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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「ポストマン」 社会を冷笑したい時に〔24〕 

ポストマン」 幻想のハルマゲドン
 


【原題】THE POSTMAN
【公開年】1997年  【制作国】亜米利加  【時間】177分  
【監督】ケビン・コスナー
【原案】デイヴィッド・ブリン
【音楽】ジェームズ・ニュートン・ハワード
【脚本】ブライアン・ヘルゲランド エリック・ロス
【言語】イングランド語
【出演】ケビン・コスナーポストマン)  オリヴィア・ウィリアムズ(アビー)  ウィル・パットン(ベスレヘム将軍)  ラレンズ・テイト(フォード・リンカーン・マーキュリー)  ダニエル・フォン・バーゲン(ブリスコー保安官)  ジェームズ・ルッソ(アイダホ)  トム・ペティ(ブリッジシティ市長)  ショーン・ハトシー(ビリー)  ジョヴァンニ・リビシ(バンディット)  ライアン・ハースト(エディ・マーチ)  

【成分】笑える ファンタジー スペクタクル ロマンチック パニック 勇敢 かっこいい コミカル ハルマゲドン アメリカ 2013年

【特徴】ケビン・コスナーが描くハルマゲドン浪漫。時代設定は公開当時近未来だった2013年。文明崩壊後の世界が舞台。

 嘘つきハッタリ屋の軟弱人間が伝説の英雄になっていく「壮大なスペクタクル」だ。世にいる多くの英傑たちも、ひょっとしたら実像は本作の主人公みたいなもので、実際は事務局長役の仲間や女房に助けられて格好がついているのでは、と思わせるほどリアルな描写であり、駄作との評判ではあるが意外に深い。

 なお、デイヴィッド・ブリン氏の原作は社会心理学的にハードなSF小説らしいが、ケビン・コスナー氏の趣味?に大幅改編されているため、小説とは事実上別作品の体である。したがって、ブリン氏は「原作」ではなく「原案」の立場としたほうが適切だろう。

【効能】ハルマゲドンにロマンを感じるマニアには堪らない感動場面の連続。

【副作用】ケビン・コスナー氏のナルシスト的趣味を延々3時間見せられる事に精神的苦痛を感じるかも。

下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
ケビン・コスナーの趣味の世界?

 原作は優れた社会心理学的なハードSF小説らしいが読んでいない。少なくとも映画はSF映画ではなく、戦争や天変地異で文明社会が崩壊し無秩序で混沌とした荒廃の世界が広がるハルマゲドン物・世紀末モノと呼ばれる作品だ。古くからあるジャンルだが、日本では70年代から80年代にかけて盛んに小説や漫画が発表された。
 具体的には草刈正雄氏主演の「復活の日」、原哲夫氏の「北斗の拳」、さいとうたかを氏の「サバイバル」が代表的だ。洋画ではメル・ギブソン氏の「マッドマックス」やジャン・レノ氏が悪役の「最後の戦争」などがあげられる。

 さてこの映画、ハルマゲドン物が大好きなマニアが金を湯水のごとく投入して自分が好きな世界を映画化した、そんな感じがする。映画はハルマゲドンマニアが空想しそうな憧れの場面が盛り沢山だ。
 馬を相棒に宛ても無く荒野を放浪する孤独な旅人、誰も居ない廃墟で馬を相手に独り言を語りながら物思いに耽る。このシチュエーションは冒険活劇に共通する主人公像だ。

 聞きかじった浅はかな知識でハッタリをかましデタラメな寸劇をやって村人をたまに騙し飯にありつく生活、この嘘つき・ハッタリの才能は後に彼を英雄に仕立て上げる。
 山賊集団を率いる悪の頭目によってむりやり兵隊にされ過酷な軍事訓練をやらされる。ここで学んだ戦いの技術は後の英雄伝説を裏付ける武器になる。
 隙を見て山賊集団から脱走した主人公はたまたま白骨化した郵便配達人の遺体から制服と古い未配達の手紙を拾い(余談1)「ポストマン」に化け、古い手紙をネタに懐かしの文明と政府に飢えていた村人を騙す。ここで、彼の才能が開花される。村人たちは歓迎しハッタリ屋の大道芸人に過ぎない主人公に風呂・洗濯・食事・セックスの相手を提供し、さらに主人公を過大に評価する村人の中には部下に志願する者まで出てくる。
 この志願者は新興の宗教団体や政治団体には必ずいるタイプのオルガナイザーで、「事務局長」役の才能を発揮させて主人公のハッタリを具現化させ主人公をさらに強大偉大に魅せる働きをする。

 その場しのぎの二枚舌と嘘八百と逃げ腰で切り抜け、周囲の過大評価と勘違いに救われ、村々の支持と期待を集める存在へとなり、それら村々を荒らしまわる事で生計を立てている山賊軍団にとっても脅威になる。
 ラストは、見た目は合衆国の星条旗を軍旗に掲げた立派な軍隊に見えるほどの軍勢を率いるポストマンが山賊軍団と対峙、山賊の首領とタイマン勝負して勝ち、名実ともに英雄として讃えられ、神格化された「郵便配達人」は銅像になる。

 長大な駄作と扱き下ろされ、前振りが長すぎるとか物語は半分くらいカットできるなどと批判されているが、ハルマゲドンにロマンを感じるマニアは、切りたくない場面ばかりなのだろう。一つ一つが感動につながる伏線や味わいのある場面なのでボツにすることなどトンデモないのだ。絶対に作中に入れたい場面をつなぎ合わせた結果、3時間という近年稀に見る超大作になったのであり、またこの手の世界をたっぷりと3時間かけてどうしても描きたかったに違いない。

 近頃の映画はテンポが大事で、映画館での興行などを考えれば2時間程度の映画を「生産」するほうが消費者のニーズに合致する。それはケビン・コスナー氏とて解っているはずだ。それを敢えてやったのは、それだけ「愛と暴力」が支配するハルマゲドン世界が大好きでたまらないのだ。

 ハルマゲドン世界が大好きな人にとっては5星映画として堪能できるだろう。私は特に大好きではないが、素晴らしい駄作だとは思う。
 「マッドマックス」のマックスや「北斗の拳」のケンシロウのような完全無敵のヒーローよりも、虚構の英雄ポストマンのほうが妙にリアルで人間臭い。現実のヒーローも多くは「ポストマン」的で、有能なヒロインや事務局長役の仲間によって支えられているのだから。

(余談1)白骨化しているということは、少なくとも半年以上は経過している。車の痛み具合や未配達の手紙の内容から十数年は放置されたままの状態だ。なのにポケットに入っていたジッポライターは火がつく。ジッポに使われているオイルは極めて揮発性が高いので、いくら保存状態がよくても蒸発して火がつかなくなっているはずだと思うのだが。
 

 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆ 可
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
【受賞】第18回ゴールデンラズベリー賞 最低作品賞 最低監督賞 最低脚本賞 最低主演男優賞 最低オリジナル歌曲賞  第20回ゴールデンラズベリー賞 1990年代最低作品賞
  

 
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