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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「パンズ・ラビリンス 」 絶望から脱出しよう〔24〕 

パンズ・ラビリンス」 
ホラー監督が描く戦争幻想

 

パンズ・ラビリンス [Blu-ray]
パンズ・ラビリンス スペシャルプライス版 [DVD]
 
【原題】EL LABERINTO DEL FAUNO
【英題】PAN'S LABYRINTH
【公開年】2006年  【制作国】墨西哥 西班牙 亜米利加  
【時間】119分  
【監督】ギレルモ・デル・トロ
【原作】
【音楽】ハビエル・ナバレテ
【脚本】ギレルモ・デル・トロ
【言語】スペイン語
【出演】イバナ・バケロ(オフェリア)  セルジ・ロペス(ビダル)  マリベル・ベルドゥ(メルセデス)  ダグ・ジョーンズ(パン/ペイルマン)  アリアドナ・ヒル(カルメン)  アレックス・アングロ(フェレイロ医師)  ロジェール・カサマジョール(ペドロ)  マノロ・ソロ(ガルセス)  セサール・ベア(-)  エウセビオ・ラサロ(-)  パコ・ビダル(-)  フェデリコ・ルッピ(-)
  
【成分】悲しい ファンタジー 不思議 パニック 不気味 恐怖 絶望的 スペイン内戦 1944年 スペイン
                    
【特徴】ギレルモ・デル・トロ監督が放つダークファンタジー。
 内戦終結直後のスペインが舞台。一人の薄幸少女が出会う百鬼夜行のような妖精たちとの交流と葛藤と試練。

 前評判の造形や特殊メイクの技術とセンス以外に脚本も世界各国で絶賛された。

 R12なので小学生以下は見ないように。
    
【効能】世の中、甘くない事を疑似体験できる。スペイン内戦の傷の深さが学べる。
 
【副作用】腐臭漂いそうな雰囲気に気分が悪くなる。エロ風味を期待した一部の助平人間は拍子抜けさせられる。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
薄幸少女が直面した陰鬱な幻想世界
 
 スペイン内戦を舞台にした映画で最も有名なのは、ゲーリー・クーパー氏とイングリット・バーグマン氏が主演したハリウッド映画「誰がために鐘は鳴る」である。70年代以前に青春をおくった映画ファンにとっては思い出の作品だろう。義憤からスペインのファシストと戦うアメリカの大学講師ロバートと、ファシストの兵士たちに虐待された過去を持つ女性との戦場ロマンスだ。これは社会背景を知らなくても楽しめる作品になっている。(余談1)
 内戦後の人々を描いた作品として有名なのは、スペイン映画「エル・スール」がある。これは淡々と起伏の少ない物語展開なので、スペインのカトリック社会や内戦の混乱などを把握していなければ、何のことか解らない退屈な作品に見える恐れがある。

 以上あげた作品はスペイン内戦を舞台にした典型的な作品(余談2)で、同様主題の他作品も概ねこの2作に近い雰囲気の内容だ。だから「パンズ・ラビリンス」が些か特異な作品だ。
 監督はスペイン語圏のメキシコ出身、メキシコはアメリカ映画の影響をもろに受けている国でもあり、監督自身もアメリカ人が喜びそうなホラー映画を手掛けている。そんな映画人がスペイン内戦を舞台にしたファンタジーを描いたら、おおよその雰囲気は推察できる。不謹慎かもしれないが、「こんな描き方もあったのか」というのが私の感想だ。

