ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

ドイツ国防軍の髪型は長髪か短髪か? ひょんな事から「右寄り保守系軍事オタク」を自負するレビュー友達と議論になった。 晴雨堂の晴耕雨読な日常[二三三]  

「長い」「短い」の主観的表現は注意が必要。

【雑感】ひょんな事から映画レビュー友達から他愛ない議論になった。第二次世界大戦中のドイツ軍の髪型は長いか短いかというテーマである。昨今のパリのテロなど世界が不穏な空気に包まれている時に何を戯けた事をと眉を顰める方もいるだろうが、こんな話題ができるのも未だ日本が平和な証拠である。平和だからこそ、ミリタリー趣味の戦争映画やサバゲーなどが流行るのである。実際に戦乱に包まれたら、ミリタリー趣味は楽しめない。
 嫌な方はどうぞこの記事は読み飛ばしていただきたい。とはいえ、今回の話題も情報摂取の際には心得ておかなければならない左右上下前後の各々の立場の人間共通の問題である。

 さて、議論の発端は私の発言から始まった。私は彼ほどミリオタという訳ではないが、時代考証には厳しい部類の人間である。その私がいつも気になるのがドイツ兵の髪型だ。ハリウッド映画に登場するドイツ兵は髪が長いのである。まず下記に紹介するのはサム・ペキンパー監督「戦争のはらわた」で主演したジェームズ・コバーン氏だ。

「戦争のはらわた」のジェームズ・コバーン。
戦争のはらわた」参照。襟の白い縁取りから下士官である事が判る。

 まず刈上げでない。略帽から髪が伸びて耳にかかっているのが判る。実はこんなに髪を伸ばしているドイツ兵はいないと言い切っても良いくらいなのだ。ハリウッド映画にはこんな髪の兵士が大勢登場する。これが私の不満だった。
 下記に紹介するのは戦場カメラマンの元祖というべき伝説の報道写真家ロバート・キャパが撮影したドイツ兵捕虜だ。

ロバートキャパ撮影のドイツ兵捕虜。
1944年夏ごろ撮影のドイツ兵捕虜。

 お判りのように、捕虜なので写真からでも汗や泥などで制服は汚れくたびれた感じがあるが、髭は綺麗に剃っているし独特の髪型をしている。
 これまでも私はブログで何度か述べたのだが、前髪や頭頂部は長くて側頭部や後頭部を五厘刈のように短く刈り込んでいるのだ。ハリウッド映画ではもみ上げを長く伸ばした兵士や後ろ髪が初期のビートルズみたいに襟にかかるくらいまで伸ばした兵士を見かけるが、実際はそんな人はいないと言い切っても良いほど、いても極めて少数派であろう。
 下記で紹介する写真はトーマス・クレッチマンうじ主演のドイツ映画「スターリングラード」からの一枚。

国防軍少尉に扮するトーマス・クレッチマン氏
スターリングラード」参照。主人公の陸軍少尉を演じる
トーマス・クレッチマン氏。

 キャパが撮影したドイツ兵のように、前髪や頭頂部は長いが側頭部は短い。さらにもみ上げも伸ばさず、テクノカットに近いくらいに短く剃っている。

 それらの事を補強する意味で当時のドイツ国防軍が規定していた髪型例を下記に紹介する。

ドイツ国防軍の髪型規定。

 説明の必要は無いと思うが左がXで右が〇だ。坊主頭が主流の日本軍やソ連軍、アメリカ軍のスポーツ刈的なGIカットなどに比べれば確かに長いと言われれば長いのだが、ハリウッド映画などでしばしば見かけるもみ上げを伸ばした兵士や後ろ髪が刈上げでない兵士は上記の規定に反するのである。
 当時のドイツ兵の日常を撮影した写真などを見ると、刈上げどころか側頭部や後頭部を完全に剃ってしまっている兵士までいる。

 この私の「短い」説に対して、レビュー友達は「第二次大戦中のドイツ兵がかなり長髪」と主張されて上記図解の違反例に近い髪型のドイツ兵捕虜が写った写真をブログで複数紹介された。

 どこの軍隊でもそうだが、身嗜みについては各々厳しい規定がある。陸軍では分隊から中隊単位でバリカンを常備し散髪や髭剃りを行っていた。身なりを清潔に保つことで疾病や負傷からの治癒率をあげる合理的な目的があった。
 そして戦時になると物理的制約から平時の厳格な規定が若干緩和はされる。砂漠のアフリカ戦線では一応制服の規定はあったものの個々の兵士の着心地の良さを優先する事が黙認されていた。極端な例ではドイツ海軍のUボート乗りがあげられる。中型潜水艦という狭苦しい過酷な艦内とお湯が貴重品であるためか出撃中は髪も髭も伸び放題。これは映画「Uボート」で正確に描写されている。
 だから、大戦末期の余裕の無いドイツ軍になってくると、上記の図にあるような左の反則例に近い状態に伸ばしてしまった兵士はいたかもしれないし、レビュー友達が根拠に示した写真もノルマンデー上陸以降のモノなので、散髪の手間暇がかけられなかった兵士たちだろう。
 それでも、「戦争のはらわた」のジェームズ・コバーン氏たちのように髪が耳や襟にかかったり、もみ上げを伸ばしている者は皆無といってもいい。


 で、実はこれまで話してきたのは前置きである。これからが本題だ。私はこれまで文章でドイツ兵の髪型を描写した事は何度かあったが、図解や写真で説明した事は無かった。
 また連れ合いが美容師をやっている関係もあるかもしれないが、私は髪型には詳細まで見てしまう人間なのである。同じ江戸時代でも17世紀末の元禄時代の丁髷と19世紀中ごろの幕末の丁髷では全然違う髪型と認識する人間なのだ。

 ところがレビュー友はあまり髪型にはこだわらないようだった。彼自身が認めているが、坊主頭やGIカットでもない限りは、他の髪型は「長髪」と認識してしまう。私にとっては五厘刈と二枚刈は違う髪型に見える。冷静に考えて、世間一般では私の感覚が少数派で、レビュー友達の感覚が世間一般なのだろう。
 そのため「長い」「短い」の主観的描写で議論が噛み合わなくなってしまった。おそらく図解で示さなかったため、いくら文章で具体的に描写したつもりでも、私の「短い」という表現で相手は「坊主頭」を連想して、「前髪が長い」という私の描写もスポーツ刈やソフトモヒカン的に地肌が見える側頭部よりやや長めと解釈されたようだ。
 耳さえ隠れていなければ、世間は上記図解の左右とも似たような髪型にしか見えないし、左の人物が前髪を後ろへ流せば同様の髪型になる。実際に髪型に興味が無かった子供のころは同じに見えたと思う。こだわるようになったのは連れ合いと付き合い始めた30代半ば以降だった。

 逆にこないだアップしたロシア映画「ホワイトタイガー」レビューでは、メカにあまり関心の無い私はドイツ軍の戦車ティーゲルには全く違和感を抱かなかった。大雑把な特徴さえ捉えていればOKと思ってしまうのに対して、彼はメカの考証に厳格なためかレプリカの粗が気になったしまったようだ。

 主観的表現ほど慎重にならなければならない。主観は如実に当人の価値観が反映される。自分では具体的に説明したつもりでも、相手はその情報を自分の価値観を基準にした解釈で捉えるし、その逆の私にしても然りだ。
 民族が違っていたり国籍が違う場合は、最初から「違う文化の人間」である事を前提に構えるので誤解は回避される場合もあるが、なまじ同じ日本人で趣味が近いとこのような事が発生する。 


 
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