ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「用心棒」 ストレス解消活劇〔25〕 

用心棒」 痛快娯楽時代劇の完成型


 
【公開年】1961年  【制作国】日本国  【時間】110分  
【監督】黒澤明
【原作】
【音楽】佐藤勝
【脚本】黒澤明 菊島隆三
【出演】三船敏郎桑畑三十郎)  仲代達矢(新田の卯之助)  司葉子(小平の女房ぬい)  山田五十鈴(清兵衛の女房おりん)  加東大介(新田の亥之吉)  河津清三郎(馬目の清兵衛)  志村喬(造酒屋徳右衛門)  太刀川寛(清兵衛の倅与一郎)  夏木陽介(百姓の小倅)  東野英治郎(居酒屋の親爺)  藤原釜足(名主多左衛門)  沢村いき雄(番屋の半助)  渡辺篤(棺桶屋)  藤田進(用心棒本間先生)  山茶花究(新田の丑寅)  西村晃(無宿者の熊)  加藤武(無宿者の瘤八)  中谷一郎(斬られる凶状持)  大橋史典(斬られる凶状持)  堺左千夫(八州周りの足軽)  千葉一郎(八州周りの足軽)  谷晃(丑寅の子分亀)  羅生門綱五郎(丑寅の用心棒かんぬき)  土屋嘉男(百姓小平)  清水元(清兵衛の子分孫太郎)  ジェリー藤尾(丑寅の子分賽の目の六)  佐田豊(清兵衛の子分孫吉)  大友伸(馬の雲助)  天本英世(清兵衛の子分弥八)  大木正司(清兵衛の子分助十)  寄山弘(百姓の親爺)  大村千吉(八州周りの小者)  本間文子[女優](百姓の古女房)
    
【成分】パニック 勇敢 かっこいい 時代劇 1860年代? 幕末 関東 
       
【特徴】黒澤明監督と三船敏郎氏の代表作。完成度の高い痛快娯楽時代劇で、後にハリウッドやイタリアなどでリメイクやパロディが数多く制作される。
 原作者のクレジットはないが、黒澤監督自身が「血の収穫」をはじめとするダシール・ハメットのハードボイルド小説から強く影響を受けていることを認めている。

 時代は、新田の卯之助の風貌から1850年代から1860年代と推定される。三船敏郎氏演じる飄々として腕が立ち狡猾で自由な素浪人侍が魅力。
 三船敏郎氏はこの素浪人スタイルが気に入ったのか、活躍の場をTV時代劇に移してからも同様スタイルで演じ続けた。
  
【効能】人生を達観し自由に生きる桑畑三十郎に憧れを持つ。
 
【副作用】テンポがゆったりとして違和感。台詞が聞き取りにくく不快感。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
三船敏郎、あたり役
 
 晩年の黒澤映画しか知らない方は、文学的かつ藝術的な映画というイメージを描くかもしれない。仮に、作品が全く面白くなくても、あるいは内容が理解できなくても、「巨匠黒澤明」というネームバリューだけで観客が集まり、訳の解らぬ「名作」が興行的に成功する。実際に「巨匠」であるゆえに経済的に黒澤市場が形成されているので、並の監督であればスポンサーや俳優やスタッフの利害関係に縛られて妥協してしまうところ、藝術家としての「我がまま」が通ってしまうため、観客には理解できないこだわりが目立つようになった。

 しかし昔からの黒澤ファンにとっては、三船敏郎氏が出演していた50年代・60年代の諸作品が娯楽性と藝術性のバランスがとれているので馴染みがあると思う。この「用心棒」はその代表格である。何か哲学的文学的テーマを追究しているわけではなく、あくまで判り易い勧善懲悪のヒーローアクションを新機軸で開拓した映像センスと技術で表現することに徹した娯楽時代劇である。
  
 痛快娯楽時代劇といえば、「用心棒」の7・8年前に欧米映画人が「ジャップにしてやられた!」と感嘆した「七人の侍」がある。後にハリウッドは「荒野の七人」というリメイクをつくるほど影響を与えるのだが、ただ「七人の侍」はタイトル通り少なくとも7人の登場人物を描ききらなければならないうえに、野武士集団から村を守るという物語ゆえに舞台も大仕掛けになりスペクタクル超大作になってしまう。そのため上映時間も3時間半と長い。

