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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「パットン大戦車軍団」 絶望から脱出しよう〔23〕 

パットン大戦車軍団」 伝記映画の名作。
 

  
【原題】PATTON
【公開年】1970年  【制作国】亜米利加  【時間】172分  
【監督】フランクリン・J・シャフナー
【原作】
【音楽】ジェリー・ゴールドスミス
【脚本】フランシス・フォード・コッポラ エドマンド・H・ノース
【言語】イングランド語 ドイツ語 一部ロシア語・アラビア語・フランス語・イタリア語
【出演】ジョージ・C・スコットジョージ・S・パットン大将)  カール・マルデン(オマー・N・ブラッドリー大将)  マイケル・ストロング(ホバート・カーパー准将)  カール・ミカエル・フォーグラー(ロンメル元帥)  スティーヴン・ヤング(チェスター・ハンセン大尉)  フランク・ラティモア(ヘンリー・ダヴェンポート中佐)  エド・ビンズ(ウォルター・ベデル・スミス少将)  マイケル・ベイツ(バーナード・モントゴメリー元帥)  リヒャルト・ミュンヒ(アルフレート・ヨードル大将)  ジークフリート・ラオホ(オスカル・シュタイガー大尉)
            
【成分】ファンタジー スペクタクル ロマンチック 不思議 パニック 勇敢 切ない かっこいい 戦争映画 伝記映画 第二次大戦 アフリカ シチリア フランス ドイツ 1943年~1945年  
         
【特徴】優れた伝記映画。第二次大戦の猛将パットンの生涯を雄弁に描写。
  
【効能】作中のパットン将軍から喝を入れられているような錯覚を起こすかもしれない。これを観て気合を入れよう。
 
【副作用】パットンのマッチョ的右翼精神に嫌悪、気分が悪くなる人もいる。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
パットン将軍の晩年
 
 アメリカ軍の猛将ジョージ・パットン将軍は、ドイツのロンメル将軍や日本の山下奉文将軍と並んで第二次世界大戦のスーパースターである。いずれも痛快な電撃作戦を成功させた有能な軍人だが晩年は不遇だったことも共通している。
 ただ戦史に興味の無い人には原題の「PATTON」ではピンとこないと考えたのか、配給元は邦題を「パットン大戦車軍団」とつけた。たしかにタイトルで内容の推測は容易になったが、同時に安っぽいドンパチ娯楽活劇のイメージを与えてしまったようで残念である。

 この作品は戦争活劇というよりは、一人の軍人の半生を描いた伝記映画である。伝記映画というと、主人公の人生をダイジェストで見せる作品になりがちだが、この映画はメリハリのある完成された物語に仕上がっていた。パットン60年の生涯の中で最も光り輝いたのは、第二次大戦のアフリカ戦線から大戦終了直後に交通事故死するまでの僅か3年間だったから、最晩年に焦点をあてれば話をまとめやすい事情がある。何より脚本には「ゴットファーザー」でブレイクする前の有能な映画人フランシス・F・コッポラ氏が担当していた。

 公開当時はベトナム戦争が泥沼化し、全世界で反戦運動とアメリカ非難が巻き起こり、国内でも「ソルジャー・ブルー」といった体制非難色の強い映画が話題になっていた。そんな背景もあってか、古き良き時代の将軍パットンは自信を失っていく現代アメリカへもカツを入れているかのように登場する。(余談1)
 冒頭でいきなりパッケージ写真にある巨大な星条旗を背にありったけの勲章を飾り立て特注の拳銃を腰に下げたパットンが歯に着せぬ過激な演説を始める。画面には聴衆の声のみで姿はなくパットン1人の独演会だ。(余談2)この場面でパットンがどんな性格の軍人であるかが明々白々となる。
 次にアフリカ戦線での米軍の惨状、戦闘が終了した直後の遺棄された米兵の遺体から衣服を剥ぎ取る遊牧民たち、前線視察にやってきた米軍ブラッドリー将軍は裸にされた戦死者たちを前にして「勇猛な司令官が必要だ」と呟く。

 このようにインパクトの強い冒頭から物語が展開する。テーマ曲は獰猛な性格の反面、ロマンチストで敬虔なキリスト教徒のパットン(余談3)を象徴するかのように、遠くから囁くようなファンファーレが鳴り、重厚なパイプオルガンの前奏から行進曲のような楽曲が始まり、物語全体の雰囲気を盛り立てる。
 前半は鬼将軍として兵士たちを鍛え直し、ロンメル配下のアフリカ軍団を打ち破り友軍の英モントゴメリー将軍とのシチリア解放競争にも勝つまでが描かれている。(余談4)後半は神経症で入院している兵士を殴打したことで国内世論から非難(余談5)を浴びて左遷され、ヨーロッパ戦線の苦境打開で再び戦の表舞台で大活躍し、肝っ玉オヤジとして兵士たちから慕われるようになる。ラストは相次ぐ失言で失脚し司令部から去っていく。その後姿は老人の背中だった。
 パットンを演じたジョージ・C・スコット氏はこのときまだ40代前半だったが、50代後半のパットン将軍の貫禄と老いをよく演じた。(余談6)この演技力が評判となりアカデミー賞を受賞するが、スコット氏はアカデミー賞を非難しながら拒絶している。
 
