「ラストサムライ」
ハリウッド製サムライ幻想曲。 【原題】THE LAST SAMURAI
【公開年】2003年
【制作国】亜米利加 日本国 新西蘭
【時間】154分
【監督】エドワード・ズウィック 【原作】 【音楽】ハンス・ジマー
【脚本】ジョン・ローガン
エドワード・ズウィック マーシャル・ハースコヴィッツ
【言語】イングランド語 日本語
【出演】トム・クルーズ(ネイサン・オールグレン大尉) ティモシー・スポール(サイモン・グレアム)
渡辺謙(勝元盛次参議) ビリー・コノリー(ゼブロン・ガント軍曹) トニー・ゴールドウィン(ベンジャミン・バグリー大佐)
真田広之(氏尾)
小雪(たか) 小山田シン(信忠) 池松壮亮(飛源) 中村七之助(明治天皇) 菅田俊(中尾)
福本清三(寡黙なサムライ) 原田眞人(大村参議) 松崎悠希(-)
【成分】悲しい ファンタジー スペクタクル ロマンチック 勇敢 知的 切ない かっこいい 戦争映画 時代劇 1860年代・1870年代 明治維新 西南戦争 日本
【特徴】ハリウッドが描くチャンバラ時代劇。西郷隆盛の西南戦争をベースに、時代考証や時系列にとらわれない自由な構成で描写された幕末明治維新の日本が楽しめる。
日本人にとっては違和感はあるものの、皇族の衣装や勝元の直垂姿、オールグレンの鎧直垂など日本の服飾はかなり研究されている。
トム・クルーズ氏の殺陣も良く、彼が袴姿でチャンバラをする姿はファンにとってはたまらないだろう。
本作で
渡辺謙氏がハリウッド進出を果たし、斬られ役
福本清三氏はハリウッドデビュー?する。
【効能】日本文化の良さを再確認させる。
【副作用】ハリウッド悪趣味が臭い幻滅。
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
斬られ役福本清三ハリウッドデビュー? 映画館で観たとき、まず思ったのは「なんじゃこりゃ、いじりすぎや」だった。前評判では西郷隆盛が1万数千の兵を率いて政府に戦を仕掛けた明治10年の西南戦争が舞台だと聞いていた。ところが内容があまりにも史実とかけ離れすぎていることに違和感を持った。次にいくら史実を基にしたフィクションだとはいえ、明治時代なのに
渡辺謙氏らが扮するサムライたちの時代錯誤的甲冑姿には嫌悪感を抱き、いくら映画だからといってサムライたちの弓矢が政府軍のライフルに勝る描写を見て、やり過ぎだと感じた。個人的には下手にサムライを強調したファンタジーにはせず、史実に忠実な作品にしてほしかった。(余談1)
ただ、評価できる部分もある。かつて「将軍 SHOGUN」という米制作の時代劇があった。これは家康に仕えたイギリス人ウイリアム・アダムスをモデルに創ったフィクションだったが、内容は珍作といってもよい出来で日本文化の無理解が甚だしく、公開当時から駐日の米ジャーナリストや親日の米知識人からも失笑されていた。(余談2)単なる悪趣味奇天烈な日本モドキを描写するだけの作品に比べると、「
ラストサムライ」にはキチンとしたテーマがある。
侵略する側とされる側の関係、近代化の波に翻弄され見捨てられる存在、グローバルスタンダード化の弊害、現代世界が直面している同種の問題に、作中の
渡辺謙氏扮する
勝元参議とトム=クルーズ氏扮する
オルグレン大尉が苦悩しているのである。これが物語の軸になっているため、佳作の域に入っている。
(余談1)ただ、西南戦争の前年に熊本士族が県や鎮台を襲った「神風連の乱」では、刀剣で熊本城に駐屯している政府軍を襲って一時的に占拠に成功している。NHK大河ドラマ「翔ぶが如く」では具足姿で突撃していた。
突っ込み箇所は無数にあるが、逆に好意的評価をするべき部分もある。
まず自毛の生え際を生かした丁髷メイクはグッドである。
明治の横浜の描写は時代劇を見慣れた方には違和感があるかもしれないが、当時の写真から推察すると、むしろ実像に近いのではないかと思う。
中村七之助氏扮する明治天皇はいかにもそれらしかった。公の場ではフランス式肋骨軍服を着て、普段着は単衣に大口袴姿(宮司の略装みたいなもの)なのも良い。
政府軍の装備が、最初は幕末の薩長軍の様式で銃はマスケット、後半は明治の軍装になりスナイドル銃にガトリング砲、時期は誤っているが時系列は合っている。
後半のよく訓練された軍隊は全て日本人エキストラだそうだ。兵役が無く学校の体育も厳しくなくなった環境で育った日本人をよく訓練している。
