ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「JSA」 自分に喝を入れたい時に〔18〕 

JSA」 冷戦下サスペンスの秀作
 

 
【原題】共同警備区域JSA 
【英題】JSA: JOINT SECURITY AREA
【公開年】2000年  【制作国】大韓民国  【時間】110分  【監督】朴贊郁
【原作】朴商延
【音楽】チョ・ヨンウク
【脚本】キム・ヒョンソク チョン・ソンサン イ・ムヨン 朴贊郁
【言語】韓国語 イングランド語
【出演】李英愛(ソフィー・チャン少佐)  李炳憲(李・スヒョク兵長)  宋康昊(呉・ギョンピル軍曹)  申河均(チョン・ウジン)  金泰佑(ナム・ソンシク)      
    
【成分】泣ける 楽しい 悲しい スペクタクル パニック 勇敢 知的 絶望的 切ない かっこいい コミカル 朝鮮戦争 ヒューマン ミステリー 38度線  
         
【特徴】日本での韓流映画定着を決定付けた作品。優れた冷戦物ミステリー。出演者には後に日本でも人気を得ることになる李炳憲氏(イ・ビョンホン)・宋康昊氏(ソン・ガンホ)・李英愛氏(イ・ヨンエ)が出演している。
 李英愛氏の英語台詞が美しい。
  
【効能】朝鮮半島38度線がどういうところかを雄弁に描写したエンタメ映画。
 
【副作用】重たいテーマなので気晴らしに観る映画ではない。李英愛氏の美しい軍服姿や李炳憲氏の青さに萌える事ができる人には全く問題なし。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
李英愛の英語発音が美しい。
 
 60年代から80年代にかけて、欧米では冷戦スパイ物の小説や映画が盛んに制作された。この「JSA」もそのジャンルに近い。但し、レビュータイトルにある「冷戦下」は現在の朝鮮半島では現在進行形である。それどころか、まだ休戦状態なので熱い戦争が終わったわけではない。

 北朝鮮と韓国の最前線である38度線で発生した銃撃事件、スイス軍法務部の韓国人系女性将校が謎を解き明かしていく。サスペンスとして完成度が高く、全編にわたり緊迫感と説得力に満ちている。
 映画では事件を解決するのは李英愛氏(イ・ヨンエ)扮するソフィー少佐だが、原作では男性だ。よく原作から映画化する際に味付けとして、不用意にラブロマンスを入れたり、男だらけの世界を無理に紅一点を登場させて失敗する事がある。この映画の場合はソフィー少佐にして成功だった。李英愛氏の冷徹な敏腕将校ぶりと英語の発音の良さは素晴らしい。(余談1)
 今にして思えば、李英愛氏は後にドラマ「チャングムの誓い(大長今)」で日本でも人気を得る。主人公役の李炳憲氏(イ・ビョンホン)や宋康昊氏(ソン・ガンホ)も日本の韓流を支えるスターになっていく。この作品は「シュリ」とともに韓流映画の礎だ。

 さて作品内容だが、イギリスのスパイ小説の巨匠ジョン・ル・カレ氏(余談2)の作品と比べても遜色ない。にも関わらず、ヤフー映画レビューでは内容に見合った評価がなされていないのは残念である。またル・カレ氏原作の映画は、ヤフー映画サイトではあまり注目されていない。韓流バッシング以外に、ヤフー映画サイトではリアルなハードボイルド物を好まないファンが多いのかもしれない。冒険小説やスパイ小説が好きな方々には、「JSA」はお薦めである。(余談3)

 韓国映画としても、北側の兵士と南側兵士をイーブンで描き、ひょんなことで軍事境界線を挟んで生まれた友情と破局は、韓国だけでなく日本でも反響を呼んだ。
 映画のテクニックも素晴らしい。オーソドックスだが、ジッポライター・女性の似顔絵・チョコパイ(余談4)・ソフィー少佐の母親の肖像写真など、小道具が効果的に伏線として描写されている。
 さらにリアルだったのは、ソフィー少佐が検死をするとき、事件の被害者は冷凍保存されているのか硬直が解けてなくカチカチで、死斑で背中が赤くなっている場面である。この場面の有無でも作品全体のリアリティーは随分変わってくる。
 
 2度目からの鑑賞では、ラストが判っているだけに他のミステリー映画と同じくミステリーとしての面白さは無くなるが、今度は俳優の演技で泣かせてくれる。結末が判っているからこそ、感情を表に出さない抑えた演技の李英愛氏が見せる微妙な表情筋の動きや視線、李炳憲氏ら4人の屈託のない笑顔と事件後の生気を失った顔が涙を誘う。
 ミステリー映画・ハードボイルド映画として優れているだけでなく、日本も含めて東アジア全体に横たわる朝鮮戦争の悲劇とその後つづく休戦状態の悲劇を、ソフィー少佐と4人の南北兵士の表情が雄弁に訴える。

 近頃、経済効果に味をしめてか、日本の韓流ブームに迎合した作品づくりが目立つ韓国映画だが一過性の現象だと思いたい。

(余談1)李英愛氏は大学でドイツ語を専攻している。だから英語と独語は会話できる。加えて白面で端正な顔立ち、スイス軍将校役はうってつけかもしれない。

(余談2)米ソ対立の冷戦下、語学力を買われウイーンでイギリス情報部の仕事を手掛け、本国に戻ってオックスフォード大を出るとイギリス外交官としてドイツ・ハンブルクに駐在した。彼の明晰な頭脳と実際の体験から編み出すスパイ小説にはリアリティーがあり、「鏡の国の戦争」や「寒い国から帰ってきたスパイ」「ロシア・ハウス」など映画化されている。

(余談3)原題は「共同警備区域JSA」である。もちろん、漢字の部分はハングルで書かれている。顰蹙を買うだろうが、私は漢字併記復活してほしい。
 よく38度線の非武装地帯と混同されるが、北朝鮮と韓国および国連軍が会談する施設がある板門店とその周辺を両軍が共同で管理するのでこの名称。作中でも板門店で韓国軍兵士役の李炳憲氏と北の人民軍下士官役宋康昊氏が向かい合う場面がある。

(余談4)韓国語でも「チョコパイ」と言っていた。ロッテのチョコパイか?

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