スー・チー氏、実権に意欲
ミャンマー、野党躍進で ミャンマーの野党、国民民主連盟(NLD)の党首アウン・サン・スー・チー氏が5日、最大都市ヤンゴンで記者会見した。8日に迫った総選挙でNLDが勝利した場合、「私が政権を運営する」と強調。自らの大統領就任は憲法の規定で禁じられているが、国政の実権を握る意欲を示した。.
総選挙ではNLDの躍進が確実視され、政権交代も現実味を増している。ただ、憲法は外国籍の家族を持つ者の大統領資格を認めず、英国籍の息子を持つスー・チー氏は大統領になれない。同氏は、大統領に別の人物を充て、自身が「大統領を上回る存在になる。既に策はある」と述べた。(ヤンゴン共同)【雑感】ミャンマーの憲法では近親者に外国籍の者がいると大統領にはなれない規定がある。
この条項は英国人の夫と息子をもつ彼女を狙い撃ちにした法律だ。
通常、憲法というものは時の政府を管理下に置くための最高法規ゆえ、通常の法律より改正のハードルが高い。
今回の
スー・チー発言で失望的に驚かれる方は多いと思う。
「有能な盟友に大統領をなぜ託さないのか?」
「まずは憲法改正だろう」
実際にそんな嘆きの声がTwitter上で見受けられる。
彼女の過酷な環境を察して考えれば、改憲となると軍事政権と同じマネはできないので、回りくどい民主制手続きを行わざるを得ないが、これは今回の国政選挙以上に時間と労力と危険が待ち受けている。 何故なら国際情勢に譲歩した軍部はこれには既得権を守るため必死に抵抗する。憲法改正の行動は格好の付け入る隙だ。
何しろ軍部には憲法によって一定の議席枠を与えられているから議会の発言権は依然として存在する。さらに軍や警察や地方自治などは大統領とは別の国軍最高司令官が指名できるなど、軍部にとって超有利な内容なのだ。下手をすれば、統帥権をチラつかせて日本の国体を牛耳った軍部より強力な力を持っている。
また、軍事政権を支援していた中国の動きも気になるだろうから、これ以上は民主的手続きで時間をかけたくはないはず。仮にどこかの国が国境紛争を仕掛けたりすると国軍最高司令官は大統領をさしおいて非常事態宣言を発令できるので、たちまち軍政下に戻ってしまう。
スー・チー氏が「大統領は飾り」と言ったのはこういった
ミャンマーの特殊な憲法下の背景があることも理解してやらなければならない。民主主義が定着した国の感覚で無い物ねだりしたら彼女が可哀想だ。
ミャンマー憲法の制限規定が大統領のみであったら、ドイツのように大統領を名誉職にし自らは内閣総理として行政の第一人者になる手がある。
その手を使うと思い込んでいた海外の
スー・チーの信奉者はいたはず。
しかしどうやら彼女はそれができないか、やらないようだ。
あとはかつての日本や中国や今の北朝鮮のように、法的元首とは別に「最高実力者」として政権を牽引する手がある。
例えば北朝鮮の最高指導者金正恩氏の正式な政府役職は「国防委員会第一委員長」で大統領でも内閣総理でもない。大統領にあたる共和国主席は金日成が永遠に務めるため事実上空席か廃止の状態だ。
中国の鄧小平の晩年は公的な役職から身を引くが、党中央軍事委員会主席の役職だけは手放さず軍事を掌握して国家主席よりも偉い人であり続けた。
日本でも総理大臣よりも偉い自民党の重鎮の存在はしばしばニュースになる。
いずれにせよ、失望して離れていく者が大勢でてくるだろうし、スー・チーを「女王」にしたい人は残る。難しい綱渡りだ。頼みの綱はやはりスー・チー氏が持っている独立の父の娘であるカリスマ、だから軍部も今まで命を獲る事はできなかったし、軍隊内でも信奉者がいる証でもある。
もしかしたら、彼女の奇策は国軍の掌握か? 大統領より上のポジションは今のところ独立の父アウンサン将軍の後を継ぐ以外に見当たらない。
スー・チー氏の発言で激しく失望された方はもう一度
ミャンマーの国情を調べたほうが良いだろう。
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