「コンラック先生 」 アンジーの父親が 若き日に演じた「金八先生」。 【原題】 Conrack
【公開年】 1974年
【制作国】 亜米利加
【時間】 106分
【監督】 マーティン・リット 【制作】 マーティン・リット ハリエット・フランク・Jr
【原作】 パット・コンロイ 【音楽】 ジョン・ウィリアムズ
【脚本】 アーヴィング・ラヴェッチ ハリエット・フランク・Jr
【言語】 イングランド語
【出演】 ジョン・ヴォイト (
パット・コンロイ ) ポール・ウィンフィールド(マッド・ビリー) マッジ・シンクレア(スコット校長) ヒューム・クローニン(スケフィントン) ティナ・アンドリュース(メアリー) アントニオ・ファーガス(クイックフェロー)
【成分】 かわいい コミカル 切ない 悲しい 楽しい 泣ける 笑える 小学校 アメリカ サウスカロライナ 1970年代
【特徴】 今やアンジェリーナ・ジョリーの父親として有名なジョン・ボイド氏が若い頃に演じた良心的熱血小学校教諭。
原作者
パット・コンロイ 氏の教師時代の体験をつづった自伝らしい。
アメリカ南国の離島で、絶望的な教育環境に置かれているアフリカ系児童を救おうとする型破りな教師の奮闘を描く。
予定調和的な綺麗事に終わると思いきや、ジョン・ボイドの一生懸命な演技が教師の空虚な綺麗事に説得力を持たせている。特に児童たちに楽しいハロウィンを体験させようと奔走したり、別れの桟橋では見送りに来た児童たちの前でいつもよりもテンション高めに最後の授業をする様は目頭を熱くする。
【効能】 教育問題について考えるきっかけとなる。アメリカ社会の病理を垣間見る。
【副作用】 偽善と社会の空虚さしか感じられない。
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一生懸命に ハロウィンを企画するコンラック先生 主演は今やアンジェリーナ・ジョリー氏の父親という事で有名な
ジョン・ヴォイト 氏。彼がまだ30代半ばの作品である。
ハロウィンを題材にした映画といえば、私の世代ではホラー映画「ハロウィン」を連想するだろうが、私の場合は子供の頃に観た本作である。
本作を観るまではハロウィンといえばスヌーピーの世界だけのお祭りと思い込んでいた。本作でハロウィンがアメリカを代表する子供が主体の祭りであると認識した。
作品内容は日本版「金八先生」だろう。アフリカ系住民で占められているある南国の離島(余談1)の小学校に赴任してきた若き白人教師、そこでは未だ奴隷制度時代の古い感覚の教育姿勢がはばをきかせており、驚愕した教師は型破りの情熱的な方法で授業を始めていくが・・。
判りやすく「金八先生」を例えとしたが、個人的には宮沢賢治に近いと思う。教育姿勢は「金八」のような武骨で不器用ではない。ときおりレコードコンサートを開いて子供たちにベートーベンなど聞かせている。
子供たちにとってはベートーベンの「運命」が先生のイメージに刷り込まれてしまったのか、ラストで主人公が担任を解かれ失意の退校をするとき、船着き場まで見送りに来た子供たちがポータブルのレコードプレイヤーで「運命」を大音量で流す。
実話を基にしているのか、単なる「金八モノ」ではなく、複雑な地域感情を鑑賞者に覗かせる配慮が利いている。
歯が浮くような理想論を強弁する若きコンラック(余談2)だが、有言実行で邁進する好人物だった。そのため当初は違和感を抱いていた児童やその父母たちは次第にコンラックに信頼を寄せ支持するようになる。
ところが意外にもコンラックの方針に異議を唱え立ちはだかったのが、アフリカ系女性の校長先生だった。アフリカ系で女性という立場、本来ならコンラックの方針に賛意を示し積極的に支援すると思われたが、逆に島の秩序を乱す存在としてコンラックを解任し追い出してしまう。
校長にまでなったほどの教師だ。おそらく若い頃はコンラック以上の志を持ち苦学して教育者となったかもしれない。その彼女が排斥に動いてしまった。
これは強引な予定調和のハッピーエンドに終わりがちな「金八」とは違うアメリカ社会の厳しさを前面に出す。
ところで、この物語の佳境ではハロウィンが登場する。
コンラック先生 はハロウィンを体験したことが無いという児童たちのため、対岸の街に渡ってハロウィンを楽しむ企画を立てる。
街は島と違って白人が多い。コンラックは街の住民に協力をお願いして回るが殆ど徒労に終わってしまう。
それでもなんとか恰好だけはつく程度まで漕ぎ着け、ハロウィンの風習に則って子供たちは仮装して「Trick or Treat(余談3)」を唱えて各家を回る。コンラックの根回しのおかげで住民たちは一応協力してくれるが、無愛想で与える菓子も飴玉1個程度。
ところが日ごろ主人公のやり方に批判的な先輩が笑顔で応対し気前よく菓子を沢山あげるところが印象に残っている。
