ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「隠し砦の三悪人」 家族と一緒に愉快になろう〔5〕 

隠し砦の三悪人」 冒険時代活劇の巨編。
 

 
【公開年】1958年  【制作国】日本国  【時間】139分  【監督】黒澤明
【原作】
【音楽】佐藤勝
【脚本】黒澤明 菊島隆三 小国英雄 橋本忍
【言語】日本語
【出演】三船敏郎(真壁六郎太)  千秋実(太平)  藤原釜足(又七)  藤田進(田所兵衛)  志村喬(老将長倉和泉)  上原美佐['37](雪姫)  三好栄子(老女)  樋口年子(百姓娘)  藤木悠(峠の関所番卒)  笈川武夫(峠の関所番卒)  土屋嘉男(早川方の騎馬侍)  高堂国典(立札の前の男)  加藤武(落武者)  三井弘次(山名の番卒)  小川虎之助(橋の関所奉行)  佐田豊(橋の関所番卒)  上田吉二郎(人買いの親爺)  沢村いき雄(バクチの男)  大村千吉(秋月の雑兵)  小杉義男(秋月の雑兵)  中島春雄(秋月の雑兵)  堺左千夫(六郎太に捕まえられる雑兵)  谷晃(六郎太に捕まえられる雑兵)  佐藤允(山名の足軽)  中丸忠雄(屈強な若者)  緒方燐作(屈強な若者)  熊谷二良(山名の足軽)  広瀬正一(山名の雑兵)  西条康彦(山の若武者)  日方一夫(足軽)  千葉一郎(足軽)  山口博哉(荷車を追う騎馬武者)
    
【成分】笑える 楽しい スペクタクル ゴージャス ロマンチック パニック 勇敢 セクシー かっこいい コミカル 時代劇 戦国時代 室町時代後期 16世紀初頭 白黒映画
       
【特徴】黒澤明監督が放つ娯楽時代劇。体臭が漂いそうなリアルな室町時代の風俗再現が素晴らしい。迫力ある群集シーンも見逃せない。
 雪姫役の上原美佐氏が現代的な野性味あふれるモデルのような美形を披露、台詞は多くはないが強烈なインパクトを与えている。
  
【効能】世渡りの極意を学べる。
 
【副作用】台詞が聞き取りにくく不快感。ヒロインがダイコンなので興ざめ。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
何故か雪姫の上原美佐はダイコン。
 
 ご存知と思うが、この作品に感化されたアメリカの映画青年が70年代後半に「スターウォーズ」を制作して大成功を収める。主演の千秋実氏と藤原釜足氏の狂言まわしコンビがC-3POとR2-D2のロボットコンビになり、勝気で活動的な雪姫(余談1)はそのままレーア姫になる。パクリではないかと疑われるほど「スターウォーズ」はこの作品に似ている(ある種のリメイク)ので、ハリウッドに対する黒澤監督の影響力は計り知れない。

 子供の頃はそんな背景など知らなかったので、タイトルから連想して3人の山賊が繰り広げる活劇だと思っていた。作品紹介によく使われる写真には、岩陰の中央で憮然と胡座をかく三船敏郎氏の向かって右に、だらけた格好の千秋・藤原コンビ、左端で横たわる涼やかな美女が写っている。その場面から私は勝手に物語を想像していた。冒険好きのおてんば姫様が家出して3人の山賊と意気投合し珍騒動を繰り広げるのだが、国全体が蜂の巣をつついたような騒ぎになって山奥に追い詰められ、事の重大さに気付いた3人はスヤスヤ眠るお姫様の横で途方にくれている、そんな光景を予想していた。
 私の勝手な空想も平凡だが、この作品も観終わった直後の感想は意外にラストが予測できるありふれた展開だったので拍子抜けした。

