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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「男たちの大和」 絶望から脱出しよう〔6〕

男たちの大和」 日本映画界気合のリアリズム
 

 
【公開年】2005年  【制作国】日本国  【時間】145分  
【監督】佐藤純彌  
【原作】辺見じゅん     
【出演】反町隆史(森脇庄八一主曹)  中村獅童(内田守二等兵曹)  鈴木京香(内田真貴子)  松山ケンイチ(神尾克己年少兵)  蒼井優(野崎妙子)  長嶋一茂(臼淵磐大尉)  寺島しのぶ(文子)  仲代達矢(現代の神尾克己)
 
【成分】悲しい 恐い 感涙 切ない 反戦 太平洋戦争
 
【特徴】日本映画界総力を結集して製作したリアル大和といってもよい名作。従来の大和モノでは副長を務めた能村次郎氏の著書「慟哭の海」をベースにしているのか上級士官の視点で描かれることが多かったが、今回は水兵や下士官の視点で艦内の生活や戦闘の凄惨な現場を描写している点が画期的である。
 
【効能】リアルな軍隊描写と戦闘場面、困窮する農村部の生活、アメリカの無邪気な娯楽戦争映画とは一線を画すので、社会学習に適している。航行する大和の再現勇姿は軍艦ファンにとって感動。
 
【副作用】上官の部下虐めや血腥い戦闘場面で嫌悪感をもよおす場合がある。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
「大和」を冷静に観ると
 
 映画館では迫力に圧倒され、俳優たちの熱演に泪したが、公開から1年ほど経ってDVDを借りて自宅TVで観るといろいろ突っ込みどころが出てくる。もちろん日本の戦争映画として完成度が高いという評価は変わらない。
 
 映画館で観た時は、前評判通り可能な限り忠実に造ったオープンセットと、考証に忠実な海軍の生活、生存者の証言を基にしたリアルな戦闘シーンに衝撃を覚えるばかりだった。ニュースで撮影風景を観たときはセット丸出しのちゃちな映像で不安だったが、映画の本番映像ではその不安は完全に払拭された。
 
 観る人によっては、出撃前に「日本的お涙ちょうだい場面」もたくさん出てくるが、それらは登場人物たちのあっ気ない最期への伏線になっていて逆に効果的だった。出演者名簿の上位にくる人々が、戦闘で不特定多数のエキストラと全く同じようにあっけない殺され方で消えていく場面を演じる。気をつけて観ていないと、いつ戦死したのかわからないほど、映画的には「さりげない描写」だった。戦争では消耗品のごとく殺されていく若い兵士1人1人に重い人生があることをリアルに演出していているのだ。DVDを逆回しにして観れば、銃撃で名も無いエキストラと同じようにバタバタ死んでいく主役級・助演級の若い水兵たちがどんな青春をおくっていたかが甦る形になり、構成として成功していることが解る。
 「大和」を映画化するにあたっては、反戦平和運動を熱心にやられる方々から「戦争の美化」との懸念を受けるだろうが、この作品については戦争の美化は無いと思う。
 
 今でも基本的な評価は変わっていない。が、同様のテーマ・同様のストーリー展開の「硫黄島」を観てから、やはり粗がみえてきた。
 日本海軍の象徴的軍艦という意味だけでなく、日本の象徴でもあり太平洋戦争で没した若者たちの墓標でもある戦艦大和を映画にするのだから、制作者・俳優もたぶん相当に気合いを入れて創ったはずだ。話題になったオープンセットにしても素晴らしかった。むしろ「硫黄島」のほうが金をかけていないと思う。なのに「硫黄島」のほうがより生々しい戦争映画だった。演じている俳優は同じ日本人であるにも関わらずこれは何故なのか?やはり殺し合いというものをアメリカはより「理解」しているということなのかもしれない。(余談1)
 
 最後に、スター俳優の反町氏を勇ましく命令する将校でもなく銃砲を撃つ兵士でも無く、飯をつくる主計の烹炊長(裏方のコックといったほうが良いだろう)というのが新鮮で好感が持てた。水兵たちにとっては面倒見の良い兄貴分的な役をよく演じていた。
 主要人物を艦長や士官ではなく、損耗率が最も高い機銃手や裏方の主計烹炊室の水兵や下士官に据えたのも好感がもてる。
 
(余談1)大和に乗艦した生存者の話によれば、甲板は血と脂と硝煙でどす黒くなった体液と肉片の生臭い焦臭さで修羅場だったそうだ。映画はまだ綺麗で大人しい。それでも以前の邦画の中では極めてリアルな戦争描写だ。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

  
晴雨堂関連作品案内
「男たちの大和/YAMATO」オリジナル・サウンドトラック
CLOSE YOUR EYES/YAMATO-男たちの大和 主題歌- 長渕剛
YAMATO浮上!-ドキュメント・オブ・『男たちの大和/YAMATO』- [DVD]
硫黄島からの手紙 [DVD] クリント・イーストウッド
 
晴雨堂の関連書籍案内
決定版 男たちの大和〈上〉 (ハルキ文庫) 辺見 じゅん
決定版 男たちの大和〈下〉 (ハルキ文庫) 辺見 じゅん
戦艦大和―生還者たちの証言から (岩波新書 新赤版 1088) 栗原俊雄
戦艦大和ノ最期 (講談社文芸文庫) 吉田満
慟哭の海―戦艦大和死闘の記録 (1967年) 能村次郎
 

 
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晴雨堂の書棚から
 
慟哭の海―戦艦大和死闘の記録 (1967年)
 
 著者は能村次郎氏、戦艦大和最期の戦いで副長を務めた元海軍大佐である。讀賣新聞社から刊行されている。私が最初に読んだのは中学生の頃で、市立図書館で借りてきた。
 
 「男たちの大和」では水兵や下士官の視点で描かれているが、この本は上級士官の視点なので若干現場臭は感じられないが、それでさえも生々しい戦闘描写がつづく。映画では伊藤長官扮する渡哲也氏が作戦の中止を決断し離艦を命じる場面で、艦橋の窓から米軍機の曳光弾が飛び込んでくる。この本でも同様のエピソードが書かれていたので、映画はおそらく参考にしているに違いない。
 
 内容から察するに、艦橋勤務の将兵達も随分戦死者を出したようだ。艦橋の窓は平素は防弾ガラスを使用しているが、米軍機の12.7ミリ機関砲にはあまり役に立たないため戦闘中は取り外されている。映画でも取り外す場面は出てこないが戦闘中は窓ガラスが無くなっている。
 
 艦長と同じ大佐という身分なので、水兵たちはよく知りえない艦船の編成や指揮官や司令官たちの様子も書かれているので興味深い。
 
 本の後半は沖縄戦の前年レイテ作戦のエピソードのほか、大和乗組員の氏名と階級が書かれた名簿も付録として掲載された貴重な資料である。
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