くの親は日本に生まれて良かったと思っているはずだ。
しかしこれらの悲劇は他人事ではなく明日は我が身なのだ。たとえば朝鮮半島は相変わらずキナ臭い。有事となれば朝鮮半島から難民が日本に向けて押し寄せるのは目に見えている。 北朝鮮が何か行動を起こすたびに日本では極右市民らが在日コリアン排斥運動を起こす。さらに北朝鮮の金政権打倒を声高に主張したりもする。私の周囲にも同様の論を展開する者が複数名いて、そのつど私は反論してきた。
「そんな事をしたら日本は手痛いしっぺ返しを食らう。北朝鮮から難民が大挙押し寄せるぞ」「朝鮮学校を必要以上に痛めつけたら、難民児童の教育は誰が担う?」
この私の主張は左右の知人からけっこう攻撃を受けたものだ。右の御仁からは「金正日に迫害されている人達を放っておけというのか卑怯者」「北の難民なんて韓国に責任がある。日本に義理は無い」「難民に日本が乗っ取られる」などと頭ごなしに言われたし、左の御仁からは「お前は銭勘定している」などと人格攻撃された。
経済と人道の両方を考えるべきで、どちらか片方だけしか考えない人間のほうが無責任である事を私は体験的に思い知っているのでこの考えは断固として変わることはない。そして左右双方も人道と経済のバランスを欠いているので信用しない。 今回の
シリア難民にしても、一連のアラブの春のしっぺ返しでもある。欧州諸国はこぞって歓迎したし、日本も手放しで歓迎する論調で占められていた。が、私はその後の混乱のほうが気になって仕方がなかった。結局、私が危惧したようにもはや中東諸国は気軽に観光できる国々ではなくなってしまった。
シリア難民を取材するニュース映像を見ていると、流暢な英語でインタビューに答える難民が目立つ。平和であれば、そこそこの生活水準をおくってこられたのだろう。
アイラン君たち家族も平和であれば散髪屋の家庭だったし、カナダに親族がいる。私の連れ合いは美容師でドイツに親戚がいる。共通のキーワードが多いということは、それだけ我々と同じような生活を営んできた庶民ということなのだ。
欧米は安易にアラブの春を応援した結果、中東から難民が押し寄せるようになってしまった。同様に朝鮮半島の問題を安易にとらえるべきではない。もし難民が日本に押し寄せたら、日本は受け入れていくしか道はない。右派がいくら吠えても国際世論の前には吹けば飛ぶ醜いものでしかないことは
アイラン君の一件で思い知らねばならない。
そして有事が起こる可能性があるのは北朝鮮だけではない。福一の廃炉が失敗したらどうなるのか、あるいは新たに福一級の事故やチェルノブイリ級の事故が起こったら、我々日本人が難民となる。 明日は我が身だ。明日は我が身だからこそ、善行をおこなうことで有事の際の根回しをやっておかなければならない。
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難民80万人を受け入れるとドイツの財政負担は2兆円近くになるそうです。幾ら欧州随一の経済優等生でもこの負担はとても無理でしょう。
ドイツの一般市民からも不満や批判が既に多く出始めています。この問題はヒューマニズムだけでは到底解決しそうにありません。ましてドイツ以外の国では尚更です。
しかし、ナチスに対する反省からドイツは難民宥和策をとったので多くの難民が他国ではなくドイツを目指す、これこそ歴史の因縁とでも言うべきか・・・