(余談1)たしかに古き良き時代だ。第二次大戦のヨーロッパ戦線では、アメリカ軍は侵略者ではなく「解放軍」だった。

(余談2)ノルマンディー上陸作戦前に将兵に対して訓示した記録がある。実際は「放送禁止用語」のオンパレードで、作中の演説はまだ柔らかい表現である。

(余談3)パットンはローマと戦ったカルタゴの名将ハンニバルの生まれ変わりだと信じていた。第六感と輪廻転生の信仰者で、初めての土地なのに古戦場の位置をよく知っていた。作中でもその場面がある。

(余談4)「遠すぎた橋」では、モントゴメリー将軍は姿を見せないお偉方だが、「パットン」では完全にピエロだった。
 ドイツ軍の描写はまずまずだった。台詞のある俳優は少ないが、全員ドイツ語を話していた。ただ、実際のアフリカ軍団は映画のようなお揃いの軍服は着ておらず、個々の着心地にまかされていた。また大戦末期になると映画のような七分長のジャックブーツを履く歩兵は少ない。実際は鞣革の生産力が落ちて短靴に切り替わっている。

(余談5)ある意味、当時のアメリカ社会における人権意識の高さと進んだ情報公開が評価できる。現代の自衛隊でも殴打くらいでは非難されない。

(余談6)映画から15年後に、スコット氏は再びパットンを演じている。「パットン将軍、最後の日々」でビデオ化されているのだが、ヤフー映画データには載っていない。
 

 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆☆ 秀
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
【受賞】アカデミー賞(作品賞)(1970年) ゴールデン・グローブ(男優賞(ドラマ))(1970年) NY批評家協会賞(男優賞)(1970年)
  
晴雨堂関連作品案内
パットン将軍最後の日々 [VHS] デルバート・マン
遠すぎた橋 アルティメット・エディション [DVD] リチャード・アッテンボロー
 
晴雨堂関連書籍案内
猛将パットン (第二次世界大戦文庫 (14)) チャールズ・ホワイティング
パットン対ロンメル―軍神の戦場 デニス・ショウォルター


  

 
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トラックバックありがとうございました。
ジョージ・C・スコット、名演でしたね。
しかし「パットン大戦車軍団」という邦題はちょっと・・・・。
[ 2009/04/18 20:08 ] [ 編集 ]
トラックバックありがとうございました。

みていて、どうもあのドイツ軍の人たちは
落ち着きすぎてやしないか?と思いましたが、
制服が整いすぎて事実と違ってたんですね。

アイゼンハワーが全然画面にでてこないのも
おもしろかったです。陰の実力者みたいな
感じで。実際は見合う俳優がいないとか、
ギャラの問題かもしれませんが。
[ 2014/10/05 08:32 ] [ 編集 ]
A君へ

> みていて、どうもあのドイツ軍の人たちは
> 落ち着きすぎてやしないか?と思いましたが、
> 制服が整いすぎて事実と違ってたんですね。

 よくある演出上の誇張は、綺麗な軍服なんです。大戦の後半になると輸送路の寸断と空爆による生産地の破壊で物資不足になり、軍服の簡略化が行われます。素人でもよく判るのは大戦末期でも脛まであるジャックブーツを履いている兵士ばかり。実際は鞣革生産が壊滅状態なので踝までの短靴にゲートル巻きに変わっています。
 あと細かいところでは、全盛期のドイツ軍は襟をダークグリーンの布を縫い付けて分厚くしていますが、大戦末期は省略しています。また胸ポケットのタックが布地節約のため省略されています。その様子は「ヒトラー 最後の12日間」でよく判ります。ユンゲたち女性秘書らがベルリンを脱出する際に着る軍服が簡素バージョンです。
 しかし映画では強大なドイツ軍を打ち破るという演出をしたいのか、末期のジリ貧ドイツ軍でも充実しすぎる装備で米軍に向かってきます。


> アイゼンハワーが全然画面にでてこないのも
> おもしろかったです。陰の実力者みたいな
> 感じで。実際は見合う俳優がいないとか、
> ギャラの問題かもしれませんが。

 本作でパットンにいいように出し抜かれる狂言回しのモントゴメリーは、「遠すぎた橋」では雲上人のごとく姿を現さず、副司令官がショーン・コネリーにパワハラする。アメリカとイギリス両国の人物に対する認識や社会的ポジションが良く判りますね。
[ 2014/10/05 10:17 ] [ 編集 ]
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