ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「ゴースト・イン・ザ・シェル」 寂しさをまぎらわす時に〔28〕 

ゴースト・イン・ザ・シェル」 
士郎正宗「攻殻機動隊」を 
ハリウッドが実写映画化!




【英題】Ghost in the Shell 
【公開年】2017年  【制作国】亜米利加  【時間】107分  
【監督】ルパート・サンダース
【制作】
【原作】士郎正宗
【音楽】クリント・マンセル ローン・バルフェ
【脚本】ジェイミー・モス ウィリアム・ウィーラー アーレン・クルーガー   
【言語】イングランド語 一部日本語
【出演】スカーレット・ヨハンソン(ミラ・キリアン少佐 / 草薙素子)  ピルー・アスベック(バトー)  ビートたけし(荒巻大輔)      

【成分】ファンタジー 不気味 切ない 恐怖 悲しい 知的 絶望的 SF

【特徴】士郎正宗氏の「攻殻機動隊」をハリウッドが実写映画化。草薙素子役をスカーレット・ヨハンソン氏が頭髪を黒くして演じる。

 要所要所に士郎正宗氏の世界観に沿った場面を入れているものの、物語自体はハリウッド仕様に改編されて概ね別物語と捉えた方が良いかもしれない。

【効能】自分自身は何者なのか、止揚するきっかけになるかもしれない。

【副作用】ハリウッド臭くて幻滅。「ブレードランナー」などの過去の名作の焼き直し感がして士郎正宗世界を感じられない。

下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
スカーレットの素子は悪くない。

 本作を鑑賞するポイントは、原作に忠実であるかとかハリウッドの制作陣が日本を理解しているとか士郎正宗氏の世界観を傷つけないで映画化しているかどうかではなく、「攻殻機動隊」(余談1)がハリウッド仕様になったらどんな世界になるのか違いを楽しむことにある。
 どうせ世界観を忠実に描写なんて、できっこないのだから。いや、できるかもしれないが、できない事を前提にして鑑賞した方が愉快にスクリーンに臨むことができる。

 私の結論を言うと、無難にまとめたのではないか。そこそこ面白い作品に仕上がっている。

 元々、私はあまり原作を評価していない。ファンには申し訳ないが、士郎正宗氏は画力が優れている反面、物語構成が不得手ではないかという印象を当初から抱いていた。
 私の見解に反して「攻殻機動隊」は次第に人気を高めアニメ映画にもなった。頭が固いのかもしれないが、この作品がどうして人気が出るのか未だに解らない。哲学的との評価にしても、抜群の画力と物語構成が不得手なのが相乗効果となって読者の深読みを誘い、実情以上の評価を得ているのではないかと勘繰っている。

 さて映画の方だが、原作をあまり好意的評価してこなかったために、逆に好印象を持ってしまった。話は解りやすくなっているし、映像は原作世界を泥臭くしたような雰囲気になっていて面白い。
 街は漢字の標識が並び、東アジアのどこかの都市という感じ。白人が多いのが気になるが、義体が横行している世界であれば、ゲルマン系の名前を強引に漢字に充てたパラパラネームを流行させる日本人は喜々として欧米系の顔にするだろう。

 また草薙素子をスカーレットを演じるにしても、欧米ではホワイトウォッシングではないかという批判が湧きおこって、日本人として非常にありがたい話なのだが、設定上は先に述べたように欧米型の顔を持った義体にしたとの設定と思えば良いし、実際に映画のラストまで観るとそんな設定だった。
 それに原作本の草薙素子も風貌は日本人的ではない。むしろ欧米風の顔立ちだ。日本人名の登場人物が大勢出てくるが、容姿の雰囲気は無国籍と言った方が良い。日本が舞台、に縛られる必要は無いのではないか。
 なのでスカーレットが黒髪にした草薙素子でも全く問題が無い。というよりも原作忠実のキャスティングだと評価すべきかもしれない。

 スカーレットが着用している白い太めのボディスーツが賛否あるようだが、原作通りにしてしまうとセクシー過ぎて、近年の厳しい「R指定」に抵触する恐れがある。
 興行を考えるなら妥当かもし知れない。R指定にされると最初から公開できる劇場と対象となる観客が制限されてしまい、ハンデを背負う事になる。

 残念なのは、士郎正宗の世界観に敬意を表している姿勢は強く出ているのだが、トータルで観ると昔みた映画のような感が拭えない。
 街の雰囲気はハリソン・フォード主演「ブレードランナー」のようだし、自分探しを行う主人公もアーノルド・シュワルツェネッガー主演「トータルリコール」やピーター・ウェラー主演「ロボ・コップ」ぽいし、もっと「攻殻機動隊」ならではの強烈なオリジナリティを感じる醍醐味が欲しかった。

 たぶん、制作陣の気持ちを察するに、そのオリジナリティの象徴が北野武氏扮する荒巻大輔なのだろう。
 彼の台詞だけが全て日本語で、無理に入れなくてもいいような北野荒巻の銃撃戦、車に乗ったところで数名の刺客から銃撃を受け、なんと返り討ちにしてしまう、まるで北野映画に出てくるヤクザの抗争のような場面だった。
 北野武氏が好んで演じそうな格好の良い役だろう。

 ただ、ラスト近くに「草薙素子」の名前が登場するのだが、できればローマ字表記ではなく漢字でも書いてほしかった。それなりに「攻殻機動隊」の名シーンをそこそこ忠実に実写化しながら「何で?」という思いだ。

 欲を言えば、「人間」だった頃の記憶がよみがえった時にクゼと会話する場面だけでもネイティブに近い日本語で台詞を言ってほしかった。短い台詞でもいい。例えば、

スカーレット「あなたは英雄?」
マイケル「素子・・、俺と一緒に来い」
スカーレット「だめ・・私はここで生きる」

 この程度の会話だけでいい。猛特訓して完璧な発音の日本語で発声してほしかった。これが有るのと無いのとで、作品の価値は格段に変わってくる。

(余談1)原作者士郎正宗氏は「ゴースト・イン・ザ・シェル」の方をタイトルにしたかったようだ。
 なので原作発表から四半世紀の時を経て、士郎氏の要望が叶えられた格好になる。

晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良

晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作



 
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