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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「ガガーリン 世界を変えた108分」 家族と一緒に考えよう〔30〕 

ガガーリン 世界を変えた108分」 
意外にアナログ牧歌的世界にビックリ



ガガーリン 世界を変えた108分 [DVD]

【原題】Гагарин. Первый в космосе
【英題】Gagarin: First in Space
【公開年】2013年  【制作国】露西亜   
【時間】113分
【監督】パヴェル・パルホメンコ
【制作】オレグ・カパネテッツ イゴール・トルストゥノフ
【原作】
【音楽】ジョージ・カリス
【脚本】アンドレイ・ディミトリエフ オレグ・カパネテッツ パヴェル・パルホメンコ
【言語】ロシア語
【出演】ヤロスラフ・ザルニンユーリイ・ガガーリン)  ミハイル・フィリポフ(セルゲイ・コロリョフ)  ナジェジダ・マルキナ(母親)  ヴィクトル・プロスクーリン(父親)  Vadim Michman(ゲルマン・チトフ)    

【成分】ロマンチック 切ない かっこいい ソ連 宇宙 1940年代~1961年

【特徴】1980年代にハリウッドでNASAの宇宙開発黎明期を描いた「ライトスタッフ」があるが、本作はそれのソ連版と考えたらいいだろう。
 ただし、「ライトスタッフ」はアメリカ人的な楽天性や明るい未来を連想するような終わり方に対し、本作の場合はナチスドイツに占領され甚大な被害を受けた第二次世界大戦の暗い過去が重くのしかかっているうえに、ガガーリンが僅か34歳の若さで事故死したことも影響してかラストも暗い後日談を綴った字幕が流れる。

 「ライトスタッフ」は明るい、「ガガーリン」は暗い、で形容できる。但し、「ライトスタッフ」に登場する女性たちは男の冒険ロマンに付き合わされ辛抱を強いられる妻たちの姿ばかりだが、本作に登場する女性たちは逞しく、むしろ唯一明るい未来を暗示している役割ではないかと思う。

【効能】ソ連のあまりの前近代的風景とアナログ機器に驚く。逞しい女性たちの姿に未来が明るく見える。

【副作用】全般に暗い話で気が滅入る。

下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
「ライトスタッフ」と比較すると・・。

 ほぼ同時代の宇宙開発黎明期を描写したハリウッド映画がある。エド・ハリス氏やサム・シェパード氏らが主演した「ライトスタッフ」である。(余談1)

 宇宙開発で常にソ連が先行し、アメリカの威信にかけてソ連に追いつき追い越そうとするNASAと選抜された7人の宇宙飛行士の喜怒哀楽を描いた作品、ここでソ連は薄ら笑いを浮かべながら着々と宇宙進出を進める不気味な存在として描かれたが、本作「ガガーリン」ではその不気味な存在の楽屋裏を拝見できる。

 構成は、有人飛行当日の未明から始まる。初の宇宙飛行に挑戦するガガーリン中尉とバックアップクルーを務める同僚のゲルマン・チトフ中尉の二人。就寝中の二人の様子を確認して上司たちは安心するが、二人とも眠れず狸寝入りをしていた。
 朝、起床から外の散歩にランニング、ソ連の最新技術を集めた宇宙ロケット発射基地のはずなのに、粗末な建物と広い荒野が広がっているだけ。近未来的なデザインの棟が立ち並ぶ基地を想像していたのに、意表を突くお粗末な環境。
 二人はシャワーで身綺麗にし宇宙服を着て、空軍の制服を着た同僚飛行士達十数名らとバスに乗り込み発射台へ、ここでやっと宇宙ロケット基地らしい風景になる。有人宇宙カプセルの打ち上げ、周回軌道に乗り再び地表に帰還してソ連人民の歓喜に包まれてラスト、その節目節目に関連する過去のエピソードを挿入する。
 黎明期の宇宙飛行士たちの厳しい訓練メニュー、ライバルの宇宙飛行士候補たちとの友情と連帯感、父母や妻との思い出、幼児期の衝撃的な体験、フルシチョフたち政治家や軍官僚の思惑等々を散りばめる。
 主演俳優は実際のガガーリンによく似た若い俳優が起用されている。

