FC2ブログ

ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「グエムル -漢江の怪物-」 社会を冷笑したい時に〔23〕 

グエムル -漢江の怪物-」 
政府や米国を小馬鹿にした痛快作。

 

 
【原題】怪物
【公開年】2006年  【制作国】大韓民国  【時間】120分  【監督】奉俊昊
【原作】
【音楽】李ビョンウ
【脚本】奉俊昊
【言語】韓国語 一部イングランド語
【出演】宋康昊(朴カンドゥ)  ピョン・ヒボン(朴ヒボン)  朴ヘイル(朴ナミル)  裵斗娜(朴ナムジュ)  コ・アソン(朴ヒョンソ)  李ジェウン(セジン)  李ドンホ(セジュ)  ヨン・ジェムン(ホームレスの男)  金レハ(黄色い服の男)  朴ノシク(影(私立探偵))  イム・ピルソン(ナミルの同級生)  
        
【成分】泣ける 笑える 悲しい スペクタクル パニック 不気味 恐怖 勇敢 絶望的 切ない かわいい コミカル 反米 政府不信 韓国 ソウル特別市
 
【特徴】韓国版ゴジラとセールスしたのは明らかに販売戦術を誤っている。もっと韓国独特の魅力をアピールしても良かったのではないか。
 怪物だけでなくアメリカも敵に回し政府も頼れない状況で、家族が一致団結して各々の特技を活かして怪物に拉致された娘を救出しようと行動する様は痛快であり感動だ。
 ところで、邦題の「グエムル」は「怪物」という意味。「怪物」という漢語の韓国語音。
  
【効能】日本人が忘れかけている家族の結束を思い出させる。
 
【副作用】ヒロインのコ・アソン氏は素晴らしい演技力なのだがエンタメ的にはイマイチ可愛くないので、パッとしない。宋康昊氏(ソン・ガンホ)の役どころがクドイ。
 韓国版ゴジラとセールスされていたため、ゴジラを冒涜されたように思えて不快感。
 
【お願い】コ・アソン氏の漢字表記、誰か教えてください。姓は「高」だと思うが。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
セールスの仕方が間違っている。

 すっかり話題が落ち着いてきたところでDVDを観た。というより、近所のレンタル屋では常に貸出中の状態が続いていたので、今まで観ることができなかったのだ。巷では酷評の嵐のようだが、けっこう人気がある。

 結論からいうと、佳作だった。ヤフー映画サイトでの評価は極めて低いが、これを基準にしたらリドリー・スコット監督の「エイリアン」も4星台(総合4.47 2007年10月現在)ではなく3星でなければならない。やはり韓国映画への反感が実像より過小に評価されている。
 また、日本製・ハリウッド製映画のパクリとの批判もあるようだが、この理屈がまかり通ると、ハリウッドのB級佳作やイタリア映画などは観れたものではないし、邦画も多くはハリウッド製や先人からのパクリだらけで鑑賞に値しなくなる。メジャー映画でも「マトリックス」などはモロに香港映画と日本アニメからの拝借だし、「ラストサムライ」は黒澤映画もどきだ。
 化学汚染によって誕生した怪物(余談1)とそれを隠蔽しようとする政府機関と孤立無援で闘うヒーロー、この組み合わせは怪物モノを制作している国ならスタンダードな雛型だから、むしろ韓国ならではの感覚やイメージや社会背景を楽しむのが賢い鑑賞方法だと思う。逆に韓国映画界が日本やハリウッドの映画ファンのツボにハマる映画を創っては、それこそ「ゴジラ」や「パトレイバー」や「エイリアン」のパクリと酷評されるであろう。

 韓国ならではの描写とは、日本よりも遥かに政府やアメリカへの不信感がある(余談2)ゆえに、傲慢で狡猾なアメリカ人科学者や政府の弱腰姿勢(余談3)や漢江河川敷に集まる千人規模のデモ隊、秀才次男の学生運動仕込みの火炎瓶攻撃、欧米主導のオリンピックに憤懣を抱くアーチェリー選手の長女、失業中なのか叔父の雑貨屋を手伝うドジでグータラな主人公、主人公たちに拘束をかけようとする政府の魔の手をかわしながら、特技を活かしさらわれた娘を助けるべく行動する描き方である。
 これらの描写は、殆ど政治には無関心で家族の絆が弱い事が社会問題となっている日本では、「これ見よがし」に映って不快感を感じてしまうかもしれない。しかし、韓国人の気性を考えたら、韓国人の間では共感を呼ぶ普通の表現だと私は思う。そして、これらの描写は、市民革命を体験し家族愛を意識する倫理観のヨーロッパでもウケるだろう。
 それから痛快だったのは、CGや特撮関係はハリウッドに外注しておきながら、アメリカ人を悪の権化に描く手並みは素晴らしい。気兼ねしやすい日本人にはそんな思い切った処置はなかなかできない。

