FC2ブログ

ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「復活の日」 孤独を楽しむ時に〔30〕 

復活の日」 終末モノの佳作。


復活の日 ブルーレイ [Blu-ray]
復活の日 角川映画 THE BEST [DVD]

【原題】
【英題】Virus
【公開年】1980年  【制作国】日本国  【時間】158分  
【監督】深作欣二
【製作】角川春樹
【原作】小松左京
【音楽】羽田健太郎 、テオ・マセロ
【脚本】高田宏治 グレゴリー・ナップ 深作欣二
【言語】日本語 イングランド語 一部ロシア語 ドイツ語       
【出演】草刈正雄(吉住周三(地震学者))  渡瀬恒彦(辰野保夫)  夏木勲(中西)  千葉真一(山内)  森田健作(真沢隆司)  永島敏行(松尾明正)  ジョージ・ケネディ(コンウェイ(アメリカ提督))  ステファニー・フォークナー(サラ・べーカー)  オリヴィア・ハッセー(マリト)  グレン・フォード(リチャードソン(アメリカ大統領))  ロバート・ヴォーン(バークレイ(アメリカ上院議員))  チャック・コナーズ(マクラウド(潜水艦ネーレイド艦長))  多岐川裕美(浅見則子)  緒形拳(土屋教授)  ボー・スヴェンソン(南極アメリカ隊カーター少佐)  エドワード・ジェームズ・オルモス(ロペス大尉)  丘みつ子(辰野の妻)  中原早苗(病院の母親)  ヘンリー・シルヴァ(ガーランド統参議長)  セシル・リンダ(ラトウール博士)

【成分】泣ける 悲しい スペクタクル パニック 不気味 恐怖 勇敢 知的 絶望的 切ない かっこいい パイオハザード 終末モノ ハルマゲドン 南極

【特徴】バイオハザード物・終末ハルマゲドン物である。当時の邦画としては多額の資本を投入し、世界市場を睨んで渾身の布陣で臨んだ角川映画の野心作である。
 謎の伝染病が蔓延して社会が崩壊していく様をジワジワ丁寧に描いている。処理しきれなくなった遺体を一箇所に集めて自衛隊が火炎放射器で焼く場面は邦画らしからぬリアルな描写だ。

 本作公開直後だったか直前だったか忘れたが、ヒロインとして出演しただけでも話題をさらった著名なハリウッド女優オリヴィア・ハッセー氏が布施明氏と結婚したことで反響を呼んだ。
 また南極の日本隊隊員役に角川春樹氏がカメオ出演している。

【効能】前半のパニックとはうって変わって、後半は静寂が漂う。深夜の静寂を楽しむに効果的。

【副作用】設定に無理があり、国際情勢を単純に見るところが引っかかる。

下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
「気分はハリウッド」と騒がれた角川映画。

 映画館で「戦国自衛隊」を観ていたときだったろうか、短い予告編が流れた。静けさが漂う南極の氷山、ふいにモールス信号が鳴り響き、大きなゴシック体で「復活の日」とタイトルが紹介される。南極に駐在している各国の隊員たちを残して人類が滅亡する設定だった。虚しく鳴り響くモールス信号に強く惹かれた。

 当時はハルマゲドン物・終末モノが流行っていて、漫画もマニアックなところで多数刊行されていた。メジャーでは、さいとうたかを氏の「サバイバル」や、宮崎駿氏が手掛けた「未来少年コナン」、少し後で発表された武論尊氏の「北斗の拳」なども該当する。
 「復活の日」公開当時は、ちょうど「ノストラダムスの大予言」で著名な五島勉氏が第2弾を発表していた時期とも重なっており、ヒロインを演じたオリビア・ハッセー氏が日本の芸能人布施明氏と結婚するニュースとも重なっていて、興行的に売れる要素はかなりあった。しかし後で聞いた話によると、制作費と宣伝費に予算をつぎ込んで儲けは少なかったらしい。

