「ミッドサマー」
「ベニスに死す」の美少年ビョルン君が
おじいさんになって出演!
【原題】Midsommar
【公開年】2019年
【制作国】亜米利加 瑞典
【時間】148分
【監督】アリ・アスター 【制作】【原作】【音楽】ボビー・クーリック
【脚本】アリ・アスター【言語】イングランド語 スウェーデン語
【出演】フローレンス・ピュー(ダニー・アーダー) ジャック・レイナー(クリスチャン・ヒューズ) ウィリアム・ジャクソン・ハーパー(ジョシュ) ウィル・ポールター(マーク) ヴィルヘルム・ブロングレン(ペレ) アーチー・マデクウィ(サイモン) エローラ・トルキア(コニー)
ビョルン・アンドレセン(ダン)
【成分】ファンタジー パニック 不気味 恐怖 知的 スウェーデン
【特徴】。
【効能】。
【副作用】。
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
家族愛を描いたような明るい陽光ホラー 前評判であのヴィスコンティ監督「ベニスに死す」に「ヒロイン」として出演していた美少年
ビョルン・アンドレセン氏が出演しているというので観た。
但し本作で強烈な印象を残す役ではあるがあくまで端役なので気を付けて観ていないと後で「えっ?あの老人がビョルン君?」になってしまうかもしれない。
どういう役なのかを言ってしまうと、ホラー映画を構成するうえで観客の心を掴むための第一残酷場面を担当する第二被害者役だ。
本作の舞台になっている村では72歳になると自ら命を絶つ風習がある。自殺の儀式が設けられ死に場所も村外れの崖に指定され、崖下で村人全員が見守る前で飛び降りるのだ。
第一残酷場面では老婦人と二人で自殺する。村の広場に設置された村人全員が利用する食卓で最期の食事をした後、神輿みたいな椅子に座り、係の村役人が担いで崖の上へ行く。
崖上にはルーン文字(余談1)で書かれた石碑があり、飛び降りる直前に神聖なナイフで掌を切って石碑に血を擦り付ける。最初に飛び降りるのは老婦人、スカイダイビングみたいに腹ばい姿勢で飛び降り、崖下の大岩に顔面着地して即死、すっかり白髭のお爺さん顔のビョルン君は二番手で飛び降りるのだが脚からダイブしたので即死できず、予めそのために待機していた聖なるハンマーを持つ村人に顔面を潰され止めを刺される。(余談2)
さて、本作はホラーらしくない展開で進む。なので二度観を勧める。2度目鑑賞で何気ない描写の裏に恐ろしいホラー伏線がある事を愉しめるだろう。
冒頭は暗い雪のアメリカの町の描写、大学生のヒロインは親元を離れて暮らしている。そこへ妹が両親と心中する報せ。ヒロインは彼氏にSOSの電話。彼氏は一応優しく対応するがどこか面倒臭そう。ヒロインは彼氏を頼っているみたいだが、彼氏の方は既に心が離れていて紳士的に義務感で交際している状態。
彼氏の学友に北欧からの留学生がいて、郷里で90年に一度行われる特別な夏至祭があると誘われる。
おそらくヒロインと離れて自分の時間を過ごしたかったのだろう彼氏は北欧旅行の事を言わなかったがヒロインに知られ同道されることになる。何故か留学生はヒロインに来てほしいかのように夏至祭の素晴らしさを話す。
初夏、ヒロインらアメリカ人大学生一行は留学生の友人の案内でスウェーデンの山奥の寒村にやってくる。
白夜の明るく優しい陽光の森の中に白い民族衣装を着た村人たちがいる小さな村に辿り着く。広々とした村の敷地内に数えるほどの棟。一戸建ては無く世代ごとに共同生活しているようで、彼氏らは「カルト教団みたい」と感想を漏らす。
村人たちは一様に明るくてフレンドリーなのだが、やがて前述した村の儀式で衝撃。(余談3)彼氏ら一行とは別口のイギリスからやってきたカップルは驚愕し村の風習に激しく抗議し帰ろうとするが村のリーダー格の婦人からなだめすかされる。
