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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「世界が燃えつきる日」 孤独を楽しむ時に〔29〕 

世界が燃えつきる日」 ハルマゲドン浪漫
 

世界が燃えつきる日 特別版
 
【原題】SURVIVAL RUN/DAMNATION ALLEY
【公開年】1977年  【制作国】亜米利加  【時間】91分  
【監督】ジャック・スマイト
【原作】ロジャー・ゼラズニイ
【音楽】ジェリー・ゴールドスミス
【脚本】ルーカス・ヘラー アラン・シャープ
【言語】イングランド語       
【出演】ジョージ・ペパード(ユージン・デントン少佐)  ジャン=マイケル・ヴィンセント(タナー)  ポール・ウィンフィールド(キーガン)  ドミニク・サンダ(ジャニス)  ジャッキー・アール・ヘイリー(ビリー)  キップ・ニーヴン(トム・ペリー)  ロバート・ドナー(-)
      
【成分】楽しい ファンタジー ロマンチック 不思議 パニック 勇敢 セクシー かわいい かっこいい ハルマゲドン 核戦争 終末 ロードムービー
  
【特徴】ランドマスターという砂漠用トラックのデザインと、毒々しいオーロラが評判。深夜に観ると映えるかもしれない。
 フランスの名優ドミニク・サンダ氏がヒロインとして出演している事でも話題になった。
     
【効能】手軽な冒険旅行と有名女優に心ウキウキ。
 
【副作用】核戦争を楽観視する危険があるトンデモ映画。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
特殊車両ランドマスターがマニアにウケる。

 どう観てもB級以下の映画としか思えない。しかし映画通の知人の話によれば投下資本はなかなかの額だったらしい。俳優のギャラで予算の大半を使ってしまったのか、そう思われても仕方がない。
 というのも、けっこう名優揃いだからである。主演は「ティファニーで朝食を」「特攻野郎Aチーム」のジョージ・ペパード氏。「戦争の嵐」「エアーウルフ」で日本でも御馴染みになるジャン・マイケル・ビンセント氏、この頃は刈り上げ頭ではなく長髪が似合う若者(といっても齢30は過ぎているが)で出演。「暗殺の森」などで大スターのドミニク・サンダ氏がヒロイン。これら顔触れと映画内容のバランスを考えれば、人件費が予算の大半を占めているのではと私でなくても思う。

 さて、その映画内容だが、一言でいうと「ハルマゲドン浪漫」あたりが相応しいか。最終戦争後の文明が崩壊した近未来の世界が舞台となっているところがケビン・コスナー氏の「ポストマン」に共通しているが、この映画の場合は明確に核戦争で人類の大半が滅亡し地軸がずれて地球環境が著しく激変する様を冒頭で描写しているのである。核戦争というものを極めて楽天的かつ美しく描きすぎている点がアメリカらしいトンデモ無知である。磁気嵐のせいなのか空は絶えずオーロラで美しく光っている合成映像が印象的だ。

 主人公たちはアメリカ空軍の軍人たちである。生存者からの電波をキャッチしたので特殊装甲車ランドマスター(余談1)2台に便乗して荒涼とした砂漠を旅する。このくだりが誠に牧歌的で楽天的であり、登場人物たちは荒廃した地球を旅することを楽しんでいるかのような描写、核を楽観的に考えるアメリカ人ならではの場面だ。
 道中、磁気嵐・人喰いゴキブリの大群・放射能で変形した人間が襲ってくるが、冒険の数々を彩る添え物に過ぎない。血がわき肉おどるハラハラ感を観客に抱かせないまま登場人物たちは難なく障害をクリアする。もちろん、それら障害をクリアする際に旅のメンバーのうち誰かは死亡したり危険な目にあっている。
 磁気嵐ではペパード氏の副官が脇役らしくあっけなく死亡、ところが無傷で清潔そうなセクシー美女が脈絡なく紅一点の生存者として登場し旅のメンバーに加わり副官の穴を埋める。ゴキブリの大群ではビンセント氏の相棒が喰い殺される。ところが程なく廃屋で生き延びていた長髪の少年が登場して相棒に納まる。放射能のせいなのか醜く変形した凶暴な男たちに襲われたときは、危うくヒロインがてごめにされそうなところをビンセント氏の機転とランドマスターの高性能兵器で難なく殲滅。
 
 ラストは核戦争前と変わりない青い空青い海の風光明媚な西海岸の町に到着し、戦争前と変わりない普通のTシャツ姿の市民たちが大勢出てきて歓迎し、メンテナンスの行き届いた舗装道路を主人公たちは喜び勇んで疾走する。核戦争によって地球は滅茶苦茶になったのではないのか? 今までの陳腐ながらも一応は悲惨で異常な光景は一体なんだったのか? と呆気にとられるラストだった。実にご都合主義お約束場面満載のお気楽物語。これを観ると、ケビン・コスナー氏の「ポストマン」はまだ重厚な文藝作品であることを感じさせる。
 
 ただラストシーンで気に入っている構図がある。ヒロインのドミニク・サンダ氏(余談2)はペパード氏と到着を喜び合い、ビンセント氏は少年とバイク二人乗りで生存者の町を笑顔で走る場面だ。
 ヒロインは若いイケメンの役どころビンセント氏と引っ付くと思いきや、どちらかといえばロマンス・グレー的渋い親父ペパード氏の横に立っているほうが似合っている。もともと成熟した色気のドミニク・サンダ氏なので童顔で兄貴キャラのビンセント氏とは釣り合わない。少年の兄貴分としてやんちゃ小僧してるほうがしっくりくる。これは妙に納得した。

(余談1)メカのことはよく解らないが、普通タイヤは車の大きさに合わせて太さを変えている。トラックは負担のかかる後輪を太いタイヤ2つを重ねている。ランドマスターの車輪は車輪一組をタイヤ3個を三角に組んでいる、というのは工学的に正しいのだろうか? 荒地でも対応できるという設定らしいが。

(余談2)ドミニク・サンダ氏は当時「1900」や「ルー・サロメ」「沈黙の官能」など大作出演が続いていて超多忙なはずなのに、どういった動機でこのB級SFハルマゲドン浪漫に出演したのか興味がある。気分転換なのだろうか?



晴雨堂スタンダード評価
☆☆ 可
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆ 凡作



 

 
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