 映画を観る前に原作を取り寄せて読んだ。初春から夏に向けて謎の細菌が次第に蔓延していき、人が次々と謎の病気で倒れてライフラインに支障が生じ、遺体の処置が間に合わなくなって町には腐臭が漂い始める過程が非常に丁寧に描写されていた。映画でもこの部分には比較的時間が割かれていて、特に処理し切れなかった遺体を自衛隊員たちが集めて火炎放射器で焼却している場面は、邦画には珍しく生々しい光景である。

 主人公の恋人役で看護婦を演じる多岐川裕美氏が、あまりの惨状に泣き出し、医師役の緒形拳氏が疲れきった表情で微笑みながら「どんな事にも必ず終わりはあるよ」と言い、恐い表情に変わって「ただ、どんな終わり方をするかだ」と呟くのは原作に無い名場面だ。
 主人公が南極で新しい恋人をみつけ、この役をオリビア・ハッセー氏が演じているのだが、原作では還暦前のオバサンなので、このキャスティングは妥当だ。主人公を草刈正雄氏が熱演するのだが、オリビアと向き合う横からのアングルが両者の端正な顔立ちを引き立たせて良い絵になっている。
 ラスト、主人公が無人のアメリカ大陸を北から南へ徒歩で縦走する場面があるが、原作では字数を割かずにさらりと済ませているのに対し、映画では大々的にロケーションを敢行して丁寧に描写していた。草刈氏の風貌が次第にボロをまとった行者のような姿になっていくのも味わいがある。(余談1)

 出演者は当時第一線のスター俳優たちが集められ、海外からも名の知れた俳優が起用されて、邦画でありながら気分はハリウッドと騒がれた。(余談2)世界各国の南極基地の代表が集まって善後策を話し合う会議はまさにミニ国連のようで、騒然とした雰囲気は邦画には珍しく外国映画のような迫力があった。
 ただ、残念なのはアメリカ隊の代表が議長になりソ連隊は副議長というのが説得力が無い。もし実際にそのようなシチュエーションになったら共同代表でないと収まりがつかないと思うのだが。

 終末モノとしては、完成度が高い佳作ではないだろうか。当時の角川映画の意気込みが伝わる作品であり、当時の角川春樹氏は後の「天と地と」などに見られる自己満足は無く、海外の監督を招聘しようとするなど、冷静に世界市場を睨んだ対策をとろうとしていた節がある。
  ジャニス・イアン氏が歌うテーマ曲も大ヒットだったし、興行成績が良いと思っていた「復活の日」だったが、宣伝費等の投資が売り上げを圧迫していたらしく、これ以降の角川映画は値入率を上げられる薬師丸ひろ子氏や原田知世氏らが活躍するアイドル映画を生産する方向へ転換した。

(余談1)北米に地震が起こり、無人となったアメリカのミサイル基地がソ連の攻撃と判断してソ連に向けミサイルを発射し、応戦するソ連側のミサイルの一部が南極に向いているかもしれない、ということで発射を阻止するべく草刈正雄氏らは中枢管制室があるワシントンへと急行する展開がある。
 原作執筆当時、小松左京氏はこの地震について調べていくうちに「日本沈没」の着想に至ったそうである。

(余談2)千葉真一氏が南極隊の医師役で出演。英語の台詞が日本訛りまるだして味がある。

【追記】2017年9月26日 こないだGyao!の無料配信で久しぶりに本作を観た。劇場公開時に観た印象と食い違っている場面が若干あって興味深い。いくつかを以下に紹介する。
 時間の経過による記憶の変質もあるが、やはり鑑賞当時中学生だった私の価値観と51歳現在の価値観の相違が大きく絡んでいる。

