FC2ブログ

ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「プライド 運命の瞬間」 社会問題を考えたい時に〔7〕 

プライド 運命の瞬間」 
極東国際軍事裁判結審50周年記念作品。

 

   
【原題】
【公開年】1998年  【制作国】日本国  【時間】161分  【監督】伊藤俊也
【原作】
【音楽】大島ミチル
【脚本】松田寛夫 伊藤俊也
【言語】日本語 一部イングランド語
【出演】津川雅彦東條英機)  スッコット・ウィルソン(ジョセフ・キーナン首席検事)  ロニー・コックス(ウィリアム・ウェブ裁判長)  大鶴義丹(立花泰男)  戸田菜穂(新谷明子)  奥田瑛二(清瀬一郎弁護人)  いしだあゆみ(東條かつ子)  寺田農(重光葵)  前田吟(赤松貞雄)  村田雄浩(伊藤清)  前田亜季(東條君枝)  相田翔子(東條光枝)  烏丸せつこ(-)  大川周明(石橋蓮司)  スバス・チャンドラ・ボース(アヌパム・ケール)  ラダ・ビノード・パール判事(スレーシュ・オベロイ)      
    
【成分】勇敢 知的 切ない かっこいい 法廷劇 第二次大戦直後 東京裁判 1945年~1948年 日本 
         
【特徴】政治的話題作。国内は賛否両論に分かれて沸騰。東條英機側の視点で見た東京裁判を映画化。左翼護憲派市民からは上映反対運動が展開されたほどの話題作。
 企画段階では東京裁判を担当したインド出身のパール判事の物語だったのを東條英機を主人公にした物語に変更された。
 東條英機役の津川雅彦氏の演技は、東條英機の遺族たちから好意的に受け止められた。
  
【効能】人生の展望を失い絶望している人には、アメリカの傲慢に敢然と最期の闘いを挑む東條の姿に感動し救われるかもしれない。東京裁判の性格を知るのに良い教材。
 
【副作用】政治的に保守右翼市民の立場で制作され、保守右翼の視点で観た事実しか採用していないので、左翼護憲市民の目には軍国主義正当化に見え激しい嫌悪感から気分が悪くなるだろう。制作陣の政治的思い入れが鼻につく。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
法廷劇の佳作になったのに・・。
 
 これは神風特攻隊をテーマにした2007年公開映画「俺は、君のためにこそ死ににいく」に匹敵する話題沸騰作だった。

 第二次大戦終了直後に東京で戦勝国主導の軍事法廷が開かれる。いわゆる「東京裁判」だ。この大戦は現在の政治体制の基礎なので、登場人物たちをどう扱うかで制作者の政治的立場も露呈する。いわば非難と喝采を同時に浴びる危険なテーマだから制作者や出演者は随分と気合を入れて参加した大作であるのは間違いない。

 まず目を惹いたのは東京裁判のリアルな再現である。当時の記録フィルムや当事者たちからの取材を丹念に行っているのは覗われる。公開時はまだ物珍しがられたCG(余談1)で焼け野原の東京を忠実に再現したことも話題になった。
 法廷で対決する津川雅彦氏扮する東條英機スコット・ウィルソン氏扮するキーナン首席検事の演技は観応えある。日本寄り視点で裁判に疑問を抱くインドのパール判事とアメリカ寄り立場ながら公正の建前を崩したくないウェブ裁判長、そんな判事たちの小さなモラルでさえも苛立つアメリカの検事、この相関関係は裁判の性質を雄弁に表している。

 左翼・右翼双方の政治勢力が一致した見解として、やはり東京裁判は茶番なのである。利害関係の無い第三国ではなく戦勝国のみで敗戦国を裁く不公平さ、国際法違反の東京大空襲や原爆の責任すら敗戦国の責任に押し付ける非道、加えて左翼は皇軍の大元帥たる昭和天皇を法廷に出さなかったマッカーサーの政治的思惑を批判している。東條ら戦犯の処遇は最初から決まっていることであり、東京裁判は法的根拠と国際世論のコンセンサスを得るためのセレモニーに過ぎない。
 