 他レビュアーの感想を読むと「情緒的」「暗い」という指摘が多い。確かにその通りだとは思うが、そのキーワードで作品を低く評価している人が少なくないのが残念だ。

 「ライトスタッフ」と本作との違いは非常に興味深い。端的に言うと多くのレビュアーが述べているようにアメリカは明るくロシアは暗い。アメリカでは西部開拓時代の生活とNASAの最先端科学技術が同居しているが、ロシアの落差はそれ以上。
 これは国民性以上に第二次世界大戦の影がある。アメリカは殆ど本土の被害が無かったのに対し、ソ連は甚大な被害を受けていた。(余談2)レビューの中には不要なエピソードと言わんばかりの意見が散見されたガガーリン幼少期の衝撃的なエピソードは、私はやはり必要、というよりは外せない場面ではないかと思う。天真爛漫のような童顔笑顔のガガーリンのトラウマを表現する上で欠かせない。
 何より、これはマーキュリー七人衆と音速パイロットチャック・イェーガーを描いたライトスタッフたちの物語ではなく、表題の通りガガーリンに焦点を当てた物語だからだ。

 それからこれも書いておかなければならない。
 「ライトスタッフ」は基本的に「男の冒険ロマン」であり女は内助の功的な補助者の位置づけでしかないのに対し、「ガガーリン」での女の存在は大きい。

 例えば「ライトスタッフ」の舞台であるNASAは女不在の男の職場であるのに対し、「ガガーリン」では女の技術者や科学者が宇宙飛行士たちの訓練メニューを回している。同時代の物語であるにもかかわらず。
 ガガーリンが宇宙飛行に成功した時、モスクワの広場では若い市民たちか歓喜をあげて集まり、女の一団が「次に宇宙へ行くのは我々ジャーナリストだ!」と男の一団に応酬する場面がある。
 「ライトスタッフ」では男の冒険に付き合わされ辛抱するだけの妻の姿ばかりとは対照的だ。

 そしてラスト。「ライトスタッフ」ではチャック・イエーガーは冒険心を抑えられずジェット戦闘機で宇宙空間に挑戦する。シェパード飛行士は月面飛行への意欲を見せ、グレン飛行士は政治家への野心を滲ませ、クーパー飛行士のアメリカ人最後の単独飛行を讃えアポロ計画への移行を予告して終わる。いずれもアメリカ人的「明るい未来」が見えるラストだ。

 「ガガーリン」ではそれとは全く対照的な終わり方をする。(余談3)

(余談1)エド・ハリス氏は宇宙飛行士ジョン・グレンを好演。なんと若い頃のジョン・グレンに酷似していた。
 サム・シェパード氏は世界で初めて音速を体験したアメリカ空軍パイロットのチャック・イェーガーに扮した。非常にカッコいい美味しい役どころを演じる渋いイケメン俳優と思いきや、本職はなんとオビー賞・ピューリツァー賞受賞するほどの劇作家。
 ラストの無謀な成層圏飛行場面は感涙を誘う。歓喜に包まれる宇宙飛行士たちの陰で、静寂がこだまする空軍基地に完全装備姿のイェーガー、新鋭ジェット戦闘機スターファイターに乗り込み高高度の宇宙空間に挑む。
 孤高のイケメンパイロットの姿にしびれたファンは多いと思う。

(余談2)アメリカ本土が被害を受けた例は少ないながらある。日本海軍航空機による森林の爆撃と風船爆弾による攻撃などがあった。
 真珠湾とダッチハーバーは大規模な空襲を受けたが、当時のハワイとアラスカはまだ州ではない。

 ソ連は戦勝国でありながら死傷者の数は甚大で敗戦国ドイツや日本を遥かに上回る。またソ連のヨーロッパ部分の大半を数年にわたってドイツ軍に占領されていた。

(余談3)ガガーリンは訓練飛行中に命を落とす。享年34歳。

晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良

晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作



 
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