ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「吸血鬼ゴケミドロ」 不安と恐怖を楽しむ時に〔5〕 

吸血鬼ゴケミドロ」 トラウマを与えた作品。
 

 
【英題】GOKE-BODYSNATCHER
【公開年】1968年  【制作国】日本国  【時間】84分  【監督】佐藤肇
【原作】
【音楽】菊池俊輔
【脚本】高久進 小林久三
【言語】日本語 一部イングランド語
【出演】吉田輝雄(杉板英副操縦士)  佐藤友美(スチュワーデス朝倉かずみ)  高橋昌也(宇宙生物学者佐賀敏行)  高英男(寺岡博士)  金子信雄(徳安)  楠侑子(徳安法子)  加藤和夫[俳優](百武)  キャッシィ・ホーラン(ニール)  北村英三(真野剛造)  山本紀彦(松宮)  西本祐行(機長)      
    
【成分】パニック 不気味 恐怖 勇敢 絶望的 吸血鬼 宇宙人 SF 特撮 ホラー 反戦 
         
【特徴】子供向けホラー映画らしからぬ社会派映画・アンハッピー映画。
 高英男氏の怪演がピカ一、かなり沢山のホラー映画を観てきて「死霊のはらわた」などはコメディと思っている私だが、この顔は今みても恐い。
  
【効能】深夜、独りで観ると高英男氏のホラー顔が引き立ち恐怖を味わえる。
 突込みどころ満載で、夜中に友人たちと鑑賞すれば爆笑間違いなし。
 
【副作用】高英男氏の怪演は子供にトラウマを与える。
 シチュエーションがご都合主義で突っ込み所無数にある。メイクも稚拙。いたるところ爆笑モノのギャグが満載、ホラーというよりコメディでがっかり。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
高英男、怖い。
 
 初めて観たのは小学校へ入学する前だったと思う。夏休みの恐怖映画としてTV放送されたものだと思う。額がパックリと縦に裂け、アメーバーみたいな吸血生物が脳髄へと侵入して神経組織を乗っ取り吸血鬼に豹変していく。パッケージ写真は、吸血鬼と化した高英男氏である。(余談1)
 幼い頃、この青白い顔に戦慄して夜はなかなか寝付けなかった。夜中に尿意をもよおしたときは地獄である。当時の郷里の家は母屋と便所が別棟、街灯の無い村だったので真夜中になると懐中電灯無しでは歩くことができず、夜中に用をたすには暗黒の庭を通過しなければならない。月明かりに額がパックリ開いた高英男氏が立っていたら・・。
 便所にはワット数の低い暗い裸電球がひとつあるだけで、水洗ではなく田畑へ撒く肥溜めでもあるため仮に便器から中へ落下すると「フェノミナ」でジェニファ・コネリー氏が腐敗汁の池に落ちる場面に良く似たシチュエーションになる。便器から高英男氏の顔が飛び出したら・・。そう思うと便所に行けず、一晩中我慢する羽目になった。(余談2)

 この恐怖体験はトラウマとなっていたようで、小学校高学年の頃に理科の授業でミジンコやミドリムシなどの微生物を学習しているときに「アオミドロ」の名前に反応してしまい、級友たちとは「『ゴケミドロ』や」とふざけあっていたが、家に帰って夜になると幼い頃の恐怖が甦り、1人で風呂に入るときは恐怖を紛らわすために「サザエさん」の歌を歌い続けた。
 成人して、学生の頃だったか深夜の映画番組で「ゴケミドロ」が放送されたとき、さすがに特撮の稚拙さや登場人物の不自然さが目につき冷静に観察することができるようになっていたが、やはり高英男氏の顔は恐かった。まだ吸血鬼になる前の白いスーツにサングラスのヤクザ風の姿で飛行機の座席に座っている段階から背筋に悪寒がはしった。
 さすがに40を過ぎた今観ると爆笑・苦笑の連続で、なんでこんな作品に怖がっていたのだろうかと不思議だったが、やはり高英男氏の顔はまだ怖い。

 物語としては、優れた吸血鬼モノ・パラサイト物だと思う。特撮は当時の技術からしても稚拙だ。登場人物の設定も不自然。
 普通の旅客機が高英男氏扮するテロリストにハイジャックされ、そのときに謎の飛行物体と衝突して墜落する。生き残ったのは主人公の副操縦士とヒロインのスチュワーデス、大物政治家・兵器産業の重役・政治家と重役と二股かけている女・精神科医・宇宙生物学者・ベトナム戦争戦没者遺族の若いアメリカ女性、そして恐怖の高英男氏。主人公とヒロインは良いが、これほどの大物とスペシャリストが同じ飛行機に乗合わすのも不自然だし、生き残るのはもっと不自然だ。まるで物語の展開のために用意された都合よすぎるシチュエーションである。

 しかし、高英男氏の怪演が効いているので迫力があり、目前の恐怖に対して登場人物たちが本性を現し閉鎖された環境でドロドロとした人間関係へ陥る様が、本当に子供向き映画なのかと思えるほど渋い大人のドラマである。そして主人公とヒロインはハリウッドのパニック映画に負けないくらい格好良い演技をしていた。ラストもまた子供向きらしからぬアンハッピーな終わり方で、幼い頃の私は感情移入し過ぎて奈落の底へ落ちたような気分になった。(余談3)

 この作品は、もう少しリアリティーのある設定でリメイクしたら面白いかもしれない。ただ、やはり幼い頃はこんな映画より「オズの魔法使」のような映画を観ておきたかった。
 
(余談1)色白で頬のこけた陰険そうな風貌だったから悪役専門の俳優と思い込んでいたら、なんと本職は歌手で美輪明宏氏とは歌手仲間らしい。奇しくも「ゴケミドロ」は美輪氏主演の「黒蜥蜴」とは同時上映だったようだ。
 上映当時、噂では高英男氏が美輪明宏氏に「あんた男のくせに女の役やってんの?」と冷やかすと、美輪氏も負けずに「あんただって化け物の役じゃないの!」と掛け合いをやっていたそうである。

(余談2)通常のボットン便所は、小柄な人間が辛うじて入るくらいの太さの塩ビパイプを便器から地面に突き刺しているタイプを連想するだろう。だから何故「フェノミナ」状態になってしまうのか理解できないと思う。そのタイプの便所は近代的な都会のボットン便所である。
 当時の我が家の便所棟は急ごしらえで作った平屋建日本建築で、便器を取り付けた床は母屋と比べて安っぽい床板にセメントで補強しているだけのもの。相撲取りがジャンプすれば床は抜けるかもしれない。
 床の下は肥溜めになっていて、地面を掘って作った大きな穴。たぶん、要所要所はセメントで固めて補強はしていたと思うが、私の記憶では単純に土剥き出しのトレンチのような穴だった。
 便所の裏手に肥溜めの扉があり、そこから柄の長い大きな柄杓で採取して畑の肥料にした。蛆虫が大量に繁殖していて臭いがきつかった。

(余談3)アメリカ人女性役キャッシィ・ホーラン氏はけっこう流暢な日本語で反戦を訴えていた。そういえば当時はベトナム戦争が起こっていた。幼い頃は高英男氏の恐怖の顔しか印象に残っていなかったが、反戦思想や社会批判も盛り込んでいたことに驚く。
 


晴雨堂スタンダート評価
☆☆ 可
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆☆ 金字塔



 
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初めまして。

当方の利用しているwebryとfc2との相性が悪くてTBができませんので、URL欄に記事URLを忍ばせておきました。

40年前作者たちは真面目に作ったものが今観ると(一般観客のセンスが洗練されたので)完全なコメディーにしか見えない典型的な作品と思われます。
その意味で楽しく観たのですが、狙いと違って結果をもたらす作品は失敗といういことで、僕は【ダメ映画】の烙印を押しました。^^
[ 2009/04/14 20:03 ] [ 編集 ]
コメントありがとうございます。

オカピー氏の評価は誤りではありません。もし私が小学生の頃に観ていたら、同意見だったでしょう。最初に観たのが保育園に通っていた幼児の頃でしたから、高英男の顔がトラウマになりました。
いま観ると、今度はノスタルジーを感じてしまいます。友人にべ平連やってた人がいたので、当時の背景などを考えてしまうのです。
私と「ゴケミドロ」の関係だけで言えば、出会えた時期が良かったということでしょう。
[ 2009/04/15 06:19 ] [ 編集 ]
こんにちは、私も幼少時に大阪朝日放送でやっていた「夏休み子供映画大会」(朝9時半からやってました(ーー;))で恐怖を刷り込まれたクチです。

映画にはバッドエンドというものがあるのだよと言うのをこの作品から教わりました・・・

高英男の額パックリ(やや女性器を思わせないでもない、ギーガーデザインの先取り?と言うと大袈裟かも)も怖ろしかったですけど、最後の「この世が終わってしまった」感が子供心にめっちゃ不安且つビビらされたことを思い出します(>_<)

オッサンになってからも何度か見直していますが、系譜としては東宝の「マタンゴ」あたりと匹敵する早すぎたパニック終末映画の佳作ではないでしょうか。
[ 2012/05/30 12:52 ] [ 編集 ]
しろくろShow氏へ

 初めて見たバットエンドがこの作品でした。無数の円盤が地球へ来襲するラストが驚愕でしたね。あれを見るまで、副操縦士とスチュワーデスは助かるとの希望を持っていましたから。

 「マタンゴ」は少しお色気を加味した本格ホラーでリメイクしてほしいですね。あれは世界にウケる題材です。 

> こんにちは、私も幼少時に大阪朝日放送でやっていた「夏休み子供映画大会」(朝9時半からやってました(ーー;))で恐怖を刷り込まれたクチです。
>
> 映画にはバッドエンドというものがあるのだよと言うのをこの作品から教わりました・・・
>
> 高英男の額パックリ(やや女性器を思わせないでもない、ギーガーデザインの先取り?と言うと大袈裟かも)も怖ろしかったですけど、最後の「この世が終わってしまった」感が子供心にめっちゃ不安且つビビらされたことを思い出します(>_<)
>
> オッサンになってからも何度か見直していますが、系譜としては東宝の「マタンゴ」あたりと匹敵する早すぎたパニック終末映画の佳作ではないでしょうか。
[ 2012/05/30 18:27 ] [ 編集 ]
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