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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「マイ・フェア・レディ」 カップルで愉快になろう〔5〕

マイ・フェア・レディ」 
実は吹き替えだった歌の部分。

 

 
【原題】MY FAIR LADY
【公開年】1964年  【制作国】亜米利加  【時間】173分  
【監督】ジョージ・キューカー
【原作】ジョージ・バーナード・ショウ
【音楽】アンドレ・プレヴィン
【脚本】アラン・ジェイ・ラーナー
【言語】イングランド語
【出演】オードリー・ヘプバーン(イライザ・ドゥーリトル)  レックス・ハリソン(ヘンリー・ヒギンズ教授)  スタンリー・ホロウェイ(アルフレッド・ドゥーリトル)  ウィルフリッド・ハイド=ホワイト(ピカリング大佐)  グラディス・クーパー(ヒギンズ夫人)  ジェレミー・ブレット(フレディ・アインスフド=ヒル)  セオドア・バイケル(ゾルタン・カーパシー)  モナ・ウォッシュボーン(ピアス夫人)  イソベル・エルソム(アインスフド=ヒル夫人)
    
【成分】笑える 楽しい ファンタジー ゴージャス 知的 切ない かわいい コミカル ラブコメ ミュージカル 20世紀初頭 ロンドン イギリス 
         
【特徴】ミュージカル嫌いの私でも楽しめたラブコメディ。軽快なテンポで違和感なく飛び出す台詞が面白い。物語中盤でオードリーが歌う「I Could Have Danced All Night」は名曲。(公開版は吹き替えになったが)後にグラナダTV制作の「シャーロック・ホームズの冒険」で探偵ホームズを原作通りのイメージで演じるジェレミー・ブレッド氏がオードリーに恋する青年貴族に扮している。
 この時代の洋画は、日本の70年代80年代の少女漫画に強い影響を与えている事を感じる。
  
【効能】ゴージャスな気分で楽しく観賞できる。
 
【副作用】3時間近い長編映画なので、今どきの映画ファンには少し辛いかもしれない。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
イギリス階層社会を描いたラブコメ。
 
 小学生の頃、NHKのラジオ番組だったと思うが、懐かしの映画音楽特集を流していて、たぶん「マイ・フェア・レディ」の中で最も有名な歌「一晩中でも踊れたのに」を聞いた。オードリー・ヘプバーン氏が教授の屋敷や寝室で「I Could Have Danced All Night」(余談1)と楽しそうに歌うオードリーを覚えている映画ファンは多いだろう。録音してよく聞いたものだ。それに私は痩身で眉毛の太い女性に憧れる少年だった。

 実はこれも素直な子供の頃に観たかった作品だったのだが、最初に映画を見たのは大人になってからだった。つまり、原作者バーナード・ショーはアイルランド人で、H・G・ウェルズと同じイギリスの社会主義者団体フェビアン協会(余談2)のメンバーで、日本のかつての左翼文化人が中国を称揚したのと同じようにソ連を讃えてブーイングを浴びた文化人である事を知ってしまったので、「マイ・フェア・レディ」はイギリス階級社会を風刺するラブコメに見えてしまうのだ。

 イギリスの階級社会は日本以上だ。言葉遣いや発音も異なる。これはたまに英王室の特番などでもしばしば取り上げられる事である。また、ビートルズの伝記などにもアイルランド系や激しいリバプール訛りや労働者階級といったキーワードが必ず出てくる。(余談3)
 そういったイギリス社会の負の部分を実に解りやすく楽しいラブコメディーという体を装いながら表現しているところが味噌である。貧しい下町の花売り娘を貴婦人へと育てられるかどうかを上流階級の教授と大佐が賭けをする。教授と花売りは七転八倒の努力で「目的」を達成するが、花売りは人間扱いされていなかったことに気付き、教授は彼女を好きになってしまっていることに気付く。2人は再び元の鞘に収まるが、以前のような飼主とペットのような関係ではなく対等な人間としての付き合いになるだろう、というところで物語が終わる。2人がコミカルなラブストーリーを積み上げていく中で互いに成長していく明るい話、その背景には歴然とした階級差別と階級間の隔絶がある。

 私は素直に映画を楽しむことができた子供の頃に観たかった。(余談4)

(余談1)初めて聞いたとき、私の耳には「アクル・ダンス・オーナー」に聞こえた。当然のことながら意味は解らない。踊りに関係の有る歌詞らしいことは推測できたが。
 初めて映画を観たとき、当然のことながらオードリー自身が歌っていると思っていたが、後に彼女の訃報のあと放送された特番で吹替えだったことを知り愕然とした。
 最近になってDVDの本人歌唱バージョンを聞くことができた。オードリー・ファンには申し訳ないが、やはり吹替えにしたのは正しい判断だった。彼女は決して音痴ではなく日本のアイドル歌手に比べれば遥かに巧いのだが、声に透明感がないように思えた。

(余談2)現労働党の母体になるのかな? 少なくとも関係は有る。過激なマルクス・レーニン主義の革命勢力とは一線をおく穏健派である。

(余談3)フレディ役のジェレミー・ブレッド氏が後に名探偵ホームズを演じる。原版を観ると、労働者服の人々は背広のホームズと会話するとき、語尾に「Sir」を付けるのが目立つ。アメリカ英語ではあまり聞かない。軍隊やウェイターからは耳にするが。

(余談4)子供の頃に観たら、青年貴族フレッドと同じようにオードリーのスレンダーなドレス姿に見惚れていただろう。
 今はラスト近くのパブの場面が気に入っている。主人公の父親が大金を手にし正装姿で黒ビールのジョッキ片手に踊りまくる。あのビールの銘柄は何だろう。アイルランドのギネスは有名だが、イングランドでは何が有名かな?


 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
【受賞】アカデミー賞(作品賞)(1964年) ゴールデン・グローブ(作品賞(コメディ/ミュージカル))(1964年) NY批評家協会賞(作品賞)(1964年)
 
晴雨堂関連作品案内
マイ・フェア・レディ サントラ
シャーロック・ホームズの冒険[完全版] DVD-SET1 ジェレミー・ブレッド主演
シャーロック・ホームズの冒険[完全版] DVD-SET2 ジェレミー・ブレッド主演
 
晴雨堂関連書籍案内
講座『マイ・フェア・レディ』―オードリーと学ぼう、英語と英国社会 米倉綽


 

 
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