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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「刑事コロンボ/別れのワイン」 知的興奮を楽しもう〔3〕 

刑事コロンボ/別れのワイン」 
酒文化に興味をもつきっかけの作品。

 

 
【原題】COLUMBO: ANY OLD PORT IN A STORM
【公開年】1973年  【制作国】亜米利加  【時間】90分  【監督】レオ・ペン
【原作】
【音楽】ディック・デ・ベネディクティス
【脚本】スタンリー・ラルフ・ロス
【言語】イングランド語
【出演】ピーター・フォークコロンボ刑事)  ドナルド・プレザンス(-)  ゲイリー・コンウェイ(-)  ジュリー・ハリス(-)
    
【成分】笑える 楽しい ゴージャス 知的 かっこいい コミカル 酒文化 サスペンス
  
【特徴】ご存知ピーター・フォーク氏の代表作「刑事コロンボ」シリーズ。ファンの間で評価が高いエピソードである。私が酒文化に関心を持つきっかけとなった作品。
 犯人はワイン業界の有名人なので、ワインについての薀蓄が出てくる。コロンボ刑事はれいによって貧乏臭い風体で緊張感無く現れて犯人の懐に飛び込み、短期間に犯人と対抗できるくらいのワイン知識を勉強して追い詰める。
  
【効能】犯人のゴージャスな雰囲気を味わい、コロンボ刑事の憎めなさに癒される。
 
【副作用】人一人が殺されているのに知的ゲームのように描写されるのは不愉快。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
愛飲家必見のサスペンス。 

 「刑事コロンボ」シリーズが日本の「警部補古畑任三郎」の原型であることは知られている。基本パターンは、社会的地位のある人物が保身のために殺人事件を起こす。それを主人公が緊張感の無い人間を装いながら犯人の警戒心を解き、着々と証拠を集められ証言の矛盾を突かれ完全犯罪が崩れていく。冒頭で犯人も犯行も観客に明らかにして、それをどのように料理して犯人を追い詰めていくかが醍醐味だ。
 所作や物腰は共通しているが、黒づくめのスーツをスタイリッシュに着こなす古畑警部補と違い、コロンボ警部補(余談1)はボサボサ頭にヨレヨレのレインコートと背広、安葉巻にオンボロ自家用車、いかにも貧乏臭い風体で、60以上のエピソードの中には危うくマイカーが廃車にされそうになったり、ホームレスと間違われたりしている。

 この「別れのワイン」では、著名なワイン業者が犯人である。ワイナリーの経営をめぐってワインに愛着を持たない営利主義の弟と喧嘩になり殺してしまう。犯人は周到な偽装工作をして完全犯罪を目論むが、それをコロンボの推理で崩されるのがおおよその筋書きだ。
 このエピソードでもコロンボの典型的な捜査スタイルが描写されていて面白い。相手は著名なワインのスペシャリストである。コロンボが対決する犯人の多くはその道のプロであり、自分自身に絶対の自信を持っている。この回の犯人はイタリア系のワイン業者だから、同じイタリア系のコロンボに親近感を抱いてしまう。コロンボの風体はいかにも貧乏で味音痴(余談2)のようなので、犯人はコロンボに対して警戒心を解き、すっかり饒舌になってワインのウンチクを披露し、コロンボはそれを丹念に聞くので犯人は余計に好感を持ってしまう。

 結局は犯人の人生の拠り所であり、犯人の生活を支えてきたワイナリーやワイン知識(余談3)が逆に完全犯罪を崩す証拠となってしまう。れいによってコロンボは短期間に犯人に対抗できるだけの専門知識を勉強し、証言の矛盾を突き、犯人の正確な利き酒の技能を逆手にとって状況証拠を突きつけ自供へと追い詰めるのだ。最後にコロンボはワイン通になっていて、犯人は労いの言葉をかける。

 このドラマを観てから、私は酒を食文化として捉えるようになった。呑むだけの酒ではなく、食事の一部として味を楽しむことを覚えたので、映画やドラマの影響力は素晴らしい。(余談4)
 

(余談1)日本語吹替えでは語呂の関係から「警部」と訳されているが、原版は「ルタナン」、警部補である。因みに警部はキャプテン、巡査部長はサージェントと称す。

(余談2)コロンボの好物は濃い味のメキシコ料理チリコンカン。えんどう豆などに少量の豚挽肉や大蒜・玉葱・トマトを加えチリ唐辛子などで煮込んだ料理。私はビールの肴によく食べる。テキサス料理との説もある。
 このエピソードでは、犯人と高級レストランで食事をする場面が事件解決の伏線となる。先にレストランに到着したコロンボは初めて口にする高級料理とワインを楽しむのだが、貧乏臭い風体からレストランの一番悪いテーブルに案内されていた。後からやってきた犯人は暖炉のそばのテーブルを見るなりレストランの支配人を叱り飛ばす。暖炉の高熱でワインが台無しになっていたからだ。コロンボが著名なワイン業者の知人とわかったレストラン側は突然低姿勢になって食事代はタダにする。

(余談3)他にも腹心の女秘書を家族のように扱ったかと思えば、「ただの従業員のくせに」と突き放したりする態度が秘書の裏切りを招くなど、犯人の高慢な気質が墓穴をほる。

(余談4)「OK牧場の決闘」ではドク・ホリデー扮するカーク・ダグラス氏が咳き込みながらショットグラスでバーボンをあおる。チャップリンの「殺人狂時代」では末期の酒がラム酒だった。名作は食事や酒がアイテムとして印象深く登場する。
 私の飲酒歴の長さがバレそうだが、「若輩」の段階で既に酒を食文化として捉え、いたずらに酔うために大量に痛飲する愚かな酒飲み生活には突入しなかったのは名作のおかげである。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
晴雨堂関連書籍案内
構想の死角・別れのワイン (1982年) (サラ・ブックス―特選・刑事コロンボ〈1〉) リチャード・レビンソン 絶版、古書流通。
  

 

 
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こんにちは。
「刑事コロンボ」には面白いエピソードが目白押しですが、「別れのワイン」は私的にはBEST3に入る作品です。
「大脱走」で偽造屋を演じたドナルド・プレザンスの頑固なワイン会社の社長はハマり役でしたね。
[ 2009/04/23 14:13 ] [ 編集 ]
コメントありがとう。
 
 私もこのエピソードは気にいっています。ワインの事を調べるようになったのも、この作品がきっかけでした。
 レストランの場面が一番好きですね。

> こんにちは。
> 「刑事コロンボ」には面白いエピソードが目白押しですが、「別れのワイン」は私的にはBEST3に入る作品です。
> 「大脱走」で偽造屋を演じたドナルド・プレザンスの頑固なワイン会社の社長はハマり役でしたね。
[ 2009/04/23 22:38 ] [ 編集 ]
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