 これも顰蹙をかうかもしれないが、映画を観ながら邦画でもし同様テーマの作品を創るとなると、どうなるだろうかと空想をめぐらしてしまった。
 舞台は太平洋戦争下の日本。アメリカ軍の長距離爆撃機B-29の攻撃は日本の地方都市にまで及び、都会の子供たちは田舎へ学童疎開する。疎開先で主人公の女の子は陰惨なイジメ(余談3)にあう。父親は戦死していない。母親からは仕送りがくるが教師たちに横取りされる。
 主人公の唯一の安らぎは、裏山の雑木林の奥にある小さな祠だった。そこへ行って木々や祠の御神体に向かって独り言を呟くのが日課になっていった。ある日、彼女はそこで様々な妖怪に出会う。主人公を妖しげな世界へ誘う妖怪は木の葉天狗が適当か。
 物語の節目節目に空襲で殺される市民のリアルな描写を挿入し、静寂で平和な山村とそこに住む残酷な村の子供たちの対比を構成すれば、少女の儚さが強調され、印象深い映画になるかもしれない。 

 ある説によると、宮沢賢治の「風の又三郎」は一種のホラーでもあるらしい。子供たちを唆して黄泉の世界へ引き込もうとする死神の化身ではないかと。
 「パンズ・ラビリンス」を観ながら、もっと重厚な恐さのあるジャパニーズ・ホラーは出来ないものかと思う。

(余談1)主人公らの敵であるフランコ軍兵士はドイツ軍の16年型スチールヘルメットによく似たものを被っているので、ドイツ軍VSレジスタンスと勘違いしている人はかなり多いと思う。

(余談2)だから、予備知識を勉強をする、という作業が苦手な方は、この2作を鑑賞する事を勧める。

(余談3)知人の酒屋のオジサンが学童疎開の思い出を憤然と語ってくれたことがある。今でも思い出すと胸糞悪くなるのだ。「今のイジメも昔のイジメも全く同じや。強いて違うところがあるといえば、イジメっ子が調子に乗って死んでしまうまで暴力振るうことは、あの頃は無かった。それ以外はなんでもあった」


 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
【受賞】アカデミー賞(撮影賞)(2006年) LA批評家協会賞(美術賞)(2006年) NY批評家協会賞(撮影賞)(2006年) ヒューゴ賞(2007年)

晴雨堂関連作品案内
誰がために鐘は鳴る [DVD] サム・ウッド監督
エル・スール [DVD] ビクトル・エリセ監督


 

 
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日本でのリメイク案すごくおもしろそうじゃありませんか!

日本では宮崎駿の『千と千尋』がありますけど、
あれはけっこうエロかったですよね(笑)
完全に少女売春の話でしたし。
共産主義という創作の基本を失った宮崎の、
もうひとつの趣味が色濃く出ちゃった感じでしたね。

鈴木プロデューサーの言によりますと、
カオナシとは宮崎監督自身だということです。
宮崎は慌てて否定していたらしいですけど、
けっこう的を射てると思います。
[ 2014/10/12 18:04 ] [ 編集 ]
スパイクロッド氏へ


> 日本でのリメイク案すごくおもしろそうじゃありませんか!

 そういっていただけると嬉しい。

 私が推挙する子役は、このレビューを書いた当時であれば平祐奈氏。
 現在なら田口乙葉氏あたりが良いかな、と空想しています。


> 日本では宮崎駿の『千と千尋』がありますけど、
> あれはけっこうエロかったですよね(笑)

 「湯女」と称している段階で明々白々なんですが、あまり世間は問題にされていませんね。些細な言葉尻を捉えて上映禁止や放映禁止に追い込もうとする短兵急勢力がある一方で。
 宮崎駿氏はを子供向きのほのぼの世界に作り替えるのが上手い。

 「崖の上のポニョ」にしても、一見すると平和な世界ですが、あれはワルキューレですから。


> 完全に少女売春の話でしたし。
> 共産主義という創作の基本を失った宮崎の、
> もうひとつの趣味が色濃く出ちゃった感じでしたね。

 宮崎氏はもともと日本の古典が好きなんですよ。本来の日本文化は開放的な裸文化ですから、現代の倫理観は裸文化を否定するキリスト教に毒されたモノで明治期に文明開化とともに移植されたに過ぎません。宮崎氏はそんなモノに反発する志があると私は見ています。
[ 2014/10/13 09:11 ] [ 編集 ]
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