村人たちは一見すると平和的で悪意は全く感じられないのだが、危険が静かに忍び寄り始めていく。まず、抗議したイギリス人男性が居なくなり、カレシをさがすカノジョに村人は「バス停に行った」と言われ置き去りにされたと怒ったカノジョは村人の案内で追いかける。
またある日は、ヒロインたちの学友二人がいなくなる。留学生と村人は心配して探しに出かけるように見えるが‥。
そして薬を盛られ村の少女と交尾させられた主人公の彼氏は我に返って逃げようとすると、行方不明になった「外国人」たちの末路を目にして驚愕し身の危険を感じ逃げ惑うが、その彼氏もまた粉薬を吹きかけられて全身麻痺の状態にさせられてしまう。
結局、留学生が彼氏らを誘ったのは夏至祭の生贄にするため。ヒロインは生贄ではなく村の女王になる素質があったから。それと彼氏は陰でヒロインを邪険に扱っているのを見ていたから、村に招いて「助けたかった」かもしれない。
村のダンス大会で優勝し女王になったヒロイン、感情的に不安定な彼女に対して常に共感と同調でもって接してくれる村人たち。
次第にヒロインの心の拠り所が倦怠気味で自分から離れようとしている彼氏から、奇異な風習の村へと移る。彼氏をはじめ生贄となった光景を見て笑顔になる。
忌まわしい冬の時代のような今までの自分から解放された瞬間?と思うには割の合わなさを感じる犠牲者の数々だった。
(余談1)古代ゲルマン人が使用していた文字。木片にナイフで切り込みを入れたようなデザイン。北欧では近現代でも現役だった。
おそらく世界で一番有名なルーン文字デザインの表記はナチスドイツ親衛隊の徽章に使われた「SS」だろう。
(余談2)止めの刺し方は他にもあったと思うのだが、顔面破壊というのはかつて美少年キャラだった事を監督が「配慮」したのか?
(余談3)彼氏の学友でアフリカ系の学生は文化人類学を専攻しているのか舞台となった村の風習や文化をテーマに卒論を書く「予定」だった。
彼は終始腕組して状況を眺めていた。これは激しく共感する。同調圧力に抗うため、感化されないため、可能な限り客観的な立場で状況を観察しようとする姿勢。アメリカ人も私と同じく腕組するんだな。
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 佳作
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 優他サイト紹介記事
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家族愛を描いたような明るい陽光ホラー 前評判であのヴィスコンティ監督「ベニスに死す」に「ヒロイン」として出演していた美少年
ビョルン・アンドレセン氏が出演しているというので観た。
但し本作で強烈な印象を残す役ではあるがあくまで端役なので気を付けて観ていないと後で「えっ?あの老人がビョルン君?」になってしまうかもしれない。
どういう役なのかを言ってしまうと、ホラー映画を構成するうえで観客の心を掴むための第一残酷場面を担当する第二被害者役だ。
本作の舞台になっている村では72歳になると自ら命を絶つ風習がある。自殺の儀式が設けられ死に場所も村外れの崖に指定され、崖下で村人全員が見守る前で飛び降りるのだ。
第一残酷場面では老婦人と二人で自殺する。村の広場に設置された村人全員が利用する食卓で最期の食事をした後、神輿みたいな椅子に座り、係の村役人が担いで崖の上へ行く。
崖上にはルーン文字(余談1)で書かれた石碑があり、飛び降りる直前に神聖なナイフで掌を切って石碑に血を擦り付ける。最初に飛び降りるのは老婦人、スカイダイビングみたいに腹ばい姿勢で飛び降り、崖下の大岩に顔面着地して即死、すっかり白髭のお爺さん顔のビョルン君は二番手で飛び降りるのだが脚からダイブしたので即死できず、予めそのために待機していた聖なるハンマーを持つ村人に顔面を潰され止めを刺される。(余談2)
