ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「アンブロークン」が反日でもエエやないか。ワシらかて反独映画を楽しんできた。 近頃の現象[一一九二] 

これは「反日」映画なのか? 
批判を覚悟、捕虜虐待の軍曹演じた決意 
アンブロークン」のMIYAVI


 「日本軍の捕虜虐待を強調している」――。作品や原作に対するそんな反発が米国での公開前からネットを中心に広がり、日本での公開が一時は暗礁に乗り上げたアンジェリーナ・ジョリー監督の米映画「不屈の男 アンブロークン」。「反日」批判から劇場探しも難航したが、ようやく来年2月、まずは東京で公開されることになった。世界ツアーなどを重ねるミュージシャンのMIYAVIさん(34)が、捕虜に苛烈な態度をとり続けた実在の渡辺睦裕軍曹役をなぜ演じ、批判をどう受け止めたか。ロサンゼルスで語ってもらった。(withnews)

【雑感】アンブロークン」が反日と騒いでいるようだが、それは枢軸国に加わった国の宿命だ。どの国よりもシリア難民を受け入れ脱原発政策を進めているドイツなんか今でもハリウッドで悪の帝国として描かれる。仕方が無いことだ。(余談1)
 しかもドイツから見て友邦国であったはずの日本まで、悪役にデスラーやシュルツやハイデルンなど明らかにドイツ風の名前が登場しナチスドイツをモデルにしたガミラスなる侵略軍が地球を襲うアニメを制作して大ヒット。
 「反日」だのと今さら騒ぐほうがおかしい。今まで反独映画を楽しんでおきながら何をかまととぶっているのか。

 日本軍による捕虜虐待の場面が評判になっているが、どの程度の描写なのか興味がある。
 以前、体罰問題でマスコミが騒いだ時に、私は日本の体育会系が当たり前のように行っている体罰が欧米から見るといかに常軌を逸した行為なのかを論証するために名作を例にとって説明した事があった。
 映画「パットン大戦車軍団」で主人公の強面タカ派の将軍が野戦病院を訪問した際、入院していた精神疾患の兵士の頭を手袋で軽く叩いた事でマスコミが騒ぎ、華々しい実績を誇る将軍が戦時中であるにもかかわらず失脚してしまう場面がある。
 現実のアメリカ軍は鉄拳制裁をやっていないのかどうかは別にして、欧米の観客からは病人の頭を手袋で叩いただけでも異常に見えるという事である。

 では日本軍ではどうなのか。ビンタや鉄拳は当たり前である。いや平和な日本の気楽なスポーツクラブであっても尻をバットで叩く「けつバット」が行われていたほどのお国柄である。
 映画「フルメタルジャケット」で海兵隊の新兵を海兵隊下士官から俳優へ転職したロナルド・リー・アーメイ氏が扮するハートマン軍曹が徹底的にしごくのだが、意外にも軍曹自身の鉄拳シーンは無い。あるのは執拗な罵詈雑言の言葉の暴力である。英語って、こんなにえげつない悪口の類が豊富にあるのか、聞くに堪えないヘイトの語彙に関して日本語は英語の足下に及ばないと誇らしく思ったものだ。
 逆に言えば、日本は言葉の暴力よりも手を使う暴力に頼っていた訳である。(余談2)

 となれば、日本軍が捕虜に対してどんな態度でどのように扱ったのか、推して知るべしだろう。
 明治や大正の頃の日本軍はまだ国際法を守ろうとする努力があった。日露戦争でのロシア兵捕虜の扱い、第一次世界大戦でのドイツ兵捕虜の扱いが如何に国際法に則っていたかは有名だ。ところが昭和になると統帥権の拡大解釈や国際連盟脱退などで国際法に対する不信感を募らせ軽んじるようになった。兵士一人一人に天皇陛下の軍隊である事と「生きて虜囚の辱めを受けるな」という教育を叩き込まれた。
 そんな日本軍が「生きて虜囚の辱めを受ける」捕虜たちに対してどんな感情を抱くか、これも推して知るべしだ。だからアンジーが描いた絵がどんな光景か興味がある。大人しい描写か? フォルメしすぎなのか?

 今回の反日騒動でもう一つ興味深い事がある。
 80年代末、ベルトリッチ監督「ラストエンペラー」で南京大虐殺の描写があったため右翼から抗議の声が上がったが、日本公開が危ぶまれる事は無かったと思う。甘粕大尉や満州国軍の描写など史実から大きく逸脱している箇所があるので、抗議の中には正当なものもあった。しかし結局はメジャー映画館で全国公開され、全国ネットのテレビでも放送された。
 「ラストエンペラー」で甘粕を演じた坂本龍一氏はその数年前に「戦場のメリークリスマス」で米英捕虜を虐待する捕虜収容所所長を演じ日本中で喝采があがり、捕虜の英軍少佐の役をやったデビット・ボウイ氏に若い乙女たちは胸を熱くした。
 「アンブロークン」の騒動を観ていると時代が変わったことを感じる。私としてはデズニーが制作した「パールハーバー」こそ怒り抗議するべきなのだが、右翼の反応の鈍さに呆れたものだ。

