ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「オデッセイ」 孤独を楽しむ時に〔59〕 

オデッセイ」 
火星ファンにはたまらない作品。


オデッセイ。

【原題】THE MARTIAN 
【公開年】2015年  【制作国】亜米利加  【時間】141分  
【監督】リドリー・スコット
【制作】
【原作】アンディ・ウィアー
【音楽】ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
【脚本】ドリュー・ゴダード   
【言語】イングランド語
【出演】マット・デイモン(マーク・ワトニー飛行士)  ジェシカ・チャステイン(メリッサ・ルイス准将)  クリステン・ウィグ(アニー・モントローズ)  ジェフ・ダニエルズ(テディ・サンダースNASA長官)  マイケル・ペーニャ(リック・マルティネス少佐)  ショーン・ビーン(ミッチ・ヘンダーソン)  ケイト・マーラ(ベス・ヨハンセン)  セバスチャン・スタン(クリス・ベック博士)  アクセル・ヘニー(アレックス・フォーゲル)  キウェテル・イジョフォー(ビンセント・カプーア)  ベネディクト・ウォン(ブルース・ング)  マッケンジー・デイヴィス(ミンディ・パーク)  ドナルド・グローヴァー(リック・パーネル)  ニック・モハメッド(ティム・グリムス)  陳数(ジュー・タオ)  エディ・コー(グオ・ミン)  ナオミ・スコット(リョウコ)  

【成分】かっこいい コミカル ファンタジー 勇敢 楽しい 知的 絶望的 SF 火星 サバイバル

【特徴】火星ファンにはたまらないサバイバル物。火星に独り取り残された宇宙飛行士の物語、惜しむらくは絶望感にやや欠ける。

 原題は「THE MARTIAN」、直訳すると「火星人」である。原作本は原題に沿って「火星の人」と訳されているが、映画化邦題は「オデッセイ」というイングランド語を当てている。オデッセイの意味は「冒険旅行」や「冒険的長期の放浪」などの意味合いがあるので、「火星人」などとストレートなタイトルよりは情感に迫るものと思えるが、他に日本語のタイトルは無かったのだろうか?

【効能】孤独を楽しめる。孤独の中に人と人とのつながりを見いだせる。

【副作用】悲壮感や絶望感に欠け御都合主義に見える。

下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
アメリカ的能天気さのおかげで 
絶望感に欠け過ぎる。


 幸運にも日本公開前に私はオランダ航空アムステルダム行きの機上で鑑賞できた!

 マット・デイモンは好きな俳優であるが、それ以上に火星を舞台にした物語に興味があった。NASAが発表した太古の火星の海が干上がっていく過程を描いた動画は何回も観てしまう。(余談1)

 さて、この作品は一種の極地モノ映画で、孤立した人間が限られた資材と知恵を使って困難を打開し生還する物語だ。しかも地球からロケットで数年はかかる究極の孤立だ。

 数名のクルーが火星に仮設の基地を作って本格的な地質調査を行うのだが、強大な砂嵐が襲い、ミッションを始めたばかりにも関わらず船長は中止を決断し火星を脱出して帰路につく。ところが1名だけ砂嵐で吹き飛ばされたアンテナの直撃を受けて行方不明となる。この不明者がマット・デイモン氏扮する植物学者である。
 船長はスレンダーで40代前半くらいの女性准将、おそらく今回の計画は極めて重大で独自判断も求められる性格のようで、指揮官は地位の高い優秀で若い人材に大幅な権限を与えている事が窺われる。彼女は自らしんがりになって植物学者の捜索を行っていることから、責任感が強くて積極的に現場に突き進むタイプである事が描写されている。この現場主義的果敢な指揮官の姿はラスト大団円の伏線になる。

 砂嵐のおかげで火星離脱用ロケットが傾いてしまう。倒れてしまったら地球に戻れない。やむを得ず行方不明の植物学者を諦めロケット発進、、ところが死んだと思われた植物学者は生きていた。置き去りにされた彼は無人となった基地に戻り、自分で負傷した腹の手術を行う。
 幾つかの御都合主義的な幸運が重なった。アンテナの部品が腹に突き刺さっていたが内臓は傷つけなかったようで、異物を引き抜き消毒と縫合だけで済んだ。
 数人分の食糧が置き去りにされているので、1人だけなら通常の消費でも半年くらいは生きられる。その間に植物学者の知識を活かして基地内にジャガイモ畑を作ってしまう。
 科学者としての習慣なのか、記録ビデオを撮りながら、後に記録ビデオを観るであろう人々に向かって独り言を吐きながら空元気を出して作業を続ける。