最後の決戦前、
トム・クルーズ氏が
小雪氏に甲冑を着せてもらう場面があるが、きちんと鎧直垂を着せていた。これもグッド。
トム・クルーズ氏の殺陣もグッド。あの「トップガン」や「カクテル」のイケメン俳優が、日本の平均的な俳優よりも素晴らしい殺陣を見せてくれたのは感動だった。
因みにショーン・コネリー氏が「007」で羽織袴の日本人に変装したり、レナード・ニモイ氏が「スパイ大作戦」で白塗りの歌舞伎をやったのは大笑いだったが、
トム・クルーズ氏の侍姿は格好いい。
(余談2)島田陽子がヒロインとして出演していて、当時は「国際派女優」などと持ち上げられていたが、その後の活躍はイマイチ。話題となった写真集はつい買ってしまった。
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
晴雨堂マニアック評価
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ドイツ貴族を演じる
トム・クルーズ
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渡辺謙氏らが扮するサムライたちの時代錯誤的甲冑姿には嫌悪感を抱き、いくら映画だからといってサムライたちの弓矢が政府軍のライフルに勝る描写を見て、やり過ぎだと感じた。個人的には下手にサムライを強調したファンタジーにはせず、史実に忠実な作品にしてほしかった。(余談1)
ただ、評価できる部分もある。かつて「将軍 SHOGUN」という米制作の時代劇があった。これは家康に仕えたイギリス人ウイリアム・アダムスをモデルに創ったフィクションだったが、内容は珍作といってもよい出来で日本文化の無理解が甚だしく、公開当時から駐日の米ジャーナリストや親日の米知識人からも失笑されていた。(余談2)単なる悪趣味奇天烈な日本モドキを描写するだけの作品に比べると、「
ラストサムライ」にはキチンとしたテーマがある。
侵略する側とされる側の関係、近代化の波に翻弄され見捨てられる存在、グローバルスタンダード化の弊害、現代世界が直面している同種の問題に、作中の
渡辺謙氏扮する
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オルグレン大尉が苦悩しているのである。これが物語の軸になっているため、佳作の域に入っている。
(余談1)ただ、西南戦争の前年に熊本士族が県や鎮台を襲った「神風連の乱」では、刀剣で熊本城に駐屯している政府軍を襲って一時的に占拠に成功している。NHK大河ドラマ「翔ぶが如く」では具足姿で突撃していた。
突っ込み箇所は無数にあるが、逆に好意的評価をするべき部分もある。
まず自毛の生え際を生かした丁髷メイクはグッドである。
明治の横浜の描写は時代劇を見慣れた方には違和感があるかもしれないが、当時の写真から推察すると、むしろ実像に近いのではないかと思う。
中村七之助氏扮する明治天皇はいかにもそれらしかった。公の場ではフランス式肋骨軍服を着て、普段着は単衣に大口袴姿(宮司の略装みたいなもの)なのも良い。
政府軍の装備が、最初は幕末の薩長軍の様式で銃はマスケット、後半は明治の軍装になりスナイドル銃にガトリング砲、時期は誤っているが時系列は合っている。
後半のよく訓練された軍隊は全て日本人エキストラだそうだ。兵役が無く学校の体育も厳しくなくなった環境で育った日本人をよく訓練している。
最後の決戦前、
トム・クルーズ氏が
小雪氏に甲冑を着せてもらう場面があるが、きちんと鎧直垂を着せていた。これもグッド。
トム・クルーズ氏の殺陣もグッド。あの「トップガン」や「カクテル」のイケメン俳優が、日本の平均的な俳優よりも素晴らしい殺陣を見せてくれたのは感動だった。
因みにショーン・コネリー氏が「007」で羽織袴の日本人に変装したり、レナード・ニモイ氏が「スパイ大作戦」で白塗りの歌舞伎をやったのは大笑いだったが、
トム・クルーズ氏の侍姿は格好いい。
(余談2)島田陽子がヒロインとして出演していて、当時は「国際派女優」などと持ち上げられていたが、その後の活躍はイマイチ。話題となった写真集はつい買ってしまった。
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