 主演の津川氏は作品を非難する人々に対して「これは藝術なのだから」という趣旨の反論をした。政治的主観の色眼鏡で観ずに、藝術作品として評価してもらいたい、という意味に私は解釈している。
 では藝術として評価するならば、私は構成に問題があると指摘する。ケネス・ブラナー氏主演「謀議」では、舞台は会議室とその周辺に限られていて、登場人物の性格や心情や生い立ちなどは会議での発言や休憩時間での雑談で判る様に構成されていた。そのため僅か1時間半程度の物語ながら、説得力の強い秀作に仕上がっている。ところが「プライド」では法廷外の場面が多すぎる。30分程度短くできるし、同じ長さならもっと法廷での論戦を入れてほしかった。邦画は欧米に比べて論争劇が不得手だ。

 企画段階では英領インドのパール判事を主人公とした作品だった。制作者は知名度を考慮して東條英機を主人公に変更したため、映画はパールの物語と東條の物語を合わせた様になり、時間も2時間半と長くなった。私は企画どおりパールを主人公にするべきだったと思っている。パールのインド人としての生い立ちをさり気なく描写すれば、欧米列強の欺瞞と東條の清廉さをより強くアピールでき、制作者たちの「目的」はもっと効果的に達成できたと思う。(余談2)

 あくまで藝術として評価すれば、スポンサーたちの意向を入れ過ぎた内容だ。東條の人間的な部分を描写したい欲求は理解できるが、家庭での良き夫・良き父ぶりを入れると、戦争指導者のワザとらしい言い訳に見える。法廷や収容所での台詞や所作で人柄や人生を滲み出すほうが強く伝わる場合が多々あるのに、それをスポンサーたちは理解していない。(余談3)
 素材自体は「法廷劇」「論争劇」の秀作にできるものなのに、保守右翼たちの特別な感情で凡作に仕上げてしまった。
 
(余談1)NHK朝の連続テレビ小説「純情きらり」「芋たこなんきん」などでも空襲で壊滅した街の風景をCGで再現して、今までのドラマに無い奥行の有るリアリティーを出している。もはや当たり前に使われる技術だ。

(余談2)私が保守右翼だったら、「プライド」の主人公は石原莞爾中将にする。秀才肌の陸軍官僚・東條英機と違って天才肌の戦略家石原莞爾将軍のほうが映画のヒーローに相応しいし、若者にも根強いファン層がある。確実にブームになっただろうに。

(余談3)東條らが乗る護送車に立ち塞がって割腹自殺する女性の場面がある。巨乳タレントを輩出したクラリオンガール出身の烏丸せつこ氏が演じているのだが、上着を脱ぎ捨てモンペを解くのを見て期待した男性観客は多いかもしれない。
 「残念ながら」肌は見せずに割腹したが、欧米の監督なら強いインパクトを出すために胸を肌蹴て自慢の巨乳を露にして演じさせるだろうし、制作者たちも当初はそれを考えたはずだ。でなければその役に烏丸氏を据えるはずがない。これもスポンサーたちの意向で断念させられた臭いがする。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆ 凡作

 
晴雨堂関連作品案内
スパイ・ゾルゲ [DVD] 篠田正浩
226 [DVD] 五社英雄
明日への遺言 特別版 [DVD] 小泉堯史
  
晴雨堂関連書籍案内
家族愛―東條英機とかつ子の育児日記・手紙より 東條由布子 


  

 
 blogram投票ボタン にほんブログ村 映画ブログへ
ブログランキングに参加しています。
関連記事
スポンサーサイト



コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する
映画処方箋一覧
晴雨堂が独断と偏見で処方した映画作品。
下段「日誌」項目は晴雨堂の日常雑感です。
メールフォーム
晴雨堂ミカエルに直接ご意見を仰せになりたい方は、このメールフォームを利用してください。晴雨堂のメールアドレスに送信されます。

名前:
メール:
件名:
本文:

プロフィール
↓私の愛車と野営道具を入れたリュックです。

晴雨堂ミカエル

Author:晴雨堂ミカエル
 執筆者兼管理人の詳しいプロフィールは下記の「晴雨堂ミカエルのプロフ」をクリックしてください。

晴雨堂ミカエルのプロフ

FC2カウンター
2007年10月29日設置
当ブログ注目記事ランキング
当ブログで閲覧数の多い順ランキングです。
設置2013年6月13日
ブログランキング
下記のランキングにも参加しております。ご声援ありがとうございます。
  にほんブログ村 映画ブログへblogram投票ボタン
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
映画
130位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
レビュー
64位
アクセスランキングを見る>>
タグランキング
晴雨堂の関心度が反映されています。当ブログ開設当初は「黒澤明」が一位だったのに、今は・・。
訪問者閲覧記事
最近のアクセス者が閲覧した記事を表示しています。
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム
リンク