 ただ、日本で酷評される理由は単に韓流バッシングだけではない。一つは前宣伝で「グエルム」を「ゴジラ」のような怪獣映画としてセールスしたが、これは誤った方法であり、日本の特撮ファンの反感を買いやすく垣根を高くしてしまった。日本製「怪獣映画」は世界に冠たる文化であると自負しており、ハリウッド製のリアルな恐竜の動きをする「ゴジラ」も不評だったほどだ。
 決定的なのは、日本の「ゴジラ」や、日本でウケた「エイリアン」や「ターミネーター」などでは主演者以上に存在感のある真の「主役」が怪物やアンドロイドであり、主演俳優たちは事実上「主役」である怪物たちの助演に過ぎないのだ。「グエムル」では明らかに「主役」も「主演」も長男の娘であり、娘を助けようと闘う家族たちである。怪物のデザイン自体は申し分なかったにも関わらず印象が薄いと感じたレビュアーが多かったのは、多くの日本人ファンにとって「主役」でない怪物は愛着がもてないのである。(余談4)
 怪獣映画としてではなく、家族愛がテーマである事をさり気なく紹介しながら、「ホラー映画」として売るべきだった。
 
(余談1)古くは核兵器で暴れ出した恐竜「ゴジラ」、医薬品が原因で怪物と化した「悪魔の赤ちゃん」、産業廃棄物で怪物と化した人間の「毒毒モンスター」など。

(余談2)現在問題となっている年金や政治献金不正など、良い悪いは別にして韓国ならば暴動が起こって当然の事件である。

(余談3)日本でも「ゴジラ(いつのゴジラか忘れた)」に登場する自衛隊をあまりにも弱く描写されたため、自衛隊から「これでは税金ドロボーだ。もう少しマシな扱いをしてくれ」とのクレームがついた。やはり反戦反核の象徴として誕生した「ゴジラ」だから、政府批判の伝統は受け継いでいる?
 
 韓国は日本よりも不平等な安保条約をアメリカと結んでおり、作中で登場するアメリカ人の態度はそれを表現している。

(余談4)北朝鮮の「ゴジラ」といわれている「プルガサリ」は日本の特撮ファンの間で評価が高い。何しろ、中野昭慶氏やスーツアクター薩摩剣八郎氏などゴジラを手がけた東宝特撮チームが招かれて制作陣に加わったのだから、これはまさに北朝鮮版ゴジラといっても過言ではない。怪獣プルガサリの動きはゴジラを演じた薩摩剣八郎氏が怪獣スーツの中に入っているのでゴジラそのもの。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
【受賞】アジア・フィルム・アワード最優秀作品賞 ファンタスポルト国際ファンタジー映画賞最優秀監督賞 シッチェス・カタロニア国際映画祭最優秀視覚効果賞
  
晴雨堂関連作品案内
グエムル-漢江の怪物 韓国映画OST (韓国盤) サントラ
プルガサリ~伝説の大怪獣~ [DVD]北朝鮮の特撮映画


 

 
 blogram投票ボタン にほんブログ村 映画ブログへ
ブログランキングに参加しています。
関連記事
スポンサーサイト



家族の為におっきい顔の主人公が、怪物と国とも対決する・・・ってトコが韓国的なんでしょうかね。
[ 2009/04/25 23:48 ] [ 編集 ]
嵐なんですか!
傑作!!とは言いませんが、なかなかの技の効いた佳作だとは思います。
いかにも韓国らしいあたりって、アレルギーの人もいますからね。
[ 2010/01/12 16:11 ] [ 編集 ]
sakurai氏
 
 怪物が「エイリアン」や「ターミネーター」や「ゴジラ」「ガメラ」のように、もっと魅力的なキャラクターだったら傑作になったでしょう。あの手の作品は「怪物」が主役でないと駄目なんですよ。

> 嵐なんですか!
> 傑作!!とは言いませんが、なかなかの技の効いた佳作だとは思います。
> いかにも韓国らしいあたりって、アレルギーの人もいますからね。
 
 観ないうちから貶す人がいますから。興味深いことに、韓国・中国・左翼日本人の「反日」には敏感に拒絶反応を示すのに、アメリカやオーストラリアの「反日」には鈍感の傾向があります。「パールハーバー」や「オーストラリア」は、かなり悪質な反日映画なんですが韓国映画ほどバッシングは無い。
 
 バランスが悪いですよ。
[ 2010/01/13 06:46 ] [ 編集 ]
コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する
この記事のトラックバックURL
http://seiudomichael.blog103.fc2.com/tb.php/372-7554faea

久しぶりの韓国映画。 ・・・といっても異色の怪物モノ。 韓国では大ヒットしたらしいけど、怪獣王国ニッポンではどうかなっ?
社会派の怪獣映画。
[2010/01/08 17:56] Akira's VOICE
すばらしい。 監督第二作にして、「殺人の追憶」という殿堂級の傑作を物にしたポン・ジュノが、何と「怪獣映画」をやると聞いて以来、観たく...
全くノーマークだった韓国製モンスターパニック映画『グエムル 漢江の怪物』を、ニューヨークタイムズの大げさな評に釣られて観てきました。 ★★★ 観終わって、ニューヨークタイムズの評は何を指して言っているのか、いくら考えてもわからなかったのですが…。昔の香港...
[2010/01/09 01:08] そーれりぽーと
----これって確か『殺人の追憶』の ポン・ジュノ監督が作った韓国映画なんだよね。 「うん。一作ごとに目を見張る成長を遂げているだけに ぼくの期待も大きかった。 カンヌはもちろんのこと、 周囲の声も絶賛一色だったしね」 ----で、どうだったの? 「いやあ。これは語?...
[2010/01/09 10:02] ラムの大通り
面白かったァ。けっこう序盤から笑えたんだけど客席の反応イマイチなんですよ。自分だけウケてるみたいなとこもあって戸惑ったんだけど笑うの遠慮してると楽しめないので開き直りましたけど、もしかしてみなさんビミョーなの? +++ちょいあらすじ
[2010/01/09 10:24] カノンな日々
ヨン様出演モノや"韓流"にはついていってないけど、 韓国映画は意外とけっこう観てるのです♪♪ この作品、カンヌ映画祭では熱狂、韓国で大ヒットを記録したという。その前評判と、 世間での高評価ほどではないけどなかなか面白かった、 『殺人の追憶』      の36歳...
韓国のスピルバーグと讃えられる、弱冠36歳の奇才ポン・ジュノ監督が、驚異のパニック・エンタテインメントで世界に挑む!!。 韓国の人々のオアシス、漢江(ハンガン)に突如出現した怪物を巡る事件に肉迫するパニック映画。怪物に娘を奪われた一家の奮闘を描く。 情...
 『お父さん、助けて!』  コチラの「グエムル-漢江(ハンガン)の怪物-」は、9/2公開になる韓国のパニック・ホラーなんですが、試写会で観て来ましたぁ~♪想像してたよりも割とコミカルなシーンが多かったです。  カンヌ映画祭で上映され上映作品の中で一番面白?...
[2010/01/11 11:17] ☆彡映画鑑賞日記☆彡
正体不明の怪物がソウルのど真ん中に出現!
[2010/01/12 14:56] ひるめし。
ソウルの街中を流れる大河~漢江(ハンガン)。ハンガンと聞くと、80年代の韓国の驚異の経済成長、『ハンガンの奇跡』がすぐに思い浮かぶのは・・・年だ。おまけに橋の崩落というショッキングな事件もしっかと覚えている。デパートが崩壊したり、ととんでもの事件が続い...
[2010/01/12 16:09] 迷宮映画館
クソ、ムカつくぜこの映画! VFXは『ロード・オブ・ザ・リング』のWETAデジタルが手掛け、韓国では新記録を次々打ち立てる大ヒット。さらにカンヌでも絶賛され世界視野でも順風満帆。何よりこの映画面白い。怪獣先進国・日本の立場が無いじゃないか! 韓国でまさ...
[2010/01/14 07:05] 5125年映画の旅
映画処方箋一覧
晴雨堂が独断と偏見で処方した映画作品。
下段「日誌」項目は晴雨堂の日常雑感です。
メールフォーム
晴雨堂ミカエルに直接ご意見を仰せになりたい方は、このメールフォームを利用してください。晴雨堂のメールアドレスに送信されます。

名前:
メール:
件名:
本文:

プロフィール
↓私の愛車と野営道具を入れたリュックです。

晴雨堂ミカエル

Author:晴雨堂ミカエル
 執筆者兼管理人の詳しいプロフィールは下記の「晴雨堂ミカエルのプロフ」をクリックしてください。

晴雨堂ミカエルのプロフ

FC2カウンター
2007年10月29日設置
当ブログ注目記事ランキング
当ブログで閲覧数の多い順ランキングです。
設置2013年6月13日
ブログランキング
下記のランキングにも参加しております。ご声援ありがとうございます。
  にほんブログ村 映画ブログへblogram投票ボタン
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
映画
124位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
レビュー
64位
アクセスランキングを見る>>
タグランキング
晴雨堂の関心度が反映されています。当ブログ開設当初は「黒澤明」が一位だったのに、今は・・。
訪問者閲覧記事
最近のアクセス者が閲覧した記事を表示しています。
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム
リンク