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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「五人の賞金稼ぎ」 ストレス解消活劇〔28〕

五人の賞金稼ぎ」 
これもスキヤキ・ウエスタン。

 
五人の賞金稼ぎ
未DVD・VHS化
 
【原題】
【公開年】1969年  【制作国】日本国  【時間】97分  【監督】工藤栄一
【原作】
【音楽】津島利章
【脚本】高田宏治
【出演】若山富三郎(錣市兵衛)  伊吹吾郎(那須音平)  大木実(望月弥太郎)  嵐寛寿郎(榎太左衛門)  中谷一郎(芝池主水)  真山知子(陽炎)  土田早苗(みゆき)  天津敏(治三郎)  小池朝雄(大関佐渡守)  福本清三(白河小笹)    
    
【成分】スペクタクル パニック 勇敢 切ない 銃撃戦 時代劇 幕末 1850年代? 
         
【特徴】一応時代劇だが、これは時代劇スタイルの西部劇だ。主役の若山富三郎氏の演技を観ていると、勝新ソックリ、ああ兄弟なんだなぁと改めて思う。
 敵役の殿様が最低バカ、特に裕福な藩でも無いのに大砲を揃えて領民を皆殺しにしようとする非常識ぶり。鑑賞者は心を馬鹿にして銃撃戦や殺陣を楽しむべし。
  
【効能】ラストは時代劇らしからぬ派手な砲撃と銃撃がある。スカッとストレスが解消できるかもしれない。
 
【副作用】時代劇にしては大砲や機関銃が大活躍なので、不満に思う時代劇ファンがいるだろう。内容も重たいモノがあるので、制作者の意図が鑑賞者のストレスを解消させたいのか、社会の不条理を見せて考えさせたいのか中途半端で余計にストレス。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
チャンバラよりもドンパチが目立つ時代劇
 
 60年代後半、世界的にマカロニウエスタンが大流行、本作品もその影響を強く受けている。タイトルからしてウエスタンぽい。1970年前後は土煙が漂う乾いた時代劇が映画・TVドラマ双方で大量に制作された。(余談1)

 監督は60年代の東映で時代劇を多く手掛けてきた工藤栄一氏。若い映画ファンでは長渕剛氏と一緒にメガホンをとった「ウォーター・ムーン」が有名だろう。(余談2)
 俳優陣が豪華である。勝新の実兄若山富三郎氏が主人公を務める。脇には梶芽衣子氏の「女囚さそり」シリーズにも出ていた真山知子氏が女忍者役として主人公の参謀を務める。
 「ザ・マジックアワー」では綾瀬はるか氏の父親役で妻夫木聡氏のバカバカしい計画を糞真面目にこなす初老の伊吹吾郎氏が、ここでは領主配下の忍者集団を率いる若き棟梁役で若山富三郎氏と鍔迫り合いをする。伊吹吾郎氏の参謀には若き福本清三氏もいた。
 さらに当時は御健在だった時代劇界の大御所アラカンこと嵐寛寿郎氏が村名主の役で登場、演技とはいえ家老に暴力を振るわれる貴重映像。福本清三

 物語は単純な勧善懲悪である。領主の圧政に民衆は苦しめられるが、そこへ凄腕の賞金稼ぎ一味が民衆側に立って戦い、悪大名を倒してハッピーエンドの平凡な作品だ。民衆を搾取する権力者たち、精一杯の抵抗を試みる民衆と助太刀するアウトロー。黒澤明監督の「七人の侍」以降、世界各国で無数に制作された物語である。
 悪の領主には「刑事コロンボ」のコロンボ警部補の声を担当する小池朝雄氏が扮する。

 ただ、本作は制作当時の時代を色濃く反映していて興味深い雰囲気になっている。賞金稼ぎといっても、けっきょく主人公たちは折角の金を村人たちに全て渡してしまう。領主との戦いで敵は皆殺しにしたが、守ろうとした村人たちも大半が殺されてしまった。荒野には村人や侍の屍が累々と転がり、僅かに生き残った村人たちが茫然と立ち尽くすだけだった。村人が賞金稼たちに頼る前にあてにしていた領主より上の権威権力である幕府が調停にやってきたのは、何もかもが終わって村が荒廃した後だった。間の抜けた時に偉そうに事情を尋ねる幕府の役人。
 虚しい戦いが終わり、国家権力も役立たず、ただ子供たちは生き残ったのが救いだ。60年代に巻き起こった空前の反戦運動とは無関係ではない。

 この作品の特徴は時代劇の体をとったウエスタンである。主人公は西洋科学に精通しているという設定なので、なんと江戸時代なのにガトリング砲をつくって領主軍に機銃掃射をする。女忍者は太股あらわなセクシーくの一スタイルで殺陣をすると思いきや、ラストの決戦ではライフル銃の使い手となって主人公を援護射撃する。
 領主側も負けてはおらず、村人や主人公が立て篭もる砦に大砲を放つ。まるで米軍の近代戦のように大砲を雨霰と撃ち込んでから地上部隊を投入、それを若山富三郎氏が機銃掃射。最後に白兵戦のチャンバラとなって、侍たちは皆殺し、1人生き残った領主は「下がれ!下郎!控えおろう!」と悪態つきながら若山氏に袈裟懸けで斬られる。

 しかし、領民を皆殺しにしようとするバカ領主に、手回し機関銃で大量殺戮する主人公、バカバカしくぶっ飛んだ映画と思いきや奥が深い。
 
(余談1)「子連れ狼」「木枯し紋次郎」「荒野の素浪人」「破れ傘刀舟」など。

(余談2)70年代からは、映画監督だけでは分が悪いと思ったのか活躍の場をTVドラマに移す。「大岡越前」「柳生一族の陰謀」「騎馬奉行」「服部半蔵・影の軍団」など、小中学生時代の私が慣れ親しんだ時代劇の監督を手掛けている。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆ 可
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作

 

 
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