ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「レイプ・オブ・アナ・フリッツ」 社会を冷笑したい時に〔41〕 

レイプ・オブ・アナ・フリッツ」 
白雪姫の下衆版




【原題】EL CADAVER DE ANNA FRITZ
【英題】THE CORPSE OF ANNA FRITZ 
【公開年】2015年  【制作国】西班牙  【時間】75分  
【監督】エクトル・エルナンデス・ビセンス
【制作】
【原作】
【音楽】トロ・プラッツ
【脚本】エクトル・エルナンデス・ビセンス イサーク・P・クレウス   
【言語】スペイン語
【出演】アルバ・リバスアナ・フリッツ) クリスティアン・バレンシア(イバン)  ベルナート・サウエル(ハビ)  アルベルト・ガルボ(パウ看護師)  ニコ・アビラ(医師)          

【成分】セクシー 不気味 恐怖 笑える 絶望的

【特徴】死姦をテーマにした作品である。
 ヒロインの名前がドイツ風に聞こえたのでドイツ映画かと思ったがスペイン映画である。猟奇映画と思いきやゾンビ映画? ゾンビ映画かと思いきやサスペンス映画? サスペンス映画化と思いきやスプラッタ? 
 1時間強の尺で比較的バランス良くまとめた佳作ではないかと思う。白雪姫の下衆版と思えば納得できるかもしれない。

 殆ど全裸で演技したヒロインのお仕事が光った作品。

 エログロ的萌え作品でもあるのだが、3人の下衆な議論のリアルさと破滅的オチで社会を冷笑したい作品とする。

【効能】人間の悲観的可能性を直視できる。ヒロイン役のアルバ・リバスが愛おしくなる。

【副作用】死姦趣味に目覚める? 様々な要素が中途半端に思え物足りなさを感じる。

下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
ネクロフィリア? ゾンビ? コメディ?

 表題にもなっているヒロインの名前「アナ・フリッツ」がドイツ風に見えたのでドイツ映画と思っていたらスペイン映画だった。

 さてこの映画はネクロフィリアがテーマになっている。遺体と交尾する性癖のことを指す。75分とやや短い尺の映画で、それなりにまとまりのある完成度なのだが、突っ込みどころも満載だ。
 たぶん企画制作サイドは、若い女性の遺体と交尾する男性(余談1)の禁断のエロ映像をまず撮りたくて、あとは物語の体になるよう適当にエピソードを付け足したのだろう。

 というのも、話の展開があまりに極端で矛盾だらけなのである。

 スペインの制度は知らないが、それでも人気女優の御遺体をすぐ検死に回さず遺体安置所に放置状態にするだろうか? 作品上では女優がなぜ死んだのか死因が明らかにされないままだった。病院で病死等自然死でないのなら変死であり、しかもうら若き有名人であれば大抵の先進国では死因特定のため司法解剖に回されるはずだが。 
 次に病院に務める男性主役が悪友らと病院で3人で酒飲んだりヤクやったりして気分がのった勢いで安置所に侵入して美人女優の遺体と行為に及ぶなんて職場だらけ過ぎモラル低すぎだが、映画の中の話なので許せるとしても、行為を行う際に遺体の足が簡単に開けたのはおかしい。
 この場面を見た時、あれ?死後硬直してない、と思った。ヒロインはスレンダーで筋肉質のナイスボディ、ならば硬直が進むと簡単に開けられなくなる。少なくともあれはかなり柔らかい。禁断の行為を行おうとしている若い男は「冷たい」と言っているので直腸温度はかなり低く外気温に近くなっている事だろう。という事は死後硬直も始まっているはずだが。
 演じる女優はなかなかの死体ぶりなだけに余計におかしい。メイクやライティングを工夫して土気色になった顔や引き締まったウエストのドアップ映像がリアルなだけに奇怪。日本の刑事ドラマ「臨場」でも死後硬直演技やっているのに何故だ?

 そして男が行為に及び興奮がマックスになって激しく突き突きしている最中に、遺体の目がカッと開く。
 おお! これはゾンビ映画だったのか?

