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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

石原さとみ 「シン・ゴジラ」(2016)

彼女の英語には賛否あるが、
私はギャラ分の働きをしたと思っている。


石原さとみ2018
日本タレント名鑑参照

【雑感】石原さとみ氏は本作でアメリカ生まれのアメリカ育ちの政府高官役を演じている。些か予想外かつ強引な設定と配役、ネット上の評判を見渡してみるとやはり英語の発音で批判があるようだ。

 主な批判をまとめると、「発音は流暢だが言葉遣いに違和感」のようだ。例えばセネガル出身の芸人を引き合いに出して、訛りを感じない発声に込み入った内容の日本語を操れるけどフレーズに違和感、石原さとみ氏の英語もそれと同様らしい。
 これが日本人通訳や外交官役なら許せるが、アメリカ生まれのアメリカ育ちで大統領の名代たる特使という政府高官という設定では看過できない、という事だ。当然、ネイティブな英語を話さなければならないが、石原さとみ氏の発音は流暢だがネイティブさに欠けると「帰国子女」のレビュアーたちが口を揃える。
 そして石原さとみ氏の英語に対して、世襲の若き政治家矢口に扮する長谷川博己氏や実力で政府高官に成り上がった赤坂を演じる竹野内豊氏の英語台詞を絶賛する声をよく聞く。

 私の英語能力は無いに等しい。中学・高校・大学と10年間授業を受けてきたが、全く身につかないまま忘却した。そんなレベルなので石原さとみ氏の英語はとても流暢で綺麗に聞こえてしまう。

 とはいえ、なぜ石原さとみ氏なのだろう?と怪訝には思った。日本在住の欧米圏の女優は探せば居るはずではないか。(余談1)
 物語が展開していく過程で、石原さとみ氏演じるパターソン特使の祖母は日本人で戦時中は広島に住んでいたというオチが浮かび上がる。
 ゴジラを制作するうえで外すべからざるテーマが原爆の悲劇と反核だ。(余談2)容姿は日本人なのにデフォルメともとれるステレオタイプなアメリカンで日本の要人たちに高圧的かつ命令調で迫るパターソン特使が、土壇場で本国の方針に背き日本側の政治家矢口に協力する背景にあるのは、広島で被爆?した祖母の存在がある。
 しかしそのオチでいくとしても、日系の欧米圏俳優をあててもよいのではないかとも思った。なぜ英語を母語としない日本人俳優をアメリカ特使役に起用するのか?という違和感は今でも抱いている。

 ただ、石原さとみ氏個人への批判は言い過ぎではないかなと思ったりする。フレーズに違和感であれば、それは石原さとみ氏本人ではなく脚本家に文句を言うべきだ。俳優は映画監督の指示に従い与えられた脚本で演技をするものである。「流暢だけど可笑しな英語」ならば俳優が悪いのではなく制作を指導する人たちが悪いのである。

 ハリウッド映画や中国や韓国映画などに登場する日本人も、おかしな日本語を使う事が多々ある。
 たとえば英米合作の有名な戦争映画「戦場にかける橋」では早川雪洲演じる斎藤大佐はネイティブな日本語だが、幕僚役を演じる「日本人」の中にはぎこちない発音をする者がいたし、斎藤大佐自身も当時の日本軍将校なら鉄拳で済ますはずなのに「俺の責任ではない」という趣旨の言い訳を並べる場面がある。
 こないだレビューした中国映画「百団大戦」に登場する日本軍も、以前に比べればかなり良くなってはいるが「その発声はあり得ないのでは」と思う箇所が無い訳ではない。しかも演じているのは中国人俳優ではなく日本人俳優である。

 これらの映画で描写される日本人とは、あくまで制作国の人々がイメージする「日本人」である。同じように「シン・ゴジラ」に登場するアメリカ人も日本人がイメージする「アメリカ人」であり、石原さとみ氏はそんなアメリカ人キャラを忠実に演じきったに過ぎない。したがって、「帰国子女」を自称する人々が違和感を抱くのは至極当然であり、文句を言うのなら俳優ではなく制作者に言うべきだろう。
 
 因みに「シン・ゴジラ」公開当時、私の周囲には「あんな特使はいないだろう」と設定に無理がある点を突っ込みまくる人がいた。まだ30歳代で大統領の名代を務める容姿端麗の女性高官なんて、いくらアメリカでも現実離れ、という指摘である。
 ところがトランプ政権の誕生で、そんな高官が登場する。トランプ大統領の実子でイヴァンカ・マリー・トランプ氏である。石原さとみ氏とは5歳しか違わない。モデルやイメージキャラクターを務めたりする石原氏の容姿は高く評価されているが、イヴァンカ・トランプ氏もモデル出身でもあるので容姿端麗である。

(余談1)今ならNHK朝ドラ「マッサン」でブレイクしたシャーロット・ケイト・フォックス氏を思い浮かべるだろうが、彼女は「シン・ゴジラ」企画段階では無名だろうし、撮影時期は「マッサン」と被るだろうから時期的にあり得ない。

(余談2)元々は反核に加えて反権力も重要な柱で、シリーズ1作目1954年版ではゴジラが国会議事堂を叩き潰す場面が描写されている。
 また「シン・ゴジラ」では役人賛歌・自衛隊賛歌とも解釈できるほどの内容だが、以前のゴジラ映画では自衛隊は簡単に捻り潰される存在で、未確認の噂だが自衛隊から「これでは税金泥棒ではないか」と苦言が寄せられたという。
 「シン・ゴジラ」は制作に協力する政府や自衛隊に気を遣った内容であることから、左派系のゴジラファンは憤慨している。


 
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