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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「ベルサイユのばら」 美術鑑賞的映画〔4〕 

ベルサイユのばら」 
原作のヒロイズムを敢えて潰した監督。

 

 
【原題】LADY OSCAR
【公開年】1979年  【制作国】仏蘭西 日本国  【時間】124分  
【監督】ジャック・ドゥミ
【原作】池田理代子
【音楽】ミシェル・ルグラン
【脚本】パトリシア・ノップ
【言語】イングランド語
【出演】カトリオーナ・マッコール(オスカル)  バリー・ストークス(アンドレ)  クリスティーナ・ボーム(マリー・アントワネット)  マーク・キングストン(-)      
    
【成分】ゴージャス セクシー フランス革命 18世紀後半 フランス 
         
【特徴】池田理代子氏の代表作「ベルサイユのばら」の映画化という体をとっているが、全く別の物語である。
 原作のオスカルは明らかにドラクロワの絵画にある有名な「民衆を導く自由の女神」であること間違いないのだが、メガホンを取ったフランス人監督はこれを無視している。フランス衛兵隊を率いて民衆のために蜂起する女性指揮官の姿はない。
  
【効能】18世紀のフランス貴族の生活が再現されている。ゴージャスな気分に浸れる。
 
【副作用】原作ファンにとっては明らかに改悪、耐え難い屈辱感を抱き監督を担当したフランス人に対して激しい怒りがこみ上げる。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
映画化の意味が解らない。
池田理代子氏は納得済みなのか?

 
 映画を観て、多くの「ベルばら」ファンはブーイングだったろう。私もその1人である。原作と同じ時代背景と登場人物でも、物語は全く別物だった。原作から映画化されるにあたって、多少の改編は覚悟した物分りの良いファンでも、監督に対して怒りが込み上げた方は少なくない。
 「ベルばら」がウケた最大の理由は、フランス革命を背景にした歴史大河ドラマで女性がヒーローを演じているからである。この手の物語では女性は可愛らしくて可憐なヒロインが多いのだが、「ベルばら」のヒーローは男ではなく、あくまで男装の麗人オスカルと王妃マリー・アントワネットだ。アンドレもフェルゼン伯も助演男優のポジションであって主人公ではない。女性が堂々と歴史の表舞台で獅子奮迅の活躍をするからこそ魅力があるのに、監督たちは見事に原作の根幹を潰してくれた。

 いったい何故だろう。監督は「シェルブールの雨傘」で著名なジャック・ドゥミ氏だ。だから、たしかに映像は美しかった。後にバラエティ番組などでフランス貴族の生活を紹介するときに映画の1シーンが使われることも多々ある。ベルサイユ宮殿がロケーションに使われたのも、日本マネーの威力だけでなく、やはり監督がジャック・ドゥミ氏の権威だと思う。
 ラストのフランス革命にオスカルたちはラフな姿で参加するのだが、実際に革命は漫画のような勇ましい場面ばかりではなく、一見するとダラダラしたデモ行進みたいな風景がいたるところにあったのかなと思う。軍人貴族の家に生まれて男装させられた令嬢が次第に女に目覚め革命思想に目覚め自立して民衆の中に入っていく場面も決して悪くない。
 しかし、そこにはフランス衛兵隊を率いて市民解放のために戦い華々しく散るオスカルの姿は無い。歴史の中に自ら埋没させ消えていく可憐なヒロインだ。そんなオスカル、殆どの「ベルばら」ファンは見たくなかったはずだ。

 監督をはじめ制作者たちは何を考えているのか理解できない。フランスにもジャンヌ・ダルクという女性ヒーローがいる。ロマン派のフランス人画家ドラクロワの絵画には有名な「民衆を導く自由の女神」(余談1)がある。また、ポーランド人監督アンジェイ・ワイダ氏がメガホンを取った映画とはいえフランス映画の「ダントン」(余談2)は、「ベルばら」の池田理代子氏も漫画に描きそうな劇的な内容だった。
 だから、解らない。原作のオスカルは兵士たちの前で勲章を引きちぎり、民衆側に寝返り戦うことを宣言して勇ましくサーベルを振り回して突撃、兵士たちは歓呼を上げて後に続く。ジャンヌ=ダルクを彷彿させるオスカルの姿、フランスの制作者たちはこれのどこが気に入らなかったのか? 何の不都合があったのか? そして池田理代子氏は何故こんな内容で許したのか?

 これはオスカルが主人公でなくても良い映画だ。無理に「ベルばら」の映画化にしないで、全くの別作品にすべきだった。映画設定はそのままにして男勝りの令嬢がアンドレやジェローデルに弄ばれる転落人生を軸に描いたフランスやイタリア映画界お得意の官能映画にしたほうがまだ面白い。
 因みにオスカルを演じたカトリオーナ・マッコール氏は、あまり運動神経はよくない。アクションは無理だし身体も鍛えていなさそうだ。後にホラー映画の大家ルチオ・フルチ監督のもとでヒロインを務める。オスカルやジャンヌ・ダルクよりも適役だろう。

 もし映画化の話が再びあれば、台詞はフランス語で、主演女優はアクションができる俳優が務めるべきだ。

(余談1)1830年代の作品。ナポレオンが失脚した後、ルイ16世の血縁者が再びブルボン王朝を復活させるが七月革命で再び倒される。絵はそれを題材にしている。池田理代子氏は明らかにこの絵からイメージを膨らませている。

(余談2)マリー・アントワネットが処刑された後の話。「ベルばら」では善玉の青年革命家のロベスピエールと盟友ダントンとの対立を描いた。主人公ダントンにはドパルデュー氏が扮している。法廷闘争で喉を潰しながら傍聴席に向かって演説する場面は必見だ。


 
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