FC2ブログ

ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「es [エス]」 社会を冷笑したい時に〔26〕 

「es [エス]」 地位が人を作る。
 

 
【原題】DAS EXPERIMENT
【英題】THE EXPERIMENT
【公開年】2001年  【制作国】独逸  【時間】119分  
【監督】オリヴァー・ヒルシュビーゲル
【原作】マリオ・ジョルダーノ
【音楽】アレクサンダー・フォン・ブーベンハイム
【脚本】 ドン・ボーリンガー クリストフ・ダルンスタット マリオ・ジョルダーノ
【言語】ドイツ語       
【出演】モーリッツ・ブライブトロイ(囚人番号77/タレク)  クリスチャン・ベルケル(囚人番号38/シュタインホフ)  オリヴァー・ストコウスキ(囚人番号82/シュッテ)  ヴォータン・ヴィルケ・メーリング(囚人番号69/ジョー)  ユストゥス・フォン・ドーナニー(看守/ベルス)  ティモ・ディールケス(看守/エッカート)  ニッキ・フォン・テンペルホフ(看守/カンプス)  アントニオ・モノー・ジュニア(看守/ボッシュ)  エドガー・セルジュ(教授)  アンドレア・サヴァツキー(助手)  マレン・エッゲルト(ドラ)
       
【成分】パニック 不気味 恐怖 知的 絶望的

【特徴】1971年に行われたスタンフォード大学監獄実験で起こった実際の事件をベースにした映画化。監督は後にナチスドイツの最期の日々を描いた「ヒトラー 最期の12日間」で世界的著名になるヒルシュビーゲル氏。
 
 実際のエピソードでは、大学側は「これ以上は危険」と判断して実験は中断されたが、映画では悲劇へと突き進む。 
    
【効能】人間の暗黒面を垣間見れる。
 
【副作用】気分が悪くなり後味悪い。人間不信になる。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。
実は看守役の気持ちはよく解る。
 
 ドイツを代表する映画人となったオリヴァー・ヒルシュビーゲル監督、作品の内容は社会心理学的サイコスリラー、平凡な人間が他人を管理し暴力を振るう側と、他人の支配に甘んじ暴力を受ける側へと変化する、となればナチズム台頭のドイツの苦い歴史背景も取り沙汰されるだろう。
 実際にこの作品の3年後にはヒトラーの最期を描いた「ヒトラー最期の12日間~」を発表し世界中に物議を醸し出した。少なからず「ヒトラー」の予行演習になったのではないかと思える作品だ。

 実際に70年代初頭に行われたスタンフォード大学の実験や、それを基にしたフィクションであるこの作品は、あくまで実験企画者が立てた仮説を導き出すため計画的に創り出した極端なシチュエーションで、程度の差はあれ実社会でも日常茶飯事の現象である。世間でよくいわれる「地位が人をつくる」言葉があるが、まさにそれだ。特にパッとしない実力でも、それなりに様になってしまう人は多いと思う。(余談1)これらの視点でのレビューは既に語り尽くされているようなので、私は少し見方を変える。

 地位や環境が人格をつくる、といっても向き不向き・得手不得手はある。(余談2)やはり向いていない人間に幾ら器を与えられても使いこなせないし、向いている人間を不当に低い扱いをすれば力を持て余す。波風の無い環境であれば各々が各々の立場に満足し甘んじるが、波乱の環境であれば能力の無いリーダーはバカ殿になるし、能力のある部下は反乱分子になる。日本の歴史も、安定した時代はヒエラルキーが確立して世襲制になるが波乱に富んだ時代は下克上になる。

 もし、囚人役に主人公のようなリーダーになり得る人物が居なかったら、あるいは看守役にベルスのようなリーダー格が居なかったら、それ以前に高度な人権感覚がベースとして無かったら、実験は必ずしも劇的な展開にはならなかったのではないかと思う。
 例えば日本で同じ実験をやったら、かなりの確立で各々がそつなく看守役と囚人役を演じていたか、あるいは看守役が一方的に囚人役を押さえ込み虐待するだろう。疑うことなく報酬をもらうまでの我慢、日本的秩序が崩れてきたとはいえ、この考え方は今なお主流である。

(余談1)実際の実験では大学側が危険と判断して中断させている。映画は面白くするため悲劇が起こるまで続行する展開にし、唐突にヒロインを登場させている。

(余談2)私はリーダーの資質は無いと自覚しているが、どういう訳か子供の頃から成り行きでリーダーや役員を務めさせられる事が多かった。これは非常に苦痛でストレスだった。
 リーダーになったとき、能力の無さを補ってくれる忠実な側近や後ろ盾を得られたら楽だが、烏合の衆の仕切りでは負担が自分に集中して過労になるし、作中の主人公のような人間がメンバーにいるとリーダーにとっては獅子身中の虫であり、秩序の安定のため反射的に排除のために権限や権力を使ってしまう欲求にかられたり、可能であれば権限や責任を丸投げして身を引きたくなる。だから看守役ベルスの気持ちは実はよく解る。

晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆☆ 優
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作



 
 blogram投票ボタン にほんブログ村 映画ブログへ
ブログランキングに参加しています。
関連記事
スポンサーサイト



コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する
この記事のトラックバックURL
http://seiudomichael.blog103.fc2.com/tb.php/417-def204ac

CAST:モーリッツ・ブライプトロイ/クリスティアン・ベッケル 他 ■ドイツ産 119分 衝撃的でした。 人間ってこえ~って思っちゃいましたさ。 権力・身分って人を180度変えてしまうのね・・・。 こんな実験が実際にあっただなんて。 ドイツすごいっす・・・。 映画...
[2009/05/07 15:09] ひるめし。
映画処方箋一覧
晴雨堂が独断と偏見で処方した映画作品。
下段「日誌」項目は晴雨堂の日常雑感です。
メールフォーム
晴雨堂ミカエルに直接ご意見を仰せになりたい方は、このメールフォームを利用してください。晴雨堂のメールアドレスに送信されます。

名前:
メール:
件名:
本文:

プロフィール
↓私の愛車と野営道具を入れたリュックです。

晴雨堂ミカエル

Author:晴雨堂ミカエル
 執筆者兼管理人の詳しいプロフィールは下記の「晴雨堂ミカエルのプロフ」をクリックしてください。

晴雨堂ミカエルのプロフ

FC2カウンター
2007年10月29日設置
当ブログ注目記事ランキング
当ブログで閲覧数の多い順ランキングです。
設置2013年6月13日
ブログランキング
下記のランキングにも参加しております。ご声援ありがとうございます。
  にほんブログ村 映画ブログへblogram投票ボタン
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
映画
147位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
レビュー
73位
アクセスランキングを見る>>
タグランキング
晴雨堂の関心度が反映されています。当ブログ開設当初は「黒澤明」が一位だったのに、今は・・。
訪問者閲覧記事
最近のアクセス者が閲覧した記事を表示しています。
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム
リンク