NHK『あさが来た』
諸々配慮して妾の存在を隠し通す方針か NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』は11月20日放送回で視聴率25.0%を記録し、大ヒットした『マッサン』の最高記録に早くも並んだ。そんな人気ドラマの演出を巡って、ある論争が巻き起こっている。(NEWS ポストセブン)【雑感】物語が始まる時代が朝ドラ史上初の幕末、着物やカツラの使用、「純情きらり」でヒロインを務めた宮崎あおい氏が準ヒロインで再登板、三井財閥ゆかりの女性実業家をモデルにした主人公、といった話題に興味を持ってはいたが、当初はディスクに録画するほどの関心は無かった。
ところが、大河ドラマ「新選組!」の土方歳三役がアタリ役と評判の山本耕史氏が本ドラマで再び土方歳三役で登場する、というニュースを聞いて、新選組登場の週だけと思って録画予約を設定したのだが、結局はそのまま録画を続けてしまっている。観れば観るほどけっこう良い作品だ。
小林よしのり氏が本作について「妾を描写するべきだ」と強く主張しているとの噂が流れている。近頃の
小林よしのり氏は明治が生んだ右翼の巨人頭山満を主人公に当時の自由民権運動などを漫画で描いているので「
あさが来た」の時代には熱い関心を抱いているのだろう。
彼がいま描いている作品では高知の自由民権運動(余談1)の状況をけっこう正確(政治的立ち位置によっては印象が違う)に捉えているので好感を持っているし、妾を描写するべきかなと私も思っている。
ただ、朝ドラはあくまで「朝ドラ」であって「大河ドラマ」でも「木曜時代劇」でも「タイムスクープハンター」でもない。視聴者の中心は主婦層、爽やかな癒しが求められる。ニーズが違えば作品内容も変わらざるを得ない。
比較的時代考証に沿う「大河」とて、お歯黒・眉剃りの既婚女性は現れないし、江戸時代初期までは女性の座り方は片膝立座か胡坐なのに正座になっている。
合戦場面も鉄砲や弓矢による応酬が大半なのに、足軽から馬上の大将まで短い太刀を振り回しての鍔迫り合いが殆ど。
たぶん、「サムライせんせい」のように江戸時代の人間がタイムスリップして時代劇を観たら、100%確実に「なんじゃこりゃ!」と驚くはず。 視聴者や読者に飲み込みやすいよう「事実」を多少改編するもの、しなかったら大半の人間は納得できないし違和感を持つだろう。史実通りに描いても、作者と視聴者との政治的立場や価値観が違えば事実解釈に乖離が生じて、やはり不快感を抱く。
本作でも全く妾の存在を全く描いていない訳ではなく、当たり前のように姑が妾を斡旋しようとしたり、主人公あさが妾を勧めようとしたり、亭主も存外あっさりと妾を持つことに同意してみせたりと、妾にまつわる当時の風習や存在などを臭わしている。
朝ドラなのでその程度の描写が精一杯ではないかなと思っている。制作者側も物語の世界と史実の世界の狭間で苦慮するものだ。
だから、野暮は言うな。
「本物のドラマ」でないというのなら、
小林よしのり氏の作品も含めて全てに何らかの偽物が混じっている。創作というのはそういうもので、その嘘の度合いを眺めるのも鑑賞の楽しみの一つだ。
「
あさが来た」が気に入らなかったら、たぶん私も小林氏に同意だろうけど。
(余談1)自由民権運動の志士植木枝盛がニヒルな色男として登場する。たぶん、異論が出てくると思うが、私はこんな感じではなかったかなと思う。
偉そうで愛想が無くて、しかし女性には優しいのが植木枝盛の特徴だ。
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