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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「トンマッコルへようこそ」 カップルで泣きたい時に〔19〕 

トンマッコルへようこそ」 
楽しくも悲しい韓国の桃源郷

 

 
【原題】웰컴 투 동막골
【英題】Welcome to Dongmakgol 
【公開年】2005年  【制作国】大韓民国  【時間】132分  【監督】朴洸賢  
【原作】張鎭
【音楽】久石譲
【脚本】張鎭
【言語】韓国語 イングランド語   
【出演】鄭進永(リ・スファ人民軍大尉)  申河均(ピョ・ヒョンチョル韓国軍少尉)  スティーブ・テシュラー(スミス大尉)  姜惠貞(ヨイル)  
 
【成分】笑える 楽しい コミカル ファンタジー 悲しい 感涙 反戦 朝鮮戦争 1950年
 
【特徴】若手俳優パク・クァンヒョン氏の監督第1作目にして脅威のヒット作。朝鮮戦争時、秘境にある山村トンマッコルで北と南と米軍パイロットが鉢合わせて繰り広げられる喜劇と悲劇。
 
【効能】前半は癒し系。作中の荒んだ兵士たちがトンマッコルで心の平安を取り戻すように、鑑賞者も癒されていく。後半は村人を守ろうとする南北双方の脱走兵たちの姿に感涙。
 
【副作用】久石譲氏が音楽を担当している事もあり、ジブリ作品との類似点からパクリの印象を持つ可能性もある。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。
桃源郷で戦争を起してしまう映画。
 
 この作品は桃源郷(ユートピア)で殺し合いをやってしまう戦争映画である。ファンタジー映画としては珍しいシチュエーションだ。普通、ファンタジーで戦があっても剣と弓矢で闘う程度だ。重機関銃や重爆撃機などの大量殺戮兵器は登場しない。
 この作品は血と汗と硝煙と銃撃音が飛び交う戦場にユートピアを持ってくるという戦争映画である。戦場にユートピアなど、短編のSFドラマではあったかもしれないが、このようなあからさまに戦場と時代錯誤的楽園を主軸に置く作品、私はこれ以外には知らない。(余談1)

 時代は朝鮮戦争が激化した時期、山奥に李朝時代のようなオールドファッションの村人たちが住む陸の孤島のような桃源郷があった。(余談2)それがトンマッコルである。邦画で似たようなシチュエーションを描くとすれば、さしずめ激戦のフィリピン戦線で米軍の艦砲射撃から逃れてジャングルを彷徨ったら、秀吉・家康時代に渡来した日本人たちの子孫が当時の風俗そのまま守っている日本人町に出くわしたようなものだろう。

 ケタケタ笑うトンマッコルの象徴的少女ヨイルに扮する姜惠貞氏(カン・ヘジョン)の頭上を猛スピードで飛ぶレシプロ戦闘機。緑豊かでノンビリとした村の情景と人民軍と韓国軍とのリアルでエグイ戦闘場面。この対比はさすがだと思った。
 やがて、米軍パイロットと2人の韓国軍兵士と3人の人民軍兵士が鉢合わせし、無邪気な村人たちを挟んで互いに火花を散らす膠着状態が続く。ところがヨイルの不思議な魅力とチョッカイで均衡が破られ、互いに渋々矛を収める。北と南とアメリカの各軍人たちの間に友情が芽生えていく様は丁寧に描かれているので好感を持つ。

 賛否両論あるようだが、ラストは興味深い終わり方だった。トンマッコルは主人公たちの荒んだ気持ちは和ませたが、結局は戦争の渦に巻き込まれた。村の神通力は巨大な戦争の前には役に立たず、象徴的な少女ヨイルは銃弾にあたって死ぬ。北と南の主人公たちは村を爆撃から守るため、囮になって立ち向かう。囮作戦は成功し、主人公たちはお互いに顔を見合わせて最期の笑顔を見せ、彼らに降り注ぐ雨あられの爆弾は幻想的に描写される。
 ファンタジーでありながら作品自ら皮肉にもファンタジーをぶち壊し、トンマッコルの人々のように生きる可能性を見出しながら、結局は現実に戻り殺戮には殺戮でもって返すしかない無情、良質のダークファンタジーだ。

(余談1)太平洋戦争時のガダルカナル激戦を描いた「シン・レッド・ライン」では、冒頭で主人公の兵士が脱走して南洋の村でのどかに過ごす場面がある。

(余談2)朝鮮戦争は4期に分かれる。第二次大戦後、朝鮮半島は連合軍によって38度線を境に北朝鮮と南朝鮮に分け、北は中国・ソ連が後援する金日成政権(朝鮮民主主義人民共和国)が誕生し、南はアメリカが後援する李承晩政権(大韓民国)が誕生した。
 最初に仕掛けたのは北である。当時、北は日本が戦前に投資してつくった工業地帯を保有しており、南は工業化が進んでおらず水田と貧しい農民が占める経済的に困窮した地方だった。さらに南はアメリカ軍の政策で常備軍を少なく抑えられていた。金日成はこれを好機とみて攻撃を開始、朝鮮半島の大部分を制圧して釜山を包囲するだけになった。これが第1期。ソウルの韓国軍は逃げるときに漢江にかかる橋を避難民もろとも爆破した。このエピソードは「トンマッコル」にも描写されている。

 マッカーサーは北の人民軍の補給線が伸びきり手薄となった後方を叩くべくソウル西隣の仁川に国連軍を上陸させる。北の戦線は一気に崩壊し退却ソウル奪還に成功。韓国軍は勢いをかって38度線を突破し首都平壌を落とし中朝国境地帯まで制圧する。これが第2期、「トンマッコル」の舞台である。
 金日成の苦境を救うべく、中国が志願義勇軍の名目で人民解放軍を援軍として派兵、さらに当時のソ連が誇る最新ミグ・ジェット戦闘機を投入、韓国・国連軍は再び南へ退却、北朝鮮は再び38度線を超えソウルを占領、これが第3期。
 ところがアメリカに比べて装備が決定的に劣る中国軍の進撃は鈍り、マッカーサーは戦線を立て直して反撃、現在の軍事境界線で膠着状態になり、ソ連が絡んでいる朝鮮戦争の火の粉がヨーロッパに及ぶことを恐れたヨーロッパ諸国の思惑で、マッカーサーは総司令官を解任され、停戦となる。これが第4期。
 

 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆☆ 名作

 
【受賞】第43回大鐘賞・助演女優賞
 
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「トンマッコルへようこそ」オリジナル・サウンドトラック
 
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トンマッコルへようこそ (角川文庫) 張鎭
 

 
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ラストは空想シーンだったんですね。。。
無かったら超悲劇になっちゃうけど、
ちょっと救われるラストに仕上げたんでしょうね。
だいぶ前に見た作品なので、薄ら覚えなんですが今は。。。
[ 2009/05/21 02:37 ] [ 編集 ]
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韓国で800万人が笑って泣いた・・・という触れ込みの作品。
 朝鮮戦争の頃を舞台にしたファンタジーです。とても良い、誰にでもお奨めできる映画です。朝鮮戦争で連合軍が仁川に上陸し、人民軍が北に追いやられている頃。山奥に戦争とは無縁の、戦争が起こっている事すら知らない村、トンマッコルがありました。このトンマッコルに...
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