さて、本作はホラーらしくない展開で進む。なので二度観を勧める。2度目鑑賞で何気ない描写の裏に恐ろしいホラー伏線がある事を愉しめるだろう。
冒頭は暗い雪のアメリカの町の描写、大学生のヒロインは親元を離れて暮らしている。そこへ妹が両親と心中する報せ。ヒロインは彼氏にSOSの電話。彼氏は一応優しく対応するがどこか面倒臭そう。ヒロインは彼氏を頼っているみたいだが、彼氏の方は既に心が離れていて紳士的に義務感で交際している状態。
彼氏の学友に北欧からの留学生がいて、郷里で90年に一度行われる特別な夏至祭があると誘われる。
おそらくヒロインと離れて自分の時間を過ごしたかったのだろう彼氏は北欧旅行の事を言わなかったがヒロインに知られ同道されることになる。何故か留学生はヒロインに来てほしいかのように夏至祭の素晴らしさを話す。
初夏、ヒロインらアメリカ人大学生一行は留学生の友人の案内でスウェーデンの山奥の寒村にやってくる。
白夜の明るく優しい陽光の森の中に白い民族衣装を着た村人たちがいる小さな村に辿り着く。広々とした村の敷地内に数えるほどの棟。一戸建ては無く世代ごとに共同生活しているようで、彼氏らは「カルト教団みたい」と感想を漏らす。
村人たちは一様に明るくてフレンドリーなのだが、やがて前述した村の儀式で衝撃。(余談3)彼氏ら一行とは別口のイギリスからやってきたカップルは驚愕し村の風習に激しく抗議し帰ろうとするが村のリーダー格の婦人からなだめすかされる。
村人たちは一見すると平和的で悪意は全く感じられないのだが、危険が静かに忍び寄り始めていく。まず、抗議したイギリス人男性が居なくなり、カレシをさがすカノジョに村人は「バス停に行った」と言われ置き去りにされたと怒ったカノジョは村人の案内で追いかける。
またある日は、ヒロインたちの学友二人がいなくなる。留学生と村人は心配して探しに出かけるように見えるが‥。
そして薬を盛られ村の少女と交尾させられた主人公の彼氏は我に返って逃げようとすると、行方不明になった「外国人」たちの末路を目にして驚愕し身の危険を感じ逃げ惑うが、その彼氏もまた粉薬を吹きかけられて全身麻痺の状態にさせられてしまう。
結局、留学生が彼氏らを誘ったのは夏至祭の生贄にするため。ヒロインは生贄ではなく村の女王になる素質があったから。それと彼氏は陰でヒロインを邪険に扱っているのを見ていたから、村に招いて「助けたかった」かもしれない。
村のダンス大会で優勝し女王になったヒロイン、感情的に不安定な彼女に対して常に共感と同調でもって接してくれる村人たち。
次第にヒロインの心の拠り所が倦怠気味で自分から離れようとしている彼氏から、奇異な風習の村へと移る。彼氏をはじめ生贄となった光景を見て笑顔になる。
忌まわしい冬の時代のような今までの自分から解放された瞬間?と思うには割の合わなさを感じる犠牲者の数々だった。
(余談1)古代ゲルマン人が使用していた文字。木片にナイフで切り込みを入れたようなデザイン。北欧では近現代でも現役だった。
おそらく世界で一番有名なルーン文字デザインの表記はナチスドイツ親衛隊の徽章に使われた「SS」だろう。
(余談2)止めの刺し方は他にもあったと思うのだが、顔面破壊というのはかつて美少年キャラだった事を監督が「配慮」したのか?
(余談3)彼氏の学友でアフリカ系の学生は文化人類学を専攻しているのか舞台となった村の風習や文化をテーマに卒論を書く「予定」だった。
彼は終始腕組して状況を眺めていた。これは激しく共感する。同調圧力に抗うため、感化されないため、可能な限り客観的な立場で状況を観察しようとする姿勢。アメリカ人も私と同じく腕組するんだな。
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