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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「食人族2」 社会を冷笑したい時に〔25〕

食人族2」 「食人族」のリメイク。
 

 
【原題】CANNIBAL HOLOCAUST
【公開年】2003年  【制作国】伊太利  【時間】90分  
【監督】ヴィンセント・ドーン
【原作】
【音楽】
【脚本】ジャンニ・パオルッチ マーク・ヘベレット ブルーノ・マッティ
【言語】イングランド語       
【出演】ヘレナ・ワグナー(-)  クラウディオ・モラレス(-)  アントニオ・レボウル(-)  シンディ・ジェリク・マティック(-)
      
【成分】笑える パニック 不気味 恐怖 熱帯雨林 食人族 絶望的 セクシー
  
【特徴】食人族モノの金字塔「食人族」のリメイク。物語の展開はほぼ同じ。
 前作に比べると、ドキュメント風味は一掃されて普通の劇映画となり、コミカルさとセクシーお色気場面が追加されている。フィクションとわかるワザとらしい場面も盛り込まれ安心して観れる。「おバカ映画」としても良いくらいだ。その分、グロい描写もあるが

 また、前作は一般的文明批判が一応のテーマとなっていたが、今回は文明批判をさらに絞り込んで視聴率に目がくらんだテレビ業界を皮肉るコンセプトになっている。
 
 主人公の女性ディレクターがアンジェリーナ・ジョリー似のスレンダー美女。
     
【効能】資本主義社会の害毒を実感。俳優たちのワザとらしい怪演がニヒルな笑いを誘う。
 
【副作用】フィクションとして割り切れず感情移入してしまう人、流血場面そのものが嫌な方は気分が悪くなる。延々、似たようなグロな光景が続き退屈。名物?美女の串刺しが無いのに怒りを覚える。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
原版「食人族」より
コメディ色を強くしたリメイク

 
 1981年公開の「食人族」をリメイクしたものである。原題も同じ「CANNIBAL HOLOCAUST」のようだ。前作はドキュメント色を強く出していたためにノンフィクションだと勘違いする観客がいたそうだが、この作品では完全に架空のドラマと判る演出なので安心して観れる。ホンモノと勘違いする観客はもはやいないだろう。(余談1)

 基本的なストーリーは同じである。TV取材班があるジャングルの奥地に住む未開の民族を取材するため探険し、映像を面白くするために原住民部落に狼藉をはたらいて恨みをかい食人族に襲われて全滅する。原住民女性が配偶者以外の男性と契ったために折檻を受けて殺されたり、取材クルーの男性が原住民の若い女性に乱暴を働き女性クルーが止めようとするシチュエーションも前作に続いて登場する。
 決定的に違うのは、前作では全滅したクルーが遺したフィルムを回収した学者が「本当に野蛮なのは我々文明人ではないのか?」と自問自答するというシリアスな文明批判の体をとっているが、今回は視聴率競争で一喜一憂するTV界を面白おかしく風刺している。

 主人公はアンジェリーナ・ジョリー似の番組ディレクター。過激な内容の番組作りで地位を築いてきたが、その手法は次第に視聴者から飽きられつつありTV局上層部からは辟易されている。焦る彼女は廃れつつある食人族モノの本格ドキュメントを撮る企画を立案、かつて仕事のパートナーだった男性と組んでジャングルへ潜入取材を決行する。男性は足をあらい平凡な生活に戻りたがっていて、過激で強硬路線の彼女には付いていけないものを感じていた。

 主人公は過激な映像を創るために様々な「禁じ手」を打つ。森林警備隊を買収して原住民との戦闘を演出させたり、原住民を煽って長年廃れていた食人の風習を復活させたり、目論見があたって番組の視聴率は好調、起死回生の取材行は成功するかに見えたが。
 原住民は凶暴な食人族へと豹変しTVクルーたちへ矛先が向くようになる。無理矢理誘ったパートナーの男性がジャングルの刺激に感化されて主人公以上に過激になり歯止めが効かなくなる。やがてお約束の悲劇へと突入する。

 見どころは、この手の映画のお約束であるお色気場面だ。アンジェリーナ・ジョリー似の主人公が金髪美女のクルーと一緒にジャングルを流れる川の岸辺でビキニ姿や全裸姿を披露する。若干垂れ気味の乳房とスレンダーな身体の線が汗とサンオイルで光り、背景の鬱蒼とした緑にマッチしている。
 残酷場面は前作よりも血糊の使用量が大幅にアップし、新機軸場面としては人間を殺して腹を割き臓腑を生のまま食べたあと、首を落として頭を石でかち割り脳味噌をすするところだろう。

 私が最も気に入っている場面は、クルー全滅の報せを受けてTV局は騒然とし、かねてから残酷描写に異議を唱えていた重役たちは放送中止を訴えるが、主人公の上司であるプロデューサーは瞬きせず大きく眼を見開き、唇は薄笑いすら浮かべて「彼女は死んでいない。クルーは生きて帰ってきている」と言い張る。番組は過去映像などを取り混ぜ最新の技術を駆使して編集され、予定通り放送された。
 前作とうって変わってシリアスさは微塵も無い。一応テーマはエログロ・パロディが喜ばれる?イタリア映画界を同じくエログロ食人族モノで風刺・批判するといったところか。毒をもって毒を制す、という高尚な理念があるかもしれない。(冗談なので本気にしないで)

(余談1)「食人族」レビューでも述べたが、当時から突っ込みどころは無数にあった。例えば、原住民の女性はどう見てもスタイル抜群の白人女性が全身に泥を塗っているようにしか見えなかったり、そもそも北極圏のイヌイット族ではあるまいし、植物豊かな熱帯のジャングルで生肉を食べる必要性が無い。蒸し焼きか燻製にして食べるものだ。
 「食人族2」の監督はたぶん思いっきり開き直って制作したのだろう。



晴雨堂スタンダート評価
☆☆ 可
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作



 

 
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