ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「突撃」 社会を冷笑したい時に〔15〕 

突撃」 
意外にストレートな反戦映画。

 

 
【原題】PATHS OF GLORY
【公開年】1957年  【制作国】伊太利  【時間】86分  
【監督】スタンリー・キューブリック
【原作】ハムフリー・コッブ
【音楽】ジェラルド・フリード
【脚本】スタンリー・キューブリック カルダー・ウィリンガム ジム・トンプソン
【出演】カーク・ダグラスダックス大佐)  ラルフ・ミーカー(パリ)  アドルフ・マンジュー(ブルラール将軍)  ジョージ・マクレディ(ポール・ミロー将軍)  ウェイン・モリス(ロジェ中尉)  リチャード・アンダーソン(サンオーバン少佐)  ティモシー・ケリー(モーリス・フェロール二等兵)  スザンヌ・クリスチャン(歌手)  バート・フリード(ブーランジェ)  ジョセフ・ターケル(ピエール・アルノー二等兵)  ジェリー・ホースナー(-)  ピーター・カペル(-)  エミール・メイヤー(-)  ケム・ディブス(-)
    
【成分】悲しい 勇敢 知的 絶望的 切ない 第一次大戦 1910年代 フランス 英語 白黒映画 
       
【特徴】第一次世界大戦時、フランス軍とドイツ軍が塹壕を掘って対峙する前線を舞台に繰り広げられる、狡猾かつ冷酷な軍人官僚と現場指揮官の闘いを描く。キューブリック監督にしては素直な反戦映画に仕上がっている。
 カーク・ダグラス氏は制作と主演を兼ねる。脚本をめぐってカーク・ダグラス氏とスタンリー・キューブリック氏はかなり険悪な対立をしたらしい。作品内容はカーク・ダグラス氏の主張が通った形のようだ。
  
【効能】官僚の狡猾さと冷酷さを痛感。
 
【副作用】意外に素直な反戦映画なのでキューブリックというブランドを期待して観た人はがっかりするかもしれない。
   
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
キューブリック青年と
プロデューサー・カーク・ダグラスが大喧嘩

 
 青年時代のスタンリー・キューブリック監督が描く反戦映画の秀作であり、3年後の傑作「スパルタカス」の監督を担当することにつながる作品である。(余談1)しかし、彼が巨匠として手掛けた作品は独特の捻りを効かせているが、この「突撃」は意外にも軍隊組織の批判をストレートに素直に描写している事に驚かされる。
 この作品ではカーク・ダグラス氏が経営するプロダクションも制作に関わっているので、ダグラス氏は単なる主役ではなく制作にかなりの発言力を持っていた。この作品で監督と主役は激しく対立したそうである。(余談2)
 
 とはいえ、塹壕戦が中心の第一次大戦の緊迫感は非常によく表現されていた。キューブリック監督のカメラワークが随所に異彩を放ち、ダグラス氏の演技もリアルである。
 物語構成としても、

・参謀本部が立てた無茶な作戦を無茶と知りながら昇進を餌にして配下に実行させる狡猾な軍団長
・軍団長にそそのかされて部下を恫喝して死地へ送り込む師団長
・脅され仕方なく作戦を実行する主人公ダックス連隊長
・作戦は予想通り失敗し、敵前逃亡?の罪を着せられて処刑される3人の兵士

 これら相関関係の描写は見事である。(余談3)

 ラストも軍組織の矛盾と反戦の意思を強烈に余韻として残る場面となっている。容疑の兵士は「予定通り」処刑され、しかしダックス大佐も政治的法的反撃で一矢を報い失脚する師団長。狡猾な軍団長の地位は変わらず、今度はダックス大佐を子飼いの師団長の代わりに据えようとするが、それを拒否する大佐。大佐の連隊は再び元の場所である前線へ。
 師団長すら一つの駒でしかない軍組織、何の実りも発展も無い非情な戦争を判り易く強烈な緊迫感を放ちながら描いた秀作であるのは間違いない。カーク・ダグラス氏の意気込みとキューブリック監督の手腕があってこその作品である。(余談4)
 
(余談1)「スパルタカス」の監督は別の人物だったが、事情があって降板し、製作総指揮でもあるカーク=ダグラス氏が急遽キューブリック氏を召喚した。キューブリック氏とはかなり険悪な関係だったそうだが、監督としての手腕は認めていたエピソードである。
 「スパルタカス」でキューブリック氏は大監督としての地位を不動のものにするが、残念なことに本人は不本意だったそうだ。キューブリック氏は独裁型の監督で、日本語字幕にまで注文をつけていたそうだから、たぶんダグラス氏からの文句や注文や意見にムカついていたのだろう。「突撃」も「スパルタカス」も自分の作品というよりダグラスの作品と突き放していたかもしれない。私は素直に若き日のキューブリック監督作品として評価したいのだが。
 
(余談2)キューブリック監督はハッピーエンドに、ダグラス氏は暗いアンハッピーを考えていて、結果はダグラス氏のイメージが採用されたとの噂がある。
 キューブリック監督はまだ20代の青年であり、ダグラス氏は40代の脂がのった俳優兼制作者であり反骨の映画人としても有名なのでありそうな話だ。
 
(余談3)カーク・ダグラス氏は素肌の上から軍服を着ていた。当時の大佐ともなれば、アンダーシャツにダブルカウスのワイシャツを着てから高級羅紗の特注仕立て軍服を着るものだが。法律にも精通している知識人ダックス大佐にしてはワイルド。
 私も中学生の頃は素肌の上に学生服を着た事があったが、着心地はあまり良くない。せめてアンダーシャツは着るべきだ。
 
(余談4)後のベトナム戦争を描いた「フルメタル・ジャケット」は同時期・同テーマの「プラトーン」と比較されて、あまり評判は良くない。
 キューブリック氏の藝術志向は、シニカルな社会風刺には発揮されても、反戦や自由平等などの普遍的テーマに向かない。
 

  
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
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☆☆☆☆ 名作

  

 
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