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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「ビルマの竪琴」 家族と一緒に感動しよう〔9〕 

ビルマの竪琴」 
中井貴一氏、肩のオウムに耳をかじられる。

 

 
【公開年】1985年  【制作国】日本国  【時間】133分  【監督】市川崑
【原作】竹山道雄
【音楽】山本直純
【脚本】和田夏十
【言語】日本語 一部イングランド語 ビルマ語?
【出演】石坂浩二(井上隊長)  中井貴一水島上等兵)  川谷拓三(伊東軍曹)  渡辺篤史(小林上等兵)  小林稔侍(岡田上等兵)  井上博一(馬場一等兵)  浜村純(村落の村長)  常田富士男(物売りの爺さん)  北林谷栄(物売りの婆さん)  菅原文太(三角山守備隊隊長)  佐藤正文(鈴木上等兵)  茂木繁(阿部一等兵)  保木本竜也(村上一等兵)  川崎博司(渡辺一等兵)  山口真司(高井一等兵)  永妻晃(丸山一等兵)  清末裕之(中村一等兵)  井上浩(山本一等兵)

【成分】泣ける 悲しい ロマンチック 不思議 パニック 勇敢 知的 切ない かっこいい 仏教 僧侶 戦争 1945年 ビルマ

【特徴】竹山道雄の名作童話「ビルマの竪琴」の映画化。1956年に市川崑監督によって映画化されているが、本作は同監督によるリメイク。監督いわく「ビルマの赤い大地を撮りたかった」らしい。前作は白黒映画である。
 内容は前作とほぼ同じ、ビルマ僧姿の中井貴一氏が肩にオウムを乗せて竪琴を弾くラストが評判になった。

 驚くべき事に、北林谷栄氏が前作と同じ「物売りのお婆さん」役で出演、殆ど歳をとっていないかのようだ。実は30代の頃から老け役をやっていて、前作は40代半ば、今回はメイクなしでもお婆さんを演じられる。

 今やAV業界の重鎮速水健二氏が出演しているらしい。当時はまだ下積み時代で、重心がAVか一般作かは定まっていないようだった。

【効能】美しい責任感と自己犠牲の物語で感涙。

【副作用】主人公の頑なな態度が不自然に思え怪訝。リメイクの動機が解り難く、興ざめする。

下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
美しい物語なのだが・・。
これもリメイクの意味がわからない


 これは1985年の夏休み映画として公開された。察しの通り、終戦40周年記念の反戦平和をテーマとした映画であり、毎夏どこかのTV局が放送する名作でもある。
 原作は児童向けに書かれた「童話」であり、子供の頃に読んで素直に感動した記憶がある。敵に気付かれないよう水島上等兵が弾薬を積んだ荷車に座って竪琴を弾き、兵士たちは歌いながらまるで祭の山車のように陣地に牽く様や、降伏しない部隊を説得する様などは緊迫感があった。捕虜収容所近辺に出没する水島に酷似のビルマの高僧、果たして僧侶は水島か否か緊迫のサスペンス仕立て、そして有名な「仰げば尊し」を演奏する別れの場面と訣別の手紙、水島上等兵の十字架を背負うような姿には心を打たれたものだ。

 さて、この「ビルマの竪琴」はあくまでファンタジーである。というのも、竹山道雄氏はドイツ文学が専門で、ビルマをはじめ東南アジアのことはあまり知らない人物である。欧米人が日本をゲイシャ・サムライ・ハラキリのイメージで観るのと差は無い認識で、描写される風俗にはデタラメな箇所が多い。(余談1)
 もちろん、だからといって駄作ではなく、子供から大人までの読書に堪えうる内容であり、戦後日本の反戦平和思想を語るに省くことができない名作だろう。この作品は戦後10年を過ぎた56年に映画化され、原作に沿ったストーリーは海外でも高く評価された。私も三國連太郎氏の隊長は好きだったし、安井昌二氏の水島上等兵の悲壮感は説得力があった。

 ところが、この85年版「ビルマの竪琴」は首を傾げる。市川監督の「犬神家の一族」もそうだが、焼き直しリメイクをしなければならない必要性を感じられなかった。
 ビルマの赤い土を表現したかった、という監督のコメントを聞いたことがある。監督の美意識や価値観では必要に迫られたこだわりかも知れないが、私のような観客にとっては無意味であり、むしろ資本を投じた割りに前作ほどの説得力は減退したように思う。

 もともと原作からしてビルマをデタラメに描いた物語だ。南方の架空の国でのファンタジーとして解釈すれば素晴らしい童話として読める。まだ戦争の生傷が残っている56年版なら、本来は暗く生々しい内容をファンタジーで包む必要があったかもしれない。
 しかし85年版は、制作しなければならない必要性が感じられない。水島上等兵役の中井貴一氏は生真面目で好感がもてる演技をしてくれたのだが、原作のような悲壮感が感じられず、「帰るわけにはいけない」という決意が唐突な感じがした。ビルマに残る決心をするまでのプロセスが描ききれていないように思う。

 もっとも決定的なのは、時代が変わったことである。ハリウッドでもデタラメなタイ王国を描いたユル・ブリンナー氏の「王様と私」から比較的タイの正確描写に配慮した周潤發氏(チョウ・ユンファ)の「アンナと王様」のように、無知や偏見にまかせて他民族をステレオタイプに描写することは、次第に看過されなくなってきている。56年版と同じ「ビルマの竪琴」を80年代に入っても創るのは、安易が過ぎたのではないか。

 しかし、ビルマの仏教僧は竪琴を弾かないからといって、水島から竪琴を取り上げるのは物語の根幹を崩すことになり、「王様と私」からダンスを省略するようなものだ。となれば、開き直ってリアリティーを犠牲にしてファンタジー色を強めるのも一つの手かもしれない。事実、井上隊長以下将兵の服装は些か小奇麗であり、市川監督がそれに気付かなかったはずはない。
 前作の完成度は高く白黒映画ならではのリアリティーがあった。リメイクでは前作とやや異なる視点で改編するなど新機軸を打ち出す必要もあったとは思うが、この作品では焼き直しのカラー作品にしたため水島というキャラが軽く見えてしまった。

(余談1)小乗仏教を信仰している知人の話によれば、ビルマの僧は戒律で音楽は嗜まないそうだ。ということは、あの名場面である竪琴を弾く仏教僧はトンデモ破戒シーンか。

晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良

晴雨堂マニアック評価
☆☆ 凡作


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ビルマの竪琴 (新潮文庫) 竹山道雄


 
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