「ホワイトタイガー
ナチス極秘戦車・宿命の砲火」
アカデミー賞外国語部門出品作。【原題】Белый тигр
【英題】White Tiger
【公開年】2012年
【制作国】露西亜
【時間】112分
【監督】カレン・シャフナザーロフ 【制作】 【原作】イリヤ・ボヤショフ
【音楽】ユーリ・ポテイェンコ コンスタンティン・シェヴェレフ
【脚本】アレクサンドル・ボロジャンスキー
カレン・シャフナザーロフ 【言語】ロシア語 ドイツ語 一部イングランド語
【出演】アレクセイ・ヴェルトコフ(イワン・ナイジョノフ少尉) ヴィタリー・キシュチェンコ() ヴァレリー・グリシュコ() ヴラディミール・イリン()
【成分】ファンタジー 不思議 不気味 勇敢 オカルト ファンタジー 第二次大戦 独ソ戦 1943年~1945年
【特徴】ロシア産の戦争映画。戦車同士の一騎討ちを描いた珍しい作品。雰囲気は松本零士氏や小林源文氏が描きそうな戦場浪漫だ。
邦題は安っぽいB級映画的だが、ハリウッドのアカデミー賞外国語映画部門に出品しているだけあって、つくりは非常にしっかりしている。軍服などは考証ミスは目立っていないし、ドイツ兵はドイツ語を話す。
主人公の謎めいた戦車兵を演じている俳優は日本の津田寛治氏に似ている。主人公の理解者で上官の少佐に扮している俳優は若い頃の三國連太郎氏に似ている。
【効能】戦車マニアにはたまらない描写。
【副作用】物語が唐突に展開するので意味が判らなくなる。
【読者の皆様へ】俳優名と役名が不明。エンドタイトルで確認しようにも、ロシア語が解りません。情報求む。
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
松本零士が描く戦場浪漫みたいな作風。 タイトルだけを見ればロシア産のB級戦争映画と思うだろうが、それは付けられた邦題のせいだ。実は2012年公開映画対象のアカデミー賞に外国語映画部門に出品されたほどの作品で、つくりはしっかりしている。
軍服など考証の誤りは見当たらなかったし、ドイツ兵はドイツ語を話すなどリアルさにこだわっているようだった。(余談1)敵役として登場する謎のドイツ軍戦車タイガー(余談2)は一部ミリヲタの間で不評だったらしいが、私はメカ音痴なので細部までは判らない、独特の角ばった特徴はよく捉えていると思っている。ハリウッドの珍作「パール・ハーバー」に登場する緑のゼロ戦よりはマシだ。
話の内容は子供や学生の頃から慣れ親しんだ松本零士氏や小林源文氏が描く戦場ロマン漫画を実写映画化したような雰囲気だ。なので、私はハリウッドが描くノー天気な戦争映画よりもよほど本作のほうが取っ付きが良い。
主人公は30歳前後の戦車操縦手、日本の俳優に例えていうと津田寛治風の俳優が演じている。
味方の軍が激戦地跡を救援探索、大破した戦車の操縦席から全身黒焦げの焼死体のような風体で見つかる。息をしていることが辛うじて確認されたので野戦病院へ、軍医たちの予想をことごとく裏切り火傷はほぼ治癒、しかし記憶喪失の状態。
記憶を無くしてはいるが、読み書きはでき戦車の操縦術は群を抜き、なにより生還してからは神がかり的な能力を持ったために軍曹として前線復帰、さらにドイツ軍の謎の戦車探索の指揮を執る少佐の目に留まり、少尉の階級と特注の戦車と有能な部下を与えられる。
この主人公の「理解者」として登場する少佐は若い頃の三國連太郎に似ている。
前線では1両の謎の白いドイツ軍戦車が神出鬼没の攻撃で戦車大隊が看過できない大損害を受けていた。その謎の白い戦車に対抗する役目を主人公が負わされる。
実際は戦車一台が歩兵を従えずに行軍するのはあまり無いのだが、これはある種のヒロイックファンタジー、緊迫感ある戦車同士の一騎討ちが見どころである。
キャタピラにまとわりつく泥や雑草、エンジン音が反響し暑苦しそうな車内、敵の砲撃で大破炎上、外へ逃げ出そうとして息絶え黒焦げの状態で固まる戦死者、その中を主人公は巧みに車体を隠しながら切り抜け敵戦車に砲撃する様、戦車好きにはたまらない映画だ。戦闘機や軍艦を主役にした戦争映画は多々あるが、戦車はそれに比して少ないので希少価値があろう。
結局、白いドイツ軍戦車は謎のまま、捕虜からもめぼしい情報が得られなくなり、次第に白い戦車架空説が濃厚になっていく。やがて戦況はソ連軍圧倒的優勢となり、上層部も白い戦車はガセネタと結論付けるようになった。
ついにドイツ軍のカイテル元帥は降伏し戦争は終わった。だが、主人公は白い戦車の存在を疑わず、「戦争は終わった」という少佐の言葉を無視して戦車に乗り込み走り去る。
白に塗装されたタイガー戦車は、メルヴィル作「白鯨」を意識しているかもしれない。
さてラストはとても意外な場面が唐突に表れる。私はこのシーン、嫌いではない。
おそらく、死後の世界でヒトラーらしき人物が謎の人物に向かって言い訳を並べているのだが、相手の顔が薄暗くて判り辛い。たぶん、背広の着方やボサボサの髪型に眼鏡と口髭からトロツキーかもしれない。トロツキーにしては顔が面長でスマートでシューベルト的なのだが。
(余談1)本作は海外出品用なので変な吹替は無く全編日本語字幕だったので快適に鑑賞できた。
ロシア映画はよく変な吹き替えをする。せっかく俳優にドイツ語を話させているのに、少し時間をずらせてロシア語吹替をする。ドイツ語を完全に消していないので、俳優の台詞の上に演技を無視したロシア語の台詞朗読が重なるので不快だ。そんなロシア語吹替の日本語字幕が日本に輸入される。この感性は国民性なのか?
この不快感はロシア映画に限ったことではない。字幕をありがたがるのは識字率が高く、漫画のように絵と文字を同時に読む特殊能力が焼き付いている日本ぐらいのようだし、さらに吹替技術も日本は相当なものだと思う。日本語で話しているかのように錯覚するほどだからだ。
(余談2)第二次大戦時、世界最強と評価されたドイツ軍のVI号戦車、「ティーガー」や「ティーゲル」と呼ばれていた。「タイガー」はその英語読みで、ミリオタの中にはドイツ語読みの「ティーガー」にこだわる人が多い。
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作
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松本零士が描く戦場浪漫みたいな作風。 タイトルだけを見ればロシア産のB級戦争映画と思うだろうが、それは付けられた邦題のせいだ。実は2012年公開映画対象のアカデミー賞に外国語映画部門に出品されたほどの作品で、つくりはしっかりしている。
軍服など考証の誤りは見当たらなかったし、ドイツ兵はドイツ語を話すなどリアルさにこだわっているようだった。(余談1)敵役として登場する謎のドイツ軍戦車タイガー(余談2)は一部ミリヲタの間で不評だったらしいが、私はメカ音痴なので細部までは判らない、独特の角ばった特徴はよく捉えていると思っている。ハリウッドの珍作「パール・ハーバー」に登場する緑のゼロ戦よりはマシだ。
話の内容は子供や学生の頃から慣れ親しんだ松本零士氏や小林源文氏が描く戦場ロマン漫画を実写映画化したような雰囲気だ。なので、私はハリウッドが描くノー天気な戦争映画よりもよほど本作のほうが取っ付きが良い。
主人公は30歳前後の戦車操縦手、日本の俳優に例えていうと津田寛治風の俳優が演じている。
味方の軍が激戦地跡を救援探索、大破した戦車の操縦席から全身黒焦げの焼死体のような風体で見つかる。息をしていることが辛うじて確認されたので野戦病院へ、軍医たちの予想をことごとく裏切り火傷はほぼ治癒、しかし記憶喪失の状態。
記憶を無くしてはいるが、読み書きはでき戦車の操縦術は群を抜き、なにより生還してからは神がかり的な能力を持ったために軍曹として前線復帰、さらにドイツ軍の謎の戦車探索の指揮を執る少佐の目に留まり、少尉の階級と特注の戦車と有能な部下を与えられる。
この主人公の「理解者」として登場する少佐は若い頃の三國連太郎に似ている。
前線では1両の謎の白いドイツ軍戦車が神出鬼没の攻撃で戦車大隊が看過できない大損害を受けていた。その謎の白い戦車に対抗する役目を主人公が負わされる。
実際は戦車一台が歩兵を従えずに行軍するのはあまり無いのだが、これはある種のヒロイックファンタジー、緊迫感ある戦車同士の一騎討ちが見どころである。
キャタピラにまとわりつく泥や雑草、エンジン音が反響し暑苦しそうな車内、敵の砲撃で大破炎上、外へ逃げ出そうとして息絶え黒焦げの状態で固まる戦死者、その中を主人公は巧みに車体を隠しながら切り抜け敵戦車に砲撃する様、戦車好きにはたまらない映画だ。戦闘機や軍艦を主役にした戦争映画は多々あるが、戦車はそれに比して少ないので希少価値があろう。
結局、白いドイツ軍戦車は謎のまま、捕虜からもめぼしい情報が得られなくなり、次第に白い戦車架空説が濃厚になっていく。やがて戦況はソ連軍圧倒的優勢となり、上層部も白い戦車はガセネタと結論付けるようになった。
ついにドイツ軍のカイテル元帥は降伏し戦争は終わった。だが、主人公は白い戦車の存在を疑わず、「戦争は終わった」という少佐の言葉を無視して戦車に乗り込み走り去る。
白に塗装されたタイガー戦車は、メルヴィル作「白鯨」を意識しているかもしれない。
さてラストはとても意外な場面が唐突に表れる。私はこのシーン、嫌いではない。
おそらく、死後の世界でヒトラーらしき人物が謎の人物に向かって言い訳を並べているのだが、相手の顔が薄暗くて判り辛い。たぶん、背広の着方やボサボサの髪型に眼鏡と口髭からトロツキーかもしれない。トロツキーにしては顔が面長でスマートでシューベルト的なのだが。
(余談1)本作は海外出品用なので変な吹替は無く全編日本語字幕だったので快適に鑑賞できた。
ロシア映画はよく変な吹き替えをする。せっかく俳優にドイツ語を話させているのに、少し時間をずらせてロシア語吹替をする。ドイツ語を完全に消していないので、俳優の台詞の上に演技を無視したロシア語の台詞朗読が重なるので不快だ。そんなロシア語吹替の日本語字幕が日本に輸入される。この感性は国民性なのか?
この不快感はロシア映画に限ったことではない。字幕をありがたがるのは識字率が高く、漫画のように絵と文字を同時に読む特殊能力が焼き付いている日本ぐらいのようだし、さらに吹替技術も日本は相当なものだと思う。日本語で話しているかのように錯覚するほどだからだ。
(余談2)第二次大戦時、世界最強と評価されたドイツ軍のVI号戦車、「ティーガー」や「ティーゲル」と呼ばれていた。「タイガー」はその英語読みで、ミリオタの中にはドイツ語読みの「ティーガー」にこだわる人が多い。
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私のような軍オタが一番疑問に思うのがT-34に3人しか乗っておらずしかも車長が操縦手を兼任しているのです。これでは指揮に専念すべき車長が操縦を掛け持ちするので的確で迅速な指揮判断が出来ません。
劇中の登場するドイツ軍「ティーガー」戦車はT-55改造ですが撮影前に本物ソックリの「ティーガー」のレプリカ(稼働する)が製作されこれが撮影に使用されると言われていましたが何故かT-55改造が使われていました。