 一方、火星上空を観測する人工衛星で地表面をチェックしていた20代と思われる女性スタッフが放棄された基地の変化に気づいて上司に報告。NASA長官をはじめトップクラスの責任者が直ちに集まって対策が練られる。
 ここで興味深いのは、ミッション責任者が当初別の案件で火星上の人工衛星を使う許可を求めたが長官は許可しなかった。ところが植物学者の生存を知るや、モニターしている若い女性スタッフに人工衛星の管理権限を即決で与えている。(余談2)
 日和見や保身に走りそうな局面でも、アメリカでは早い決断が求められる。また権限の所在も明確だ。

 植物学者は過去に火星に送られた無人探査機を発掘して修理し、地球とのコミュニケーション用アンテナの代用にしてしまう。
 こうして、トントン拍子にミッションが展開していく。数々の困難が襲い掛かってくるが、そのたびに助け舟が現れ乗り越えていく。

 個人的には好きな作品でワクワクするのだが、やはり悲壮感が希薄なのが惜しい。
 遥かかなたの地球に思いを馳せながら独り生きていく事が想像を超えたものであるためか、おそらく主演のマット・デイモン氏も主人公の志を火星に骨を埋める事もじさない火星大好き学者という解釈で演じていたのだろうか?

 順調と思われていた火星のジャガイモ畑は基地の大破で駄目になる。基地の耐用日数を超えているためなので当然の展開なのだが、物語に波乱と盛り上がりを加えるためのエピソードであるのが見えてしまう。
 補給ロケットの打ち上げに失敗して落胆のNASAに中国国家航天局が国の利害を無視して協力してくるのは昨今の米中関係のいやらしさが滲んでいる。

 そして無名の若い天体力学の学者が地球の帰路についた宇宙船を引き返させて救出に向かわす案を立て、許可を与えない長官に逆らって船長たちが引き返し救出させるのは、置き去りにして出発してしまったクルーたちに良き場面を提供するためであるのが見えてしまう。

 好きな作品だが、物語の結末が見えてしまう上に、アメリカ的明るさと楽天さで悲壮感が希薄なので、人によっては御都合主義映画に見えるかもしれない。

(余談1)YouTubeから視聴可能。NASA Goddardチャンネルで公開されている。「Mars Evolution」という僅か2分足らずの作品だが、太古は豊かな海と豊かな水分を含んだ白い雲が漂う青い空の火星が、次第に水が干上がり現代の赤い砂漠へと変化していく40億年の物語が物悲しい音楽とともに描かれている。

(余談2)ミッションを行うクルーたちに地球から指示をおくる立場のフライトディレクター役には、なんとシャープ少佐やボロミア役で有名な英国の俳優ショーン・ビーンが扮していた。

晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優

晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作


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火星の人〔新版〕(上) (ハヤカワ文庫SF) アンディ・ウィアー
火星の人〔新版〕(下) (ハヤカワ文庫SF) アンディ・ウィアー

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こういう映画は確かにワクワクするし、
知的好奇心も刺激されるのですけど、
やはりどの土台となる絶望感と孤独感を
もっとしっかり描いてほしかったですよね。
う~んもったいない!

中国の唐突な登場は確かに嫌らしくて、
この映画にも中国資本が入ってるのかしら?
と疑ってしまいましたね。
[ 2016/02/11 23:32 ] [ 編集 ]
スパイクロッド氏へ

 ジェイソン・ボーンの孤独感は素晴らしかったのに、少し想像するのが難しかったのか?
 片道切符で火星に移住しようとする人たちがいますが、彼らを参考にしたんでしょうか?

 中国の陳数ちゃん、色白美肌、意外に胸ありますよ。島田陽子的美女でしたね。

> こういう映画は確かにワクワクするし、
> 知的好奇心も刺激されるのですけど、
> やはりどの土台となる絶望感と孤独感を
> もっとしっかり描いてほしかったですよね。
> う~んもったいない!
>
> 中国の唐突な登場は確かに嫌らしくて、
> この映画にも中国資本が入ってるのかしら?
> と疑ってしまいましたね。
[ 2016/02/13 02:21 ] [ 編集 ]
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