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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

北の零年 

北の零年  この映画で感動された方には申し訳ないが、それはたぶんに出演者たちの優れた演技力の賜物だろうと思う。断じて監督や脚本家たちの手腕ではない。また、史実(余談1)を知らない方々にとっては、素直に西部開拓史のようなロマンを感じられただろう。その気持ちは理解している。しかしながら史実を知っている人間にとっては、正視に堪えない作品なのだ。

 あまりにもデタラメとご都合主義が多すぎるし、フィクションだと割り切ろうにも脚本も演出もこなれていないうえに北海道の厳しい自然や開拓民たちのジリ貧の生活が描写し切れていない。アイヌ民族の描写に至っては噴飯モノである。これらは致命傷だ。
 1つの場面場面を切り取ってみれば感動できる部分もあるが、不自然な台詞や不自然な設定がそれらを相殺しており、しかも莫大な予算と豪華キャストと3時間近い大作となれば、評価基準も高くせざるを得ない。

 酷評のオンパレードになりそうなので、良い点を紹介しよう。
 まず、賛否分かれているが吉永小百合氏はあまり違和感が無い。たしかに無理はあるが、例えば失礼ながら同世代の富司純子氏・梶芽衣子氏・泉ピン子氏ら美女(余談2)が小学生くらいの娘をもつ母親役に扮すると作品全体の説得力減退は避けようがない。吉永小百合氏だからこそ「無理がきく」のである。
 これも賛否あるが、渡辺謙氏の豹変振りも面白い。娘に向かって「希望を失うな」という趣旨の台詞を言っておきながら、後半に悪徳役人となって再登場するのは素晴らしい。腰低い商人の香川照之氏が尊大になって吉永小百合氏を襲い石田ゆり子を寝取るという傍若無人よりインパクトがある。これは意表を突く裏切りだ。
 これも賛否わかれているが、大後寿々花氏と石原さとみ氏も顔付きが似ているのでナイスキャスティングだ。2人とも私のお気に入り俳優である。残念なのは5年後の設定だ。もし大後寿々花氏の10年後の役として石原さとみ氏が演じていたら、さほど不自然さは目立たなかっただろう。
 これらを無理なく自然に構成し時代考証に厳格だったら、それなりの佳作にはなった。監督や脚本は、綺麗な言い回しで申せば、壮大な大作には慣れていない、こじんまりとした90分程度のラブストーリーに才能を発揮する方々なのだろう。

 最後に沢尻氏を擁護するレビューを私は以前に書いたのだが、その遠因としてこの作品がある。「普通のラブストーリー」「別に」と言った一連の評価は正しいのである。沢尻氏の作品に対する目は確かだ。自分が映画を売る立場であることと、世論は掴みきれなかったようだが。

(余談1)徳島藩の内紛は史実にある。もし内紛が無ければ、今ごろ淡路島は兵庫県ではなく徳島県になっていただろう。
 阿波一国を領する蜂須賀家が徳島藩を形成している。その蜂須賀家の家老職に代々就いているのが淡路島を領する稲田家1万数千石の大名並の小名である。もともと主家と家老は長年対立していたが、明治維新で蜂須賀家は佐幕派・稲田家は尊王派と割れた。
 明治政府成立後は稲田家は徳島藩からの独立を企て、徳島藩の一部保守派は稲田家の姿勢に怒り焼き討ちを行う。廃藩置県を行い速やかに旧藩主から領地を取り上げたい政府は徳島藩への処置を穏便にし、稲田家には新たに北海道静内などに配置して開墾を命じた。

(余談2)因みに吉永小百合氏は、例えとしてあげた女優たちよりも早く生まれている。
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