消える人 もがく地方…
3000円散髪に1万5000円のタクシー代 平成27年の国勢調査が26日に公表され、初めて総人口が減少したことが明らかになった。人口の首都圏への一極集中が顕著となり、地方との格差はさらに広がった。雇用に教育、福祉とさまざまな分野で課題を突きつけられている地域は、人口減の波にもがいている。(産経新聞)【雑感】ウチの郷里も似たようなものだがまだマシな方だ。
合併で様々な施設の統廃合が進む御時世で、私の郷里は周辺山村の中心街という事もあってか、町役場は引き続き支所として存続し、私が通っていた保育園や小学校は依然として健在、父が通っていた中学校もある。やなせたかし先生のおかげで町興しは一定の成果を生んでいるようだ。
市の職員とUターンについて相談した事に話題となったのが都会からの移住者、私の本籍地は前述のように比較的開けていて地域の山村や集落の中では中心街なので便利がよく、移住希望の都会人には人気が無いという。都会人はもっと限界集落に近い集落を希望するとか。そういえば、以前当ブログで紹介した「うずまき舎」も山のてっぺん近くの古民家に古書店を構えた。
とはいえ、幼い頃の私が祖母と一緒に行った弁当屋・ラーメン屋や写真屋は廃業した。商店街は寂れていく。昨年、「うずまき舎」を訪問した時、店主が「このショーケースは○○の写真屋さんからもらいました」と言われたときは、ああ・・そうなのかと、ショーケースが引き続き「うずまき舎」で使われている安堵と、商店街の一角がまた一つ消えた寂しさが入り混じった。
我が郷里はまだ町役場が支所として存続しているし、地域のコミュニティ広場でもある小学校も中学校も存続している事が大きい。
もし役場が地域になければ、年金や住民票など公文書が必要なときなど不便だ。小中学校が無くなると地域社会の結集力は一気に衰える。子供を抱えている世帯は学校の近くへ転居していくだろうし、運動会や文化祭など子供の保護者も一堂に会する機会が失われる。 よく環境保護の問題で留意しなければならない事項として生態圏がある。例えば町に出没した月輪熊を殺さず保護しようと思えば、単に捕獲して山に返せば解決というものではない。その山が開発されて森林が消えてしまったら熊は生息地を失う。熊を保護するのであれば生態圏まるごと保護しなければ意味が無い。
これは人間社会も同じ事だ。社会を構成する拠点が次々と失われていくと、地域社会を維持する根拠が無くなるのでその先は廃墟しか無い。(余談1)
「では、晴雨堂はなぜ帰らん。せっかく本籍地があるのに、大阪にしがみついとんねん?」との疑問と御批判を受けそうだ。私自身ももっと若い頃から郷里の町興しを志に計画を立てれば良かったと後悔している。
だが、殆どの人間は若い頃からそんな大層な志なんぞ持っていない。私の小中学生時代であれば、男の子はプロ野球の選手、女の子は看護婦や漫画家などだ。故郷にかつての繁栄を取り戻させると嘯く同級生は見た事も会った事もない。
大阪に住むようになって40年、経済基盤は完全に大阪だ。経済とは単に銭の基盤だけではない。人と人とのつながりも含まれている。子供ができれば、世話になっている施設や病院とのつながりも切りたくない。さらに私の歳になると高齢の父母の近くに居を構えたままにしておきたい。早い話、身動きがとりづらいのだ。
もちろん故郷には愛着があるので、毎年の盆休みには帰省しているし、郷里の親戚との付き合いも維持している。ネットを利用して高知ゆかりの人たちとの誼も通じようと心がけ、本籍地も確保している。高知県人は郷里への帰属意識が強いので、私のように大阪や東京が完全に生活基盤になってしまっても本籍地を保持している人は多い。一度手放してしまったら、おそらく二度と取り戻せられないだろうから。
世間の人は、もう若くはないから、さっさと郷里の土地を売って本籍地を大阪に移して墓も廃せば後々楽なのに、と思うだろう。
だから前の話に戻るのだが、都会に出た普通の人の殆どはさっさと田舎との縁を切る。切らざるを得なくなるのだ。地域社会の拠点たる役場・小中学校・図書館や病院などを機械的に切り捨ててしまったら、急速に衰えていき、その先は廃墟になるしかない。「国境線」を抱えている
過疎地方などでは国防の問題も生じる。
(余談1)だからこそ、参議院地方選挙区の合区には反対なのである。衆議院の定数削減にはまだ得心できなくもないが、上院たる参議院にまで機械的に人口比率をあてはめられては、地方と都会との発言力格差はますます広がり、これは一票の格差以上の問題だと私は思う。
たしかに憲法に参議院は県の代表なんて事は書いていないが、ならばなぜ参議院設立時から衆議院と同じ選挙区割りにしなかったのだ? 世界各国の上院と同じ機能を持たせるために県単位の選挙区にしたのではないのか?
高知県はまだマシだが、同じくらい
過疎地方である山陰地方は竹島などの「国境線」を抱えている。
過疎地方から議席を奪って良いのか?
「一票の格差是正」を口実に
過疎地から政治力を奪う動議をした弁護士や憲法違反の判例を出した最高裁判事たちは東京人だ。特に判事たちの大半は東京生まれ東京育ち東大卒で、地方の問題には無知蒙昧の可能性大である。
経済発展の美名のもとに地域社会や生態圏のことなんぞ無配慮のまま山林を「開発」する構図に似ている。
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若い人は就職を求めて東京に出て行くし高齢者も病院がないので親戚を頼って出て行くそうです。
東京からさほど遠くない銚子ですらこの事態なので地方はもっと深刻だと思います。