 ただ、それ以上に驚いたのは、そんな平凡な物語展開であるにも関わらず、2時間強に渡って飽きさせずに魅せてしまう黒澤監督の手腕である。考えてみれば物語の基本パターンはそれほど多くはないし、むしろ予定されたラストへどういう魅せ方で展開していくかが腕の見せ所である。藝術的野心で基本パターンや起承転結の構成を崩す映画人がいるが、それをやってしまうと観客は面白くない。

 最初に思うのはリアルな室町時代後期の風俗である。いかにも歌舞伎や時代劇で使うようなカツラではなく自毛の生え際を活かした丁髷メイクだ。このメイクだけでもリアリティーは格段にあがる。TV時代劇にありがちな晴着のような着物ではなく、当時の人間の体臭が漂いそうな姿にエキストラ一人一人が扮しているのも監督のこだわりが覗われる。
 特に庶民の描写にリアリティーがある。白黒時代の黒澤作品の支持者には、強かに生きる庶民の描写を観て社会思想的なものを感じる人がいるようだが、この作品については無いと思っている。あくまで痛快娯楽時代劇に強烈な説得力を出すためリアリティにこだわった結果だと私は考えている。

 いつも思うのが大群衆場面の迫力だ。落城した城で穴掘り作業をやらされる場面や、捕虜たちが一斉に蜂起する場面は色褪せない。日本の映画監督の弱点が群衆シーンで、ハリウッドの大作を観るといつも日本映画のスケールの狭さを思い知るのだが、黒澤監督の場合は全く逆でハリウッドが黒澤映画を参考にしているのである。
 30代の三船敏郎氏の堂々とした逞しい体格と、疾走する馬上での鍔迫り合い(余談2)、「七人の侍」でも思うが今の時代劇でこれほどの迫力ある格闘場面を演出したり演じたりする映画人や俳優がいるだろうか? アクションを志す日本の映画人が香港やハリウッドへ活路を開かねばならない現状は寂しい。 

 ただ、傑作であるのは間違いないのだが、何故?と思う箇所が幾つかある。気になった点を2つだけあげる。1つは火縄銃の発射音である。私は火縄銃の音を聞いたことがあるが、映画のようなお洒落な効果音ではなく爆発音に近い。鉄砲が使われ始めた頃は、命中よりも爆発音で相手の足軽や馬を驚かせるのが狙いだったのだから、あんな小さな音ではない。
 もう1つは雪姫役の上原美佐氏の演技力である。もっとも、それがかえって世間知らずの勝気なお姫様のように浮いた存在になって良かったのだが、それでも発声の仕方が気になった。作品の質を低めるほどではなかったが。

(余談1)上原美佐氏は当時まだ20歳を過ぎたばかりの現役大学生。伝説の美女として有名らしいが、初めて観たときは眉毛をつり上げたメイクのせいか、「スタートレック」のバルカン星人ミスタースポックみたいで滑稽だった。今みると、綺麗だ。
 「あずみ2」で栗山千明氏に期待していたイメージが、この上原美佐氏扮する雪姫が胡座をかいて家臣に命令したり、美しい腕と脚を剥き出しにして仁王立ちする場面である。そして「キルビル」風のアクションを付け足したら、絶対に売れると思うんだけどなあ。それをしなかった金子監督には今でも恨みに思う。
 ところで、上原美佐氏は僅か2年で芸能生活から引退したようである。本人が「才能が無い」と判断しての引退らしい。これは正しい判断ではないかと思う。実力以上の評価をされるのは息苦しいものである。

(余談2)三船氏はスタント無しで演じていた。
 

 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆☆ 秀
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
【受賞】ベルリン国際映画祭(監督賞)(1959年)
  
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隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS スペシャル・エディション(3枚組) [DVD] 樋口真嗣
スター・ウォーズ 新たなる希望(エピソードIV) (リミテッド・エディション2枚組) [DVD] ジョージ・ルーカス
   
晴雨堂関連書籍案内
回想 黒澤明 (中公新書) 黒澤和子
 



 
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