ともすれば、説得力の無い偽善に満ちた予定調和のファンタジーのような物語を、テンションの高いコンラックの懸命な姿で引き込む。
ラスト、別れの連絡船が到着するまでの間、コンラックを見送りに来た児童たちを桟橋に座らせて、別れを惜しむようにいつもより甲高い声で最後の授業を行う。
(余談1)離島という事になるのだろうが、正確には南国の大河の湿地帯にある中洲のようだ。
(余談2)作中の主人公の名は「コンロイ」という名だったが、方言のせいなのか子供たちには発音できず「コンラック」と呼ばれ、それが本名のように定着した。
(余談3)「Trick or Treat」は日本語訳のスヌーピーでは「悪戯されるか御馳走するか」と訳されていたように記憶している。
晴雨堂スタンダード評価 ☆☆☆ 良 晴雨堂マニアック評価 ☆☆☆ 佳作 ブログランキングに参加しています。
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一生懸命に ハロウィンを企画するコンラック先生 主演は今やアンジェリーナ・ジョリー氏の父親という事で有名な
ジョン・ヴォイト 氏。彼がまだ30代半ばの作品である。
ハロウィンを題材にした映画といえば、私の世代ではホラー映画「ハロウィン」を連想するだろうが、私の場合は子供の頃に観た本作である。
本作を観るまではハロウィンといえばスヌーピーの世界だけのお祭りと思い込んでいた。本作でハロウィンがアメリカを代表する子供が主体の祭りであると認識した。
作品内容は日本版「金八先生」だろう。アフリカ系住民で占められているある南国の離島(余談1)の小学校に赴任してきた若き白人教師、そこでは未だ奴隷制度時代の古い感覚の教育姿勢がはばをきかせており、驚愕した教師は型破りの情熱的な方法で授業を始めていくが・・。
判りやすく「金八先生」を例えとしたが、個人的には宮沢賢治に近いと思う。教育姿勢は「金八」のような武骨で不器用ではない。ときおりレコードコンサートを開いて子供たちにベートーベンなど聞かせている。
子供たちにとってはベートーベンの「運命」が先生のイメージに刷り込まれてしまったのか、ラストで主人公が担任を解かれ失意の退校をするとき、船着き場まで見送りに来た子供たちがポータブルのレコードプレイヤーで「運命」を大音量で流す。
実話を基にしているのか、単なる「金八モノ」ではなく、複雑な地域感情を鑑賞者に覗かせる配慮が利いている。
歯が浮くような理想論を強弁する若きコンラック(余談2)だが、有言実行で邁進する好人物だった。そのため当初は違和感を抱いていた児童やその父母たちは次第にコンラックに信頼を寄せ支持するようになる。
ところが意外にもコンラックの方針に異議を唱え立ちはだかったのが、アフリカ系女性の校長先生だった。アフリカ系で女性という立場、本来ならコンラックの方針に賛意を示し積極的に支援すると思われたが、逆に島の秩序を乱す存在としてコンラックを解任し追い出してしまう。
校長にまでなったほどの教師だ。おそらく若い頃はコンラック以上の志を持ち苦学して教育者となったかもしれない。その彼女が排斥に動いてしまった。
これは強引な予定調和のハッピーエンドに終わりがちな「金八」とは違うアメリカ社会の厳しさを前面に出す。
ところで、この物語の佳境ではハロウィンが登場する。
コンラック先生 はハロウィンを体験したことが無いという児童たちのため、対岸の街に渡ってハロウィンを楽しむ企画を立てる。
街は島と違って白人が多い。コンラックは街の住民に協力をお願いして回るが殆ど徒労に終わってしまう。
それでもなんとか恰好だけはつく程度まで漕ぎ着け、ハロウィンの風習に則って子供たちは仮装して「Trick or Treat(余談3)」を唱えて各家を回る。コンラックの根回しのおかげで住民たちは一応協力してくれるが、無愛想で与える菓子も飴玉1個程度。
ところが日ごろ主人公のやり方に批判的な先輩が笑顔で応対し気前よく菓子を沢山あげるところが印象に残っている。
ともすれば、説得力の無い偽善に満ちた予定調和のファンタジーのような物語を、テンションの高いコンラックの懸命な姿で引き込む。
ラスト、別れの連絡船が到着するまでの間、コンラックを見送りに来た児童たちを桟橋に座らせて、別れを惜しむようにいつもより甲高い声で最後の授業を行う。
(余談1)離島という事になるのだろうが、正確には南国の大河の湿地帯にある中洲のようだ。
(余談2)作中の主人公の名は「コンロイ」という名だったが、方言のせいなのか子供たちには発音できず「コンラック」と呼ばれ、それが本名のように定着した。
(余談3)「Trick or Treat」は日本語訳のスヌーピーでは「悪戯されるか御馳走するか」と訳されていたように記憶している。
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