 しかしゾンビ映画にはならなかった。女性は男の禁断の行為によって息を吹き返したのだ。て、事は仮死状態? 死亡診断した医師はヤブ医者か?
 それにしても童話の白雪姫を下衆にアレンジしたらこんなシチュエーションになるのだろうか?(余談2)

 女性は何が起こったのかは呑み込めてなかったが、少なくとも意識を失っている間に男たちによって手篭めにされた事は認識したようだ。顔には血色が戻り目には涙を浮かべる。
 3人の男たちはステレオタイプ的に良い子・悪い子・普通の子に分かれて言い争いを始める。良い子は終始一貫してネクロフィリアに反対し、ヒロインが蘇生してからは身体を上手く動かせられない彼女を介抱して、野郎たちに医師への連絡を意見する。ところが悪い子が隠蔽工作を思いつく。ヒロインは元々死んでいたのだから、ここで息の根を止めて生き返らなかった事にして禁断の行為は無かったことにしよう、と。

 悪い子たちの犯罪計画に反対する良い子は悪い子たちに突き飛ばされて頭を打ち死んでしまう。良い子は死ぬ間際までヒロインを気遣っていた。
 悪い子はどんどん犯罪に手を染める。さっきまで憧れの美人女優だったはずのヒロインの口と鼻を丸めたシーツで塞いでとどめを刺し、さっきまで一緒に酒盛りやった親しき友人の遺体を大きなゴミ箱に入れて病院の外の雑木林に行き、まるで粗大ゴミのように遺棄する。

 一方、ヒロインと禁断の行為をやった変態の男は、死体遺棄をする友人が悪い子になったおかげでイメージとしてナイーブな普通の子に「昇格」した。良心の呵責から、ヒロインの遺体を丁寧に拭いて綺麗にし、白いシーツをかぶせる。
 すると、咳き込む声がする。なんとまたしてもヒロインは奇跡的に息を吹き返したのだ。犯罪を重ね続ける悪い子の姿にすっかり恐れおののき我に返った男は、ヒロインに「死んだふりをしておけ」と助言する。

 やがて死体遺棄した悪い子が病院に戻ってくる。死んだふりをしていたヒロインは体調がほぼ戻り武器を手にして二人の男に必殺仕置き人の如く逆襲。話は一気にスプラッタへ。
  本来平凡だった男たち3人はちょっとしたスケベ心をエスカレートさせてしまったために全員死亡、そして才能あり前途明るかったはずの美しい女優は謎の仮死状態に陥った挙句にレイプされ殺人者になってしまうオチで劇終。

 ヒロインの演技が光る。死体を演じるときの蝋人形か肉の塊のように固まった静の演技から、血色が戻り涙する動の演技は生々しい。
 また3人の男たちの下衆の議論もリアリティがあった。多重債務者が自己破産すればいいものを銀行強盗してまで返済しようとする愚かな心理によく似ている。
 一度は死亡と診断され生き返った事実があるのだから、ここは一か八か神のお告げに従い命がけで禁断の行為をして命を助けたとでも取り繕って酌量を求めたら、ひょっとしたらヒロインの意向でお咎め無しになるかもしれない。

 オチから何か意味を見出せるとしたら、根っからの善人は真っ先に抹殺されゴミの様に捨てられていき、凡人たちは悪の心を呼び覚まされ言い訳のために殺し合いを繰り広げる。
 そして周囲からチヤホヤされてきたセレブな女優は、野卑な男たちにとっては性の捌け口の対象でしかなく用が済めば善人と同じく殺される運命、辛くも生き残ったものの人気女優から殺人者に落ちぶれていく未来が待っている。
 人間の悲観的な可能性をぎっしり75分に詰め込んだ「佳作」と言って良いのかな?

(余談1)学生の頃に聞いた話では、古代エジプトのミイラ加工技師も若い女性や貴婦人の遺体を担当すると、そういう事を役得でやっていたらしい。

(余談2)元々の白雪姫には実は下ネタ的エピソードが盛り込まれているのではないかとの噂を聞いた事がある。
 特にガラスの棺に納められ埋葬されようとしているときに隣国の王子がキスをする場面は実はネクロフィリアをオブラートに包んでいるのでは、との説を聞いた事がある。



晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良

晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作



 
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