ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「キスト」  カップルで考えよう〔14〕 

キスト」 
ネクロフィリアを描く女流監督作



原版日本語字幕無

【原題】KISSED 
【公開年】1996年  【制作国】加奈陀  【時間】79分  
【監督】リン・ストップケウィッチ
【制作】
【原案】バーバラ・ガウディ
【音楽】ドン・マクドナルド
【脚本】アンガス・フレイザー リン・ストップケウィッチ   
【言語】イングランド語
【出演】モリー・パーカー(サンドラ・ラーソン)  ピーター・アウターブリッジ(マット)  ジェイ・ブラゾー(Mr. Wallis, Mortician)  ナターシャ・モーレイ(少女時代のサンドラ)         

【成分】悲しい 切ない ファンタジー 不気味 知的 絶望的

【特徴】カナダの女流監督が描くネクロフィリア物の映画。

 ネクロフィリア(死体愛)と聞いてグロテスクな内容を連想するが、これはむしろ透明感のある切ない恋愛ものだ。生々しい変態性欲が強調されないのは、たぶん原案と監督が女性の手によるものなので男性との感性の違いからくるかもしれない。

 ストップケウィッチ監督にとって初の長編映画らしいが、現在はTVドラマの監督のイメージだ。

【効能】青春の切なさを呼び覚まされる。モリー・パーカーのストリップに萌え。死体愛に目覚める。

【副作用】死体愛に目覚める。

下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
Necrophiliaの女に恋した男の切なさ。

 屍姦がテーマの作品である。が、グロテスクな映像は無い。同じテーマのスペイン映画「・・アナ・フリッツ」のような下卑たる男性目線は皆無である。
 本作は女性監督による女性目線の女性主人公による物語だ。しっかりとした文藝作に仕上げており、作品上で繰り広げられる恋愛物語は哀しく切ない。

 主人公は陰のある若い女学生サンドラ、容姿は女子フィギュアの本郷理華選手に似た女優が演じている。
 サンドラは幼い頃から奇妙な性癖があった。小動物の死骸を見ると愛おしくなり、撫でたり頬ずりしたりする。その性癖は埋葬の儀式へと形作られ、真夜中に林の中へ行って安置した死骸の前で下着姿になって踊りだす。せっかく親しい友達ができても、この性癖のおかげで離れていってしまう。
 子役が演じる少女期の場面最後で、栗鼠?の死骸を埋葬する儀式をした時に手が血で真っ赤になる。素直に見れば死骸を抱き締め過ぎて栗鼠の血が噴き出したと見るべきだろうけど、私は初潮と性的興奮の自覚の始まりと解釈している。

 大人になって、やはりサンドラは大学へ進んで解剖学を学び、斎場でアルバイトをする。死体と向き合う機会が多い学部と職場、興味が対象がいよいよ小動物の死骸から成人男性の遺体へと発展したのだ。愛おしい目で棺桶の遺体を見つめるサンドラ。

 そんな「充実」した日々を送るサンドラの前に謎めいた男子学生が現れる。サンドラの心を見透かしているような話しぶりで近寄り、友達らが引いてしまったマニアックな性癖にも理解を示す。(余談1)
 サンドラはそんな男子に戸惑いながらも初めての「理解者」登場で打ち解け心を開き、しばしばバイト先の斎場で遺体と深夜の逢瀬をしていることを話し、男は感動し興奮してサンドラの身体を求める。

 サンドラにとってはやっと現れた自分の理解者・許容者、ところが恋人として交際していくうちにその風変りな青年が次第に狂気を帯びていく。
 死体愛の彼女だったが、日常生活では堅気の学生であり普段は常識をわきまえた暮らしをしていた。なのに青年はベッドインの時にわざわざ黒い喪服を着て騎乗位でのセックスを要求したりと普段の言動までおかしくなっていく。

 やがて、青年は自殺をする。自殺の間際に斎場で遺体処置助手として真面目に作業しているサンドラを電話で呼び出す。急いで自宅に戻ると青年は全裸で首に縄をかけ今にも首を吊らんとしている状態だった。
 「愛しているから止めて」と制止するサンドラに構わず青年は首を吊る。警察の検視と事情聴取が始まり、現場に呼ばれた斎場の責任者が呆然とするサンドラに「なぜ止めなかった?」と声をかける。
 ラストは青年の遺体を愛おしく眺めキスをするイメージ映像。

 死体愛は解らないが、青年の気持ちは解るような気がする。他レビューでは青年の狂気や嫉妬を指摘するが、私は少し違う見解だ。

 私の趣味は漫画を描いたり写真を撮ったりサイクリングをしたりだが、これには女性の存在が背景にある。
 漫画を描き始めたのは五つ歳上の姉の影響だったが、大人になってからも描き続けたのは漫画家を目指す同級生の女友達の存在があまりにも大きかった。
 写真を撮るようになったのはカメラマンを目指す二つ歳下の女友達の影響で、彼女から基礎的な撮影術や現像と焼付の仕方を教えてもらった。
 サイクリング自体は自分から始めたのだが、続けてきた動機の一つに病弱の女友達から「あなたは私がやりたくてもできない事をやっている」と言われたから。

 好きだった女性と志を共有したい、好きだった女性を理解したい、好きだった女性がやりたかった事を引き継ぎたい、綺麗に言えばこのあたりか。同様の気持ちになった人は男女問わず多いはずである。
 そして彼女にもっと近づきたい、夢を共有して深い絆で結ばれたい。そういう欲求を抱く。
 しかし私はひねくれ者だ。彼女が耽美的作品に走ると私は社会派を目指したり、彼女が最新のAE一眼レフを使用していたら私は骨董品的な機械式一眼レフ(余談2)を使ったり、彼女と近所の山を一緒に走る夢から日本一周へと発展したり。
 欲求が高じて彼女以上に「過激でマニアック」になっていった事はないだろうか? 私はある。だから主人公に激しく感情移入してしまう。彼女のために自ら遺体となってしまう気持ちが若干わかるような気がする。

(余談1)人から聞いた話では、私もそんな雰囲気で女性に近づいているようである。意識したことはないが。

(余談2)80年代当時はまだAF一眼レフは出始めの頃で、主流は露光を制御するだけのマイコンが内蔵された電子式シャッターのカメラだった。これらはAE一眼レフと呼ばれる。
 私が使用していたのは機械式一眼レフである。ピントだけでなく、絞りもシャッタースピードも自分で操作するカメラで、手間はかかるが電池無しでも撮影できるメリットがあるのでアウトドア的だ。
 彼女がキャノンのAE一眼レフを使うなら私はオリンパスの機械式一眼レフ、彼女が35ミリから70ミリの標準ズームを使うなら私はズームレンズを拒否して、28ミリ広角レンズと200ミリ望遠レンズで撮った。
 善意の第三者の友人が「彼女への対抗意識」を指摘したがそうではない。彼女から「光の加減を読み取る力をつけるなら、あまりAEやズームに頼らない方が良いですよ。私はついAE買っちゃったけど」という教えを忠実に守ったつもりだったが、傍からはそうは見えなかったようだ。最新のメカにこだわる似非カメラマンに対抗意識みたいなものを持っていたのは確かだ。



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