「2001年宇宙の旅」-TV放映時、淀川長治氏興奮す。 晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆☆ 金字塔 【寸評】アーサー・C・クラーク氏と
スタンリー・キューブリック監督の2人が放つSF映画の金字塔。
【効能】特撮に魅了。「未来」の宇宙旅行を疑似体験。
【副作用】特撮には激しい光線を使う場面があり、気分が悪くなることもあるかもしれない。
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この映画がTVで放映されたのは、私が高校一年生の頃だったと思う。創作仲間の間ではタルコフスキー監督の「惑星ソラリス」とともにSF映画の双璧を成す大作だった。映画ファンの間でも同様の評価だろう。当時の映画番組「日曜洋画劇場」では珍しく少し前から放送予告宣伝をしており、創作仲間だけでなく級友の間でも話題沸騰だったように思う。
放送当日、番組解説はあの淀川長治氏だった。いつもの語り口ではなく、妙に興奮している様子で「さあ、皆さん。やっと、やっと、待ちに待ったあの『2001年宇宙の旅』を・・」と解説者の仕事としてというより、1人の映画ファンとして私たちに興奮と喜びを伝えようとしているみたいだった。
実をいうと、私はそれほど「2001年・・」を凄い映画だとは思っていなかった。既に早川書房から出ている文庫は持っていたし、当時のカバーイラストはスペースポッドを操縦するボーマン船長の写真が印刷されていたのだが、それほど良い特撮とも思えなかった。
周囲の創作仲間や級友たちのソワソワした態度、淀川氏のいつにない興奮ぶりから、きっと凄い映画なのだろうという期待を抱いて観た。しかしながらファンには申し訳ないが、私は頭が悪いのでサッパリ訳が判らなかった。
謎の黒い石板状物体モノリスの影響で急速に知能を得たヒトザルが、動物の大腿骨らしきものを棍棒にしてライバルの猿を殴り殺したり、狩をして肉食を始める様になり、空へ向かって投げた棍棒が宇宙船へと変化す描写は、科学の発展は凶器からを比喩しているようだ。
ヒトザルを人間へと進化させたモノリスが月面で発見され調査がはじまる訳だが、BGMは
リヒャルト・シュトラウス「
ツァラトゥストラはかく語りき」と
ヨハン・シュトラウス『
美しく青きドナウ』、私は素直に作曲をケチったのではないかと疑った。
そして、結局のところ物語自体は何が言いたかったのかが解らなかった。モノリスは一体なんだったのか? ボーマン船長に調査内容を知らせず、冬眠中の科学者やコンピューターにだけ教えることから、人間不信と科学技術依存への警鐘なのか? よく解らないと思った映画ファンは私だけでなく大勢いたはずだ。
ただ、特撮技術はやはり目を見張る。文庫本表紙印刷ではチャチに見えたが、動く映像で観ると当時の質の悪いフィルムでよくこれだけクリアでリアルでスタイリッシュな映像を作成したものだ。まさに職人技である。
ボーマン船長役の
キア・デュリア氏の知的で静かな熱演も素晴らしい。舞台劇ほどではないが映画でも多少は感情表現がオーバーになる。ボーマンのように感情の起伏をあまり見せずに感情を表すのは難しいのだ。(余談1)
個人的には、物語で魅せるのは「惑星ソラリス」、特撮で魅せるのは「2001年・・」と評価している。それは高校時代も現在も変わっていない。変わったのは、当時は馬鹿にされるのが嫌で知ったかぶりをしていたが、今は堂々と「わけ解らん」という。
(余談1)ハルによって宇宙船から締め出されたとき、スペースポッドのボーマンが強引にハッチを開いて入る場面がある。あれは科学考証上画期的で正しい描写だ。
真空状態では急激に血液が沸騰して死ぬというのが現在も定説だが、すぐにはならない。数秒程度なら皮膚で密閉されて体内の気圧は維持されるし、何より地上との気圧差はたった一気圧、深海からいきなり地上に出るのとは違うのだ。