 医師の緒形拳が絶望感に取り乱す看護婦多岐川裕美に諭す場面がある。改めて観ると微笑んではいなかった。実際の緒形拳氏はステレオタイプな大袈裟演技はやっておらず、追い詰められた医師のリアルな感情を表現していた。
 多岐川裕美氏から「死亡者が三千万を超えました!」と言われ驚愕のあまり思わず息を飲み、それでも取り乱すまいと看護師に諭すというよりは自分自身に「ともかく・・我々としては・・最善を尽くすしかない」と言い聞かせる。最善を尽くすしか生きる目的が残されていない様が痛々しく出ていた。
 続けて「どんな事にも終わりはある」と言い終えてから、デスクに飾ってある金魚鉢が目に入り「どんな終わり方をするかだ」と呟く。
 「どんな事にも終わりはある」と言った時点では、「いつまでこんなことが続くのでしょうか」と悲鳴を上げる多岐川看護婦を慰めるとともに自分自身に対しての「それまでの辛抱だ」という意味合いがあったが、ふと金魚鉢の中で死んで浮かんでいる金魚が目に入り、冷静さを取り戻した脳裏に絶望が目に入る。

 病院でただ一人生き残った多岐川看護婦は最後の力を振り絞って友人宅へ行く。友人は既に息絶え、幼い息子がまだ生きていて意識があった。
 多岐川看護婦が「一緒にパパのところへ行こう」と連れ出しモーターボートに乗って暗い夜の海を行く。途中、薬(おそらく毒薬)を子供に飲ませ、自らも飲んで「パパを呼ぶのよ! もっと大きな声で!」 
 モーターボートが沖合へ消えていく頃、渡瀬恒彦氏が演じる子供の父親で主人公吉住の同僚が南極昭和基地の通信室で目が覚め、通信機を確認する。息子の叫び声を聞いたようで、アルバムから息子の写真を抜き取って吹雪の雪原に飛び出してしまう。
 この場面は劇場公開時に観た時以上に心に突き刺さる。私も小さな子供がいるので、同様の事をやってしまいそうだ。

 それから草刈正雄氏演じる吉住の印象は若造というイメージだったのが、博士号を持った若手学者なんだと改めて認識した。というのも、他国の研究者たちが吉住の事を「ドクター」と呼んでいたからだ。日本語字幕では「吉住君」だが、行動を共にするアメリカ軍少佐もきちんと「Doctor」と呼んでいた。

 最後に、謎のウイルスが蔓延し治安維持と放置遺体処理のため自衛隊が出動する場面で、場末のディスコでヤケクソのダンスをやっている女の子たちがTシャツを脱いで裸になる場面がある。
 たしか妖艶な大人の女性が脱いでいた印象を持っていたが、改めて観ると乳が小ぶりの二十歳前後の女の子だった。腋毛の剃り跡が蒼黒いのでジョリ腋だろう。時代を感じさせる。



晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良

晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作


【受賞】毎日映画コンクール日本映画優秀賞・録音賞(紅谷愃一) 日本アカデミー賞最優秀録音賞(紅谷愃一)


 
 blogram投票ボタン にほんブログ村 映画ブログへ
ブログランキングに参加しています。
関連記事
スポンサーサイト



コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する
映画処方箋一覧
晴雨堂が独断と偏見で処方した映画作品。
下段「日誌」項目は晴雨堂の日常雑感です。
メールフォーム
晴雨堂ミカエルに直接ご意見を仰せになりたい方は、このメールフォームを利用してください。晴雨堂のメールアドレスに送信されます。

名前:
メール:
件名:
本文:

プロフィール
↓私の愛車と野営道具を入れたリュックです。

晴雨堂ミカエル

Author:晴雨堂ミカエル
 執筆者兼管理人の詳しいプロフィールは下記の「晴雨堂ミカエルのプロフ」をクリックしてください。

晴雨堂ミカエルのプロフ

FC2カウンター
2007年10月29日設置
当ブログ注目記事ランキング
当ブログで閲覧数の多い順ランキングです。
設置2013年6月13日
ブログランキング
下記のランキングにも参加しております。ご声援ありがとうございます。
  にほんブログ村 映画ブログへblogram投票ボタン
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
映画
130位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
レビュー
64位
アクセスランキングを見る>>
タグランキング
晴雨堂の関心度が反映されています。当ブログ開設当初は「黒澤明」が一位だったのに、今は・・。
訪問者閲覧記事
最近のアクセス者が閲覧した記事を表示しています。
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム
リンク