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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「恋空」 突込みどころを楽しもう〔12〕 

恋空」 社会現象を巻き起こした青春ドラマ。
 

 
【公開年】2007年  【制作国】日本国  【時間】129分  【監督】今井夏木  
【原作】美嘉
【音楽】河野伸
【脚本】渡邉睦月
【言語】日本語   
【出演】新垣結衣(田原美嘉)  三浦春馬(桜井弘樹・ヒロ)  小出恵介(福原優)  香里奈(ミナコ)  臼田あさ美(咲)
 
【成分】悲しい 不思議 切ない 学園ドラマ
 
【特徴】自宅と学校の限られた世界で過ごす思春期の少年少女が憧れる波乱万丈恋愛ファンタジー? 内容はともかく多くの若者が共感し社会現象を巻き起こした。原作者の人生経験に疑問。
 
【効能】恋に憧れる少年少女向き。
 
【副作用】レイプ被害者、ガン患者、またはそれらを抱えている家族から実情への無知無理解を指摘され、激しい嫌悪感と不快感と憤懣と冷笑を受けている。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。  
親の苦悩が描写されていない映画。

 私は野暮は言いたくない。原作の文章力を批判する声が大きいが、作者は文章のプロではないのでこの批判は的外れである。昔なら自分の文章が活字になって広く世間に読んでいただくまでに、大勢の審査員や編集者や文筆業の人々によってフルイにかけられていた。今はインターネットで駄文でも活字になるし、共感できる作品かそうでないかは編集者の仲介を経ずダイレクトに読者が判断することができる時代である。
 
 登場人物たちの未熟さや極端な展開に嫌悪する声もある。しかしこれも若者らしくて良い。「今どきの若者」との評価も多いが、シェイクスピアの恋愛悲劇「ロミオとジュリエット」の主人公たちも責任の重い公家の御曹司という自覚は無く、周囲の迷惑考えずに勝手に妄想の世界に浸って悦にいり、早い話が思慮浅くて暴力と性愛のことしか頭には無い。いとも簡単に暴力を振るうし人を殺すし、自分自身の命も安易に絶ってしまう。16世紀末の作品だから「古典」になるのだが、台詞は当時のスラングや猥談だらけで、いわば流行作家が描いた流行劇といったほうが良い。
 もし「恋空」が幸運にも数世紀後でも読み継がれていたら、可能性の一つとして恋愛悲劇の古典になるかもしれない。(殆ど皮肉である)いずれにせよ、携帯サイトを使って大勢の悩める思春期の子供たちの共感を得た作