「火山高」 日本漫画の影響が滲む作品。 【英題】VOLCANO HIGHOOD
【公開年】2001年
【制作国】大韓民国
【時間】108分
【監督】金泰均
【原案】徐東憲
【音楽】朴永 伊藤大太
【脚本】鄭安哲 金泰均
【言語】韓国語
【出演】張赫(キム・ギョンス) 金秀路(チャン・リャン)
権相佑(ソン・ハンニム) 新ミナ(ユ・チェイ) 孔孝真(ソ・ヨソン) チェ・シア(ヨウマ) ホ・ジュノ(数学教師) チョン・サンフン(カタツムリ) 金ヒョンジョン[俳優](シンマ) ユン・ムンシク(校長) ピョン・ヒボン(教頭) 李ムヒョン(-)
【成分】かっこいい かわいい コミカル 勇敢 笑える
【特徴】本格的にワイヤーアクションを取り入れた作品としても知られている。
物語は日本の漫画アニメの影響、アクションは香港映画、映像はハリウッドといった具合に日本・香港・ハリウッドを強烈に意識した作品に見える。私は面白いと感じた。
個人的な趣味だが、ヒロインの
申敏兒氏(
シン・ミナ)はけっこう好き。韓国映画には珍しく漢字を多用しているところが大いに気に入っている。
【効能】まるで島本和彦氏の漫画「
炎の転校生」を実写映画化したみたいで楽しめる。ヒロインが可愛くて萌え。
【副作用】まるで島本和彦氏の漫画「
炎の転校生」をパクったようで不愉快。ヒロインが可愛くなくて引いてしまう。
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
おお、まるで「炎の転校生」だ。 それなりに面白い作品だった。シチュエーションは「
炎の転校生」のごとく些細な事をこれ見よがしに劇的場面にする学園ドタバタであり、学園を舞台に群雄割拠する様は永井豪氏の学園モノにありそうな設定で、アクションは「うる星やつら」や「らんま1/2」に似ているし、映像は「マトリックス」を意識しているかもしれない。観終わって、日本漫画や香港にハリウッドをかなり強烈に意識していると感じた。(余談1)
設定はワクワクした。伝統校
火山高は教職員と重量挙部・ラグビー部・柔道部・剣道部・校内一の実力者で一匹狼の
権相佑氏(
クォン・サンウ)らの勢力が割拠する中、内に強大な破壊力を秘めた転校生がやってくる。この手の映画にしては些か登場人物が多すぎるきらいはあるが、勢力間の対立や教職員内の権力抗争など凝った相関関係に単純明快なアクション、私には面白いと感じた。(余談2)
剣道部の主将でヒロインの
申敏兒氏(
シン・ミナ)の起用は賛否分かれると思うが、私は良い味が出ていると思った。否定派はたぶん校内一の美女という設定が気に入らないと思うが、むしろ日焼けした地味な顔立ちに長く伸ばした豊かな黒髪を後ろで束ね、いつも学生服をきちんと着込んだ物静かな容姿は女剣客らしくて素敵だ。(余談3)モデル出身なのでプロポーションは良く、作中でも身体の線が見える袖無しのアンダーシャツ姿を披露するなど、演出に抜け目はない。
それから、オープニングタイトルではハングルと
漢字表記が併用されていて、作中の教室の表示やゴム印に立て札など漢字で統一されていた。書類も漢字併用、まるで60年代頃までの韓国の学校のようだ。現在では殆ど漢字は使われない。映像を重厚に魅せるために色補正をしたそうだから、
漢字表記もその一環だろうか?(余談4)
ただ、撮影には随分苦慮したとは思うが、やはりワイヤーアクションには慣れていない。もし同じ内容の映画を香港が創ったら、もっと美しくて躍動感とメリハリのある場面になっただろうし、ハリウッドならリアリティーのあるアクションになっただろう。惜しい作品だが、漫画メディアの理解とアクションジャンルが定着すれば、良作が今後生まれる可能性を秘めている。
この作品は日本の漫画文化やアメリカの映画文化に対する憧憬や反発が滲み出ている。例によって日本での評価は低いようだが、逆に日本がこのまま世界に冠たる自国の漫画アニメ文化やセンスの良いアクションへの偏見を持ち続けていたら、日本の良さはますます諸外国に取られ、バッシングする余裕は無くなるだろう。
(余談1)韓国漫画はもろに日本漫画の影響を受けている。特に少女漫画はそっくりと言っても良い。韓国でも日本と同様の漫画同人誌即売会が催されているしコスプレも盛んだ。同人誌レベルでは早い時期から日韓の交流は盛んになってきている。
(余談2)すっかり長く伸ばした後ろ髪に笑顔が板についている
権相佑氏だが、この時は短髪でクールな役柄だった。
(余談3)
申敏兒氏は、たぶん作中で唯一役柄と実年齢が一致した俳優だろう。映画撮影時は16歳。出演者の多くは20代後半から30代のいい歳したオッサンが高校生に扮しているのだから、些か滑稽だ。
後に大学に進学し演劇映像学科で学んでいる。今はすっかり垢抜けして三井ゆり氏似の女性になっている。私は眉毛が太いところが気に入っている。
(余談4)韓国の常用漢字は約1300と日本と変わりない。しかし朴正熙政権下の70年に漢字全廃政策がなされた。その結果、かつて韓国の新聞は日本と漢字の割合は変わらず平仮名がハングルになったような誌面で、韓国語の知識が無い日本人でも大凡の内容を読むことができたが、朴正煕政権下で生まれた人々が就労年齢になり始める80年代半ば頃から急速にハングルの比率が多くなり現在では殆ど漢字は使用されない。
金大中政権では全廃は不合理として、道路標識や地名などは漢字併記にするよう努めているものの、漢字を読める人間は中国語や日本語の学習者にほぼ限られている。
日本漢語と韓国漢語は共通単語が非常に多い。
