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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「ルー・サロメ/善悪の彼岸」 青春回帰〔23〕 

ルー・サロメ/善悪の彼岸」 
当時としては踏み込んだ性描写の文藝作。

  

 
【英題】BEYOND GOOD AND EVIL
【公開年】1977年  【制作国】伊太利 仏蘭西 西独逸  【時間】127分  
【監督】リリアーナ・カヴァーニ
【原作】
【音楽】ダニエル・パリス
【脚本】リリアーナ・カヴァーニ フランコ・アルカッリ イタロ・モスカーティ
【言語】イングランド版とイタリア語版あり
【出演】ドミニク・サンダルー・サロメ)  エルランド・ヨセフソン(ニーチェ)  ロバート・パウエル(パウル・レー)
  
【成分】悲しい ゴージャス ロマンチック パニック 知的 切ない セクシー かわいい 社会主義 フェミニズム 19世紀末 ヨーロッパ 
                
【特徴】かなりの問題作。思想家ニーチェたちの三角関係を描く。ヒロインであるルー・サロメが理想とする家族制度を廃した理想の共同生活が破綻していく様が切ない。個人的には、ヒロインの志向は大自然の摂理をナメてかかった思慮の浅い稚拙な考えに見える。
 
 晴雨堂は英語版を観たが、これは性描写を大幅にカットされた。近年になって無修正のイタリア語版が出ている。
    
【効能】19世紀のヨーロッパで流行った最先端の思想と知的生活が垣間見れる。新感覚に憧れ利害関係を無視できた頃の自分を垣間見れるかもしれない。
 
【副作用】フェミニストを除く多くの方々はヒロインの気持ちが理解できない。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
女1人男2人の儚い友情。
  
 フランスの女優ドミニク・サンダ氏、ヨーロッパの文藝大作に出演する女優でも有名である。「善悪の彼岸」もいわゆる文藝大作で、19世紀の前衛的才女ルー・サロメに扮している。ところが細かい時系列は判らないが、ほぼ同時期にアメリカのノーテンキ珍作ハルマゲドン物「世界が燃えつきる日」のヒロインとしても出演している。
 日本映画界で「善悪の彼岸」や「世界が燃えつきる日」のポジションに相当する作品、ドミニク・サンダ氏に相当するポジションの俳優が思いつかないので適当ではない例えになる事を断ったうえで言うならば、松田暎子氏が「愛のコリーダ」のヒロインをやりながら、東宝の「ノストラダムスの大予言」でヒロインをやるようなものか?(余談1)

 さて、作品内容だが日本公開時に性描写の問題で制約があり、大幅にカットされる羽目になった映画である。最近になって、カットされた分が復活したDVDが発表されたようなので、関心のある方はご覧になられたら良いだろう。監督は「愛の嵐」で著名なリリアーナ・カヴァーニ監督である。
 物語を簡単に説明すると、ヒロインに恋をする教養の高そうな青年が求婚するが、彼女は「家制度」「家族制度」に縛られない自由な生活を望むタイプで、青年が尊敬する男性と3人での共同生活を提案、青年は友人の哲学者ニーチェ(余談2)を紹介し、奇妙な合意の上での三角関係がスタートする。

 結論をいうと、3人の共同生活は愛憎の果てに破綻する。2人の男性の気持ちが耐えられなかったのだ。特に青年は大きく傷ついてしまう。私見をいえば、3人が対等な関係の密着した共同生活ではなく、サロメが「女王様」で男たちが愛人兼従者の関係なら、あるいは「友情」と割り切り距離を置いた付き合いだったら長続きしただろう。
 社会主義的な考え方の青年は後に低所得労働者が集うパブで酒盛りをやり、その帰り道か労働者たち数人(10人くらいかもしれない)から強姦まがいのリンチを受けて殺される。
 ニーチェの末路は御存知の方も多いと思うが脳梅毒で廃人の様になる。サロメは意識も定かでないニーチェの肩を抱きながら、サロメを悪女と憎むニーチェの親族や関係者たちを前に、2人だけの高次元の世界を語りかける。ニーチェに語りながら、実は世間に対して「お前ら俗物に我々のことなど理解できるか」と挑発しているようにも見えた。

 19世紀後半から20世紀初頭にかけて、キリスト教世界への反抗が欧米の知識人や藝術家の間で流行ったように思う。この映画は当時の風潮を描写しつつ70年代の退廃性や性解放やフェミニズムと掛け合わせているのかもしれない。
 個人的には学生時代に似たような雰囲気の世界を見たことがある。藝大というところは、最先端の文化と価値観を創りだす学府という自負があったから、平凡な生活を嫌う学生は少なくない。私は平凡な人間だったので、距離を置いて成り行きを鑑賞するだけだった。
 俗物にも理はある。人類が試行錯誤の末にたどり着いた最も無理の無い生き方を享受するのが俗物の良さでもある。私は頭が悪いので、主人公たちに反感しか抱けない。
 もちろん、私自身も世間に反発したことは多々あったが。
 
(余談1)「愛のコリーダ」は大島渚監督が放った性描写満載の映画で物議を醸した。藤竜也氏とヒロインの松田暎子氏の濡れ場が大評判で、一般の文藝作として公開するため映倫や官憲から厳しい圧力を受けた。大した描写ではないと思うのだが。
 「ノストラダムスの大予言」は東宝が放つハルマゲドン物邦画。珍作と思いきや、けっこう良いデキだったように思う。この映画のヒロインは由美かおる氏。由美氏もお色気ができる俳優だ。

(余談2)友人から「お前の考え方はニーチェに似ている」と言われ、ムカっときたことがある。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作



 

 
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[ 2009/04/30 04:53 ] 映画・・青春回帰 | TB(0) | CM(0)
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