 その点「用心棒」の登場人物は必要最小限に削られ、三船敏郎氏扮する素浪人桑畑三十郎というヒーロー(余談1)を中心に騒動が発展するように構成されているため、各登場人物の見せ場を無理なく魅せられ、話が飲み込みやすい。上映時間も中弛み無く緊張感を持続したまま起承転結リズム良く2時間弱という手ごろな長さに収められている。
 見どころであるアクションでは、当時まだ主流だった型のある舞台芝居的殺陣をやめて、リアルな鍔迫り合いを再現した格闘描写に人が斬れる効果音を取り入れた。この手法は後のTV時代劇にも流用されていく。この場面のカメラワークは、写真をやっている人なら判るだろうが、望遠によるパンフォーカス(余談2)を多用して遠近を無くし、人間が注視しているかのような視点でアクションを表現している。

 以降のTV時代劇やハードボイルド物の手本となり、海外の映画人にも強い影響を与える。後にリメイク作?のクイント・イーストウッド主演「荒野の用心棒」がイタリアで制作され、内容が「用心棒」に酷似しているとかで物議を醸すがマカロニウエスタンを代表する「名作」となる。
  
 最後に「用心棒」を観るたびに思うのだが、髪型が非常にナチュラルだ。自毛を活かしたメイクや、不自然な揉み上げが無い鬘には好感が持てる。
 現在の時代劇のカツラは気持ち悪い。子供でも分厚い揉み上げを生やす不自然な生え際、近頃の女優は自毛を活かした生え際にしているが、カツラでは一様に額が狭く富士額。桑畑三十郎の前髪はペッタリとオールバックになっていて相撲取りの総髪丁髷のようにナチュラルだが、TV時代劇の総髪はまるでリーゼントのように盛り上がりすぎている。何とかならんものだろうか。(余談3)
 
(余談1)初めて観たとき、一見すると緊張感の無い飄々とした桑畑三十郎に憧れた。揉み上げや首筋を掻く仕草が格好よく見えた。
 
(余談2)よく風景写真では画面隅々までピントが合い、アイドルのポートレートでは顔はアップで綺麗にピントが合っているのに背景がボケているのを見たことがあるだろう。
 広角になればピントの合う範囲が広くなり、望遠になると狭くなる。また絞りを絞ればピントの合う範囲が広がり、絞りを完全に開けるとピントの合う範囲が狭まる。風景写真や肖像写真はこれらの特性を活かして撮影されている。
 パンフォーカスとは、画面全体のピントが合っていることで、広角なら簡単だがもともと暗いレンズである望遠で絞りを絞り込まなければならないので強烈な光の量が必要である。だから撮影は役者もカメラマンも大変だったのではないかと思う。
 実相寺監督の魚眼レンズ(超広角)を使った画面に圧倒された事があったが、黒澤監督は望遠で勝負している?
 
(余談3)むかし、柴田恭平氏が福沢諭吉に扮したとき、あの分厚い揉み上げの丁髷が気になった。私の書斎には諭吉の著作「福翁自伝」があるが、そこにはアメリカの10代の美少女とツーショットで写る丁髷の若き諭吉の写真が掲載されていた。頬髭どころか揉み上げも無いので耳のあたりはすっきりしている。髪の毛もカツラのようなボリュームは無い。

余談3の追記・・ところが、地上デジタル放送の解像度の高さが影響しているのか、NHK大河ドラマなどを中心にナチュラルメイクが定着してきた。以前から髪の毛が長い女優については自毛の生え際を活かして半カツラを付け足す手法が主流になっていたが、2010年代から男性も半カツラ方式が主流になった。
 特に大河ドラマで主役・助演のポジションに起用されると、他のドラマや映画の仕事を減らしてほぼ1年間拘束されるので、俳優たちは自毛を長く伸ばすようになった。中には福山雅治氏や中村獅童氏のように大河の出演が決まると自分の髪で髷が結えるように伸ばす俳優が増えてきた。
 現在の大河ドラマに見慣れた目で関西ローカル局で放送されている70年代80年代時代劇の再放送を見ると、丁髷の不自然さが目について違和感を強く感じる。(2014年追記)
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆☆ 秀
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆☆ 金字塔

 
【受賞】ヴェネチア国際映画祭(男優賞)(1961年)
 
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血の収穫 (創元推理文庫 130-1) ダシール・ハメット 原作
 



 
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