野球を中国では「棒球」だが韓国では「野球」。自動車の中国語は「汽車」、韓国では「自動車」。デパートの中国語は「百貨公司」、韓国は「百貨店」。日曜日を中国語では「星期日」、韓国では「日曜日」といった具合だ。もし以前のように漢字を使用する社会になったら、たぶん韓国語を知らない日本人が観光で街を散策してもあまり困らないと思う。
顰蹙を買うかもしれないが、私は漢字復活してほしい派である。そういう意味でもこの映画は好意的に観れた。
晴雨堂スタンダード評価
☆☆ 可
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作
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おお、まるで「炎の転校生」だ。 それなりに面白い作品だった。シチュエーションは「
炎の転校生」のごとく些細な事をこれ見よがしに劇的場面にする学園ドタバタであり、学園を舞台に群雄割拠する様は永井豪氏の学園モノにありそうな設定で、アクションは「うる星やつら」や「らんま1/2」に似ているし、映像は「マトリックス」を意識しているかもしれない。観終わって、日本漫画や香港にハリウッドをかなり強烈に意識していると感じた。(余談1)
設定はワクワクした。伝統校
火山高は教職員と重量挙部・ラグビー部・柔道部・剣道部・校内一の実力者で一匹狼の
権相佑氏(
クォン・サンウ)らの勢力が割拠する中、内に強大な破壊力を秘めた転校生がやってくる。この手の映画にしては些か登場人物が多すぎるきらいはあるが、勢力間の対立や教職員内の権力抗争など凝った相関関係に単純明快なアクション、私には面白いと感じた。(余談2)
剣道部の主将でヒロインの
申敏兒氏(
シン・ミナ)の起用は賛否分かれると思うが、私は良い味が出ていると思った。否定派はたぶん校内一の美女という設定が気に入らないと思うが、むしろ日焼けした地味な顔立ちに長く伸ばした豊かな黒髪を後ろで束ね、いつも学生服をきちんと着込んだ物静かな容姿は女剣客らしくて素敵だ。(余談3)モデル出身なのでプロポーションは良く、作中でも身体の線が見える袖無しのアンダーシャツ姿を披露するなど、演出に抜け目はない。
それから、オープニングタイトルではハングルと
漢字表記が併用されていて、作中の教室の表示やゴム印に立て札など漢字で統一されていた。書類も漢字併用、まるで60年代頃までの韓国の学校のようだ。現在では殆ど漢字は使われない。映像を重厚に魅せるために色補正をしたそうだから、
漢字表記もその一環だろうか?(余談4)
ただ、撮影には随分苦慮したとは思うが、やはりワイヤーアクションには慣れていない。もし同じ内容の映画を香港が創ったら、もっと美しくて躍動感とメリハリのある場面になっただろうし、ハリウッドならリアリティーのあるアクションになっただろう。惜しい作品だが、漫画メディアの理解とアクションジャンルが定着すれば、良作が今後生まれる可能性を秘めている。
この作品は日本の漫画文化やアメリカの映画文化に対する憧憬や反発が滲み出ている。例によって日本での評価は低いようだが、逆に日本がこのまま世界に冠たる自国の漫画アニメ文化やセンスの良いアクションへの偏見を持ち続けていたら、日本の良さはますます諸外国に取られ、バッシングする余裕は無くなるだろう。
(余談1)韓国漫画はもろに日本漫画の影響を受けている。特に少女漫画はそっくりと言っても良い。韓国でも日本と同様の漫画同人誌即売会が催されているしコスプレも盛んだ。同人誌レベルでは早い時期から日韓の交流は盛んになってきている。
(余談2)すっかり長く伸ばした後ろ髪に笑顔が板についている
権相佑氏だが、この時は短髪でクールな役柄だった。
(余談3)
申敏兒氏は、たぶん作中で唯一役柄と実年齢が一致した俳優だろう。映画撮影時は16歳。出演者の多くは20代後半から30代のいい歳したオッサンが高校生に扮しているのだから、些か滑稽だ。
後に大学に進学し演劇映像学科で学んでいる。今はすっかり垢抜けして三井ゆり氏似の女性になっている。私は眉毛が太いところが気に入っている。
(余談4)韓国の常用漢字は約1300と日本と変わりない。しかし朴正熙政権下の70年に漢字全廃政策がなされた。その結果、かつて韓国の新聞は日本と漢字の割合は変わらず平仮名がハングルになったような誌面で、韓国語の知識が無い日本人でも大凡の内容を読むことができたが、朴正煕政権下で生まれた人々が就労年齢になり始める80年代半ば頃から急速にハングルの比率が多くなり現在では殆ど漢字は使用されない。
金大中政権では全廃は不合理として、道路標識や地名などは漢字併記にするよう努めているものの、漢字を読める人間は中国語や日本語の学習者にほぼ限られている。
日本漢語と韓国漢語は共通単語が非常に多い。
野球を中国では「棒球」だが韓国では「野球」。自動車の中国語は「汽車」、韓国では「自動車」。デパートの中国語は「百貨公司」、韓国は「百貨店」。日曜日を中国語では「星期日」、韓国では「日曜日」といった具合だ。もし以前のように漢字を使用する社会になったら、たぶん韓国語を知らない日本人が観光で街を散策してもあまり困らないと思う。
顰蹙を買うかもしれないが、私は漢字復活してほしい派である。そういう意味でもこの映画は好意的に観れた。
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☆☆ 可
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