撮影は無重力訓練に使われる飛行機を使用しているのだろうか? 実際に爆破シーンを撮って、一発勝負でデュリア氏は演技しているようだ。静寂の中で爆発がおき、ハッチを閉めると爆発音がなるのもリアルだ。それに対して「2010」や「アポロ13」は宇宙空間での効果音が多すぎる。
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この映画がTVで放映されたのは、私が高校一年生の頃だったと思う。創作仲間の間ではタルコフスキー監督の「惑星ソラリス」とともにSF映画の双璧を成す大作だった。映画ファンの間でも同様の評価だろう。当時の映画番組「日曜洋画劇場」では珍しく少し前から放送予告宣伝をしており、創作仲間だけでなく級友の間でも話題沸騰だったように思う。
放送当日、番組解説はあの淀川長治氏だった。いつもの語り口ではなく、妙に興奮している様子で「さあ、皆さん。やっと、やっと、待ちに待ったあの『2001年宇宙の旅』を・・」と解説者の仕事としてというより、1人の映画ファンとして私たちに興奮と喜びを伝えようとしているみたいだった。
実をいうと、私はそれほど「2001年・・」を凄い映画だとは思っていなかった。既に早川書房から出ている文庫は持っていたし、当時のカバーイラストはスペースポッドを操縦するボーマン船長の写真が印刷されていたのだが、それほど良い特撮とも思えなかった。
周囲の創作仲間や級友たちのソワソワした態度、淀川氏のいつにない興奮ぶりから、きっと凄い映画なのだろうという期待を抱いて観た。しかしながらファンには申し訳ないが、私は頭が悪いのでサッパリ訳が判らなかった。
謎の黒い石板状物体モノリスの影響で急速に知能を得たヒトザルが、動物の大腿骨らしきものを棍棒にしてライバルの猿を殴り殺したり、狩をして肉食を始める様になり、空へ向かって投げた棍棒が宇宙船へと変化す描写は、科学の発展は凶器からを比喩しているようだ。
ヒトザルを人間へと進化させたモノリスが月面で発見され調査がはじまる訳だが、BGMは
リヒャルト・シュトラウス「
ツァラトゥストラはかく語りき」と
ヨハン・シュトラウス『
美しく青きドナウ』、私は素直に作曲をケチったのではないかと疑った。
そして、結局のところ物語自体は何が言いたかったのかが解らなかった。モノリスは一体なんだったのか? ボーマン船長に調査内容を知らせず、冬眠中の科学者やコンピューターにだけ教えることから、人間不信と科学技術依存への警鐘なのか? よく解らないと思った映画ファンは私だけでなく大勢いたはずだ。
ただ、特撮技術はやはり目を見張る。文庫本表紙印刷ではチャチに見えたが、動く映像で観ると当時の質の悪いフィルムでよくこれだけクリアでリアルでスタイリッシュな映像を作成したものだ。まさに職人技である。
ボーマン船長役の
キア・デュリア氏の知的で静かな熱演も素晴らしい。舞台劇ほどではないが映画でも多少は感情表現がオーバーになる。ボーマンのように感情の起伏をあまり見せずに感情を表すのは難しいのだ。(余談1)
個人的には、物語で魅せるのは「惑星ソラリス」、特撮で魅せるのは「2001年・・」と評価している。それは高校時代も現在も変わっていない。変わったのは、当時は馬鹿にされるのが嫌で知ったかぶりをしていたが、今は堂々と「わけ解らん」という。
(余談1)ハルによって宇宙船から締め出されたとき、スペースポッドのボーマンが強引にハッチを開いて入る場面がある。あれは科学考証上画期的で正しい描写だ。
真空状態では急激に血液が沸騰して死ぬというのが現在も定説だが、すぐにはならない。数秒程度なら皮膚で密閉されて体内の気圧は維持されるし、何より地上との気圧差はたった一気圧、深海からいきなり地上に出るのとは違うのだ。
撮影は無重力訓練に使われる飛行機を使用しているのだろうか? 実際に爆破シーンを撮って、一発勝負でデュリア氏は演技しているようだ。静寂の中で爆発がおき、ハッチを閉めると爆発音がなるのもリアルだ。それに対して「2010」や「アポロ13」は宇宙空間での効果音が多すぎる。
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