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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「硫黄島からの手紙」 絶望から脱出しよう〔1〕 

硫黄島からの手紙」 
ハリウッド臭さの無い秀作

 

 
【原題】LETTERS FROM IWO JIMA
【公開年】2006年  【制作国】亜米利加  【時間】141分  
【監督】クリント・イーストウッド
【原作】栗林忠道 吉田津由子
【音楽】カイル・イーストウッド 、マイケル・スティーヴンス[音楽]
【脚本】アイリス・ヤマシタ
【言語】日本語 一部イングランド語   
【出演】渡辺謙栗林忠道陸軍中将) 二宮和也(西郷昇一等兵) 伊原剛志(男爵西竹一陸軍中佐) 加瀬亮(清水洋上等兵) 裕木奈江(西郷花子) 中村獅童(伊藤海軍大尉) 渡辺広(藤田正喜陸軍中尉)
 
【成分】悲しい スペクタクル 恐怖 切ない 戦争映画 第二次大戦 1945年 硫黄島 
 
【特徴】硫黄島2部作の日本編。クリント・イーストウッド監督自身が語っているように、これは「日本映画」である。アメリカ映画史上初のキャスト大半が日本人で日本語台詞、しかもハリウッド臭さが無く、ほぼ正確な日本軍描写がなされている。加えてハリウッド映画的リアルで生々しい戦争描写が鑑賞者に少なからず旋律を与えている。
 日本公開当時、良質な反戦映画として受け止められ、上映をきっかけに硫黄島に関連する書籍が相次いで出版され、各地ではシンポジウムや反戦集会まで行われた。
  
【効能】西郷一等兵の視点に感情移入することで戦争の恐怖を疑似体験できる。平和のありがたさを実感するにまたとない教材。
 
【副作用】自決の場面などはリアル過ぎてトラウマになるかもしれない。

下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。
日本側の視点を比較的正確に描いている。
 
 この作品は史実を良く調べ丁寧にほぼ正確に描いている。戦闘場面も実に汗と血と腐臭が漂ってきそうな臨場感があった。
 比較しやすい作品として昨年公開の「男たちの大和」をあげやすい。舞台となる時代・死地へ甘んじて飛び込む主人公たち・リアルな戦闘場面・上官が部下を虐待する場面など共通点が非常に多いが、アメリカがつくると何故こうも生々しくなってしまうのか。
 今回の第2部で演じている役者の大半は日本人であり台詞も殆ど日本語である。だから俳優の演技力の差ではない。アメリカと日本とでは映像の作り方が違うのか? 戦争に対する認識が違うのか? 
 
 もしこの映画の監督が日本人であり日本が制作国だったら、もう少し綺麗な映像になり、感動と涙を誘う劇的な場面と台詞が用意されてお茶を濁してしまうだろう。制作国がアメリカで良かったと思う。
 よく言われる事だが、ハリウッドがアジアを舞台にする映画は駄作が多かった。民族性や文化などの誤解や曲解が多く、演じているアジア人の欧米人的物腰が鼻についた。舞台が中国であれ日本であれ台詞も英語だらけというのが気に入らなかった。今回の作品はそれが殆ど無い。
 
 蛇足を言うと、日本側パンフレット制作者のミスだが、中村獅童が扮する伊藤中尉、あれは海軍大尉である。はっきりと海軍第三種軍装の襟に真中金一本線に桜3つの海軍大尉の階級章が見える。英語の「ルタナン」は陸軍では少尉や中尉の意味だが、海軍では大尉である。残念ながら、訂正されることなく現在も誤った表記のままのようだ。(余談1)
 
(余談1)伊原剛志氏扮するバロン西が自決するとき、「俺のライフルをよこせ」と部下に命じる場面がある。最初、大日本帝国陸軍の将校が「ライフル」などとカタカナ語を言うだろうか、と引っかかったが、よく考えれば西竹一中佐はアメリカかぶれで有名、作中でも描写されているように英語も堪能、しかも作中では陸軍らしく坊主頭だったが、実際は当時の陸軍にいて七三頭だった時期もあり、かなりの型破りぶりだ。だから「小銃」ではなく「ライフル」と言ってしまうのは有りかもしれない。
 それにしても、男爵という華族の身分でオリンピック金メダリストの英雄となれば、上官も苦々しく黙認するしかなかったのか。もっともかなり煙たがられていたのは事実だ。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
【受賞】アカデミー賞(音響賞(編集))(2006年) ゴールデン・グローブ(外国語映画賞)(2006年) LA批評家協会賞(作品賞)(2006年)
   
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硫黄島からの手紙 オリジナル・サウンドトラック
父親たちの星条旗 [DVD]
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栗林忠道 硫黄島からの手紙栗林 忠道
栗林忠道からの手紙 硫黄島指揮官がいま私たちに問いかける、「忘れられていた日本人という生き方」 (講談社MOOK 週刊現代ムック)
   

 
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