(余談1)日本やドイツはまだマシかもしれない。ヨーロッパ世界の基礎をつくった2千年前のローマ帝国はユダヤ人の王国を滅ぼしたので、ハリウッドに強いイニシアチブを握っているユダヤ資本の影響もあって今でも悪の帝国だ。また帝政前期の皇帝たちは基督教を迫害していたので基督教徒からも悪の帝国扱いを受けている。

(余談2)「戦前の少年犯罪」の管賀江留郎氏は体罰は日本の伝統には無かったと主張、むしろ明治の文明開化で西洋から体罰文化が輸入されたと分析している。

【追記】2015.10.29 この記事を発表してから、「(アンブロークンは)事実ではないから批難しとるんや、ボケ」と批判する者が複数名いた。
 この晴雨堂をボケ呼ばわりした方々は記事をしっかり読んでいるのかね? またコメント欄にある友人うろぱす氏との会話も目を通しているのかね?
 見出しだけ読んで解ったような気になって勇み足をしてるだけ。恥ずかしいとは思わないのかな?

 それはさておき、「事実でない」というのは奇怪な話で、映画はそもそもフィクション。事実を忠実に再現している映画を探し出すほうが至難の業、嘘を現実にあったかのように魅せるのが映画と言い切っても良いくらいで、何を頓珍漢いっているのか。
 頓珍漢野郎は右にも左にも一定数いる。困ったものだ。

 名作の誉れ高い映画の多くは批判がつきものだ。タイを舞台にした「王様と私」はタイ国民の不評を買っている。「サウンド・オブ・ミュージック」ではオーストリア国民の不評を買っているし、なにより実在の当事者であるトランプ一家は映画を観て激怒した。見渡せばそんな映画ばっかりだ。
 トム・クルーズ肝いりの親日映画「ラストサムライ」でさえも、部分部分を取り上げれば素晴らしく正確な考証だが、全体を観れば頓珍漢画像になっている。
 映画って、そんなもんと割り切るところから始めないと、映画とは付き合えない。


【追記Ⅱ】2017.05.18「アンブロークン」の虐待のレベルだが、実際に作品を観てみると私は十分あり得ると考えている。下手をすれば現代日本のスポーツクラブでも行われているのではないかと思うほどで、「誇張が過ぎる」という批判の方が無理がありそうだ。
 また、史実の渡邊睦裕伍長は下士官でありながら重要指名手配犯40人のうち23番目にランキングされたほどの人物なので、被害者側のデフォルメを考慮しても、むしろ映画での描写は甘いのではないかと思っている。

 ただ、「誇張が過ぎる」と錯覚してしまうのも理解できる。というのも、演じたMIYAVI氏は軍人らしくない。内容が内容だけに旧軍人の監修支援は受け辛いと思うが所作等の役作りをもっとするべきだったかもしれない。髪も陸軍にしては長め。
 とはいえ史実の渡邊睦裕は裕福な家庭に育ち早稲田大学でフランス文学を学んだインテリ、存外MIYAVI氏の演じ方は大きく的を外れている訳ではないかもしれない。
 高学歴なのに階級は将校ではなく伍長、最終階級もポツダム曹長あたりは屈折した性格になる要因ともとれなくもない。

 因みにポツダム曹長とは、敗戦で軍が解散されるのが決まり原則大尉以下の軍人を対象に退職金や恩給の額を少しでも増やす福祉政策として一階級昇級させた。渡邊は退官時軍曹だったので曹長になった。
 ゼロ戦パイロットの坂井三郎や岩本徹三も敗戦時は少尉だったのでポツダム昇進で中尉になった。

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[ 2015/10/25 21:09 ] 日誌・・近頃の現象 | TB(0) | CM(2)
隠し撮りした「ザ・コーヴ」とは違い「アンブロークン」はあくまで劇映画ですからね。そんなに反発しなくてもよいかと・・・

キリスト教白人から見れば劣等人種である非キリスト教徒のアジア人なんでいつの時代も同じなのでしょう。ハリウッド映画の歴史はアジア蔑視・反日の歴史でもありますからね。
[ 2015/10/28 19:40 ] [ 編集 ]
うろぱす氏へ

 「ザ・コーヴ」はドキュメントではないのにドキュメントとして発表したのが問題です。太地町には秘密なんぞ無く、昔からイルカ肉は魚屋で売られていたし、太地のクジラ博物館では捕鯨の歴史を堂々と展示しています。私は小学生のころ、新宮市に住んでいたのでよく判る。
 あれはドキュメントではない。フェイクドキュメンタリーです。だから日本人はみんなもっと怒らなければならない。名誉棄損で訴えても良いくらいです。

 アンジーのお手並み拝見です。一応、史実に沿って物語をつくっているらしいので、どこまでリアルにできるか興味があります。朝鮮韓国や中国の反日映画は、日本への怨念がもろに出ていて逆にリアリティを失っている。だからアンジーの監督としての技量を見極めるのに格好の題材ですよ。

 ところで、タイでは日本人将校を主人公に据えた「クーカム」という映画が人気なのを御存じですか?


> 隠し撮りした「ザ・コーヴ」とは違い「アンブロークン」はあくまで劇映画ですからね。そんなに反発しなくてもよいかと・・・
>
> キリスト教白人から見れば劣等人種である非キリスト教徒のアジア人なんでいつの時代も同じなのでしょう。ハリウッド映画の歴史はアジア蔑視・反日の歴史でもありますからね。
[ 2015/10/29 06:22 ] [ 編集 ]
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