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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「シベリア超特急」 おバカになって愉快になろう〔14〕 

シベリア超特急」 
積極果敢にも駄作に徹した作品。

 

 
【英題】SIBERIAN EXPRESS
【公開年】1996年  【制作国】日本国  【時間】90分  
【監督】MIKE MIZNO(水野晴郎
【原作】水野晴郎
【音楽】
【脚本】水野晴郎
【言語】日本語 イングランド語
【出演】水野晴郎(山下泰文)  かたせ梨乃(李蘭)  菊池孝典(青山一等書記官)  アガタ・モレシャン(カノンバートル)  シェリー・スェニー(グレタ・ペーターセン)  西田和晃(佐伯大尉)  占野しげる(車掌)  エリック・スコット・ピリウス(ユンゲルス)  フランク・オコーナー(ポロノスキー)  フィリップ・シルバースティン(ゴールドストーン)      
    
【成分】笑える 楽しい ファンタジー ゴージャス ロマンチック 不思議 パニック 勇敢 知的 コミカル ミステリー 1938年 
         
【特徴】偉大なる駄作である。初めて観たとき、こんな馬鹿げた内容に俳優たちが大真面目に演じているのが面白かった。水野氏は素人の監督だが映画の知識は十二分にあるから、これが駄作であるのは判った上で公開しているのだろう。その覚悟に敬意を表する。エド・ウッドのように映画好きで、エド・ウッドよりもはるかに幸せな映画人だ。
  
【効能】とにかく、素人の自主映画そのもの。資産家の映画マニアが撮ったらこんな感じになるか。作品よりも、作品を観ながら楽屋裏を想像すると楽しくなる。親しい仲間と8ミリ映画やビデオ映画を趣味で撮った事のある人なら癒されるかもしれない。
 
【副作用】本来なら商業ベースに乗せられない超駄作。見るに堪えない人もいるだろう。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
邦画の落陽を観て制作を決心した作品
 
 山下奉文将軍は、同時代のドイツ軍ではロンメル将軍、アメリカ軍ではパットン将軍に並び称されるほどのスーパーヒーローで、マレーシアやシンガポールの英軍を鮮やかに駆逐したことで「マレーの虎」と呼ばれた。
 勇猛なイメージがある山下将軍だが、実際は紳士的で聡明な人物(余談1)で、「マレーの虎」と呼ばれるのも嫌っていた。意外に思うかもしれないが、水野晴郎氏扮する山下将軍は比較的実像に近いかもしれない。せっかく主役をやるのだから、せめて発声などの訓練をしてほしかったのだが誠に残念である。

 既に多くの評論家や映画ファンたちが「駄作」と表している。前述のように水野氏はせっかくの主役なのに演技の訓練をしていないのだ。出演俳優たちは豪華な顔触れ(余談2)だが、逆に一般人が観ても突っ込める稚拙な演出が沢山あるのに出演者たちは異議を唱えてもよさそうなものなのに不自然な描写を喜々として演じている。
 そもそも監督である水野晴郎氏自身、自分の演技力の無さはもとより、無茶苦茶な設定と不自然な物語展開、安普請まるだしの列車セットに臨場感の無さ過ぎるカメラワークは、如何に低予算B級未満映画とはいえ、あまりにお粗末であることは判っているはずである。水野監督はワザとやっている、だがその動機が解らなかった。

 「シベ超」がB級映画として是非はともかく何故か好意的に評価され7作目も制作されるそうだが、「駄作」調は相変わらず、俳優やスタッフたちは好んで駄作に参加しているかのようだ。ここまで連作するともはや水野氏の「山下将軍」は1つのキャラとして定着した感があり、山下将軍から悲劇の戦犯「マレーの虎」というマイナスイメージが薄らいだ。

 私は1つの仮説を立てている。DVD化されたこの第1作で水野氏は解説者としても登場している。彼はそこで“にっかつ映画”「落陽」(余談3)で端役として山下将軍に扮したことがキッカケだったと話していた。この「落陽」はバブル景気いまだ終わらぬ90年代初頭に香港やハリウッドの人気俳優を招いて制作された大作、いや、「大作」にしようと努めた映画で邦画としては巨額の50億をかけた割りに物語は無茶苦茶で興行はサッパリの作品、にっかつ映画だけでなく日本映画全体の落日を象徴する作品でもあった。
 水野氏はこの作品で山下将軍を演じたことで山下キャラに惚れ込み、「落陽」の2・3年後に「シベ超」シリーズ制作に着手するわけだが、豪華キャストにこだわり、過去の名作が使っていた技法を真似まくり、それでもって徹底的に陳腐な場面を並べて低予算映画に仕上げる、このワザとらしい映画を撮る動機の1つに「大作」を目指してコケまくった「落陽」にあるのではないか。

 私には「巨額の資本を投下して大上段に構えんでも、低予算で楽しみながら観客の心に残る映画は創れるんだぞ」と、水野氏が微笑みながらも目は闘志に燃えている様を見たような錯覚をおぼえる。

(余談1)聡明であるがゆえに大本営では嫌悪され、日本に対し多大な功績を上げながらも閑職に左遷され、中央で発言力を発揮する機会を奪われた。山下が前線に復帰するのは敗戦濃厚な大戦末期である。
 アメリカ軍の猛攻を受けレジスタンスが活性化しているフィリピン戦線においても、一般市民に被害が及ばぬようマニラ市街地から離れた場所に司令部を置くなど、物心余裕の無い状況にも関わらず自制心も優れていた。山下は正確に米軍の状況を分析し、大本営の誤った作戦に反対するが報われなかった。
 敗戦後の軍事裁判で不遇の将軍に対し原告側からも同情論が出たが、結局は直接関与していない虐殺の責任を負わされ山下将軍も弁明せず処刑された。
 アメリカ軍はパットンのような優秀だが問題多い人材も有効に使っていたわけだから、仮に日本軍が物量にも有利だったとしても大本営の体質ではアメリカ軍に勝てないだろうと思う。

(余談2)外人タレント草分けのフランソワーズ・モレシャン氏の娘アガタ・モレシャン氏がウイグル人役で出ている。顔付きならジュリー・ドレフィス氏の方がウイグル人らしいのではと思うが。

(余談3)ダイアン・レイン氏がヒロインで出演していた。どうやら満州族の役柄のようだが、どう観ても似合わない黒髪カツラ被ったアメリカンだった。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆ 不可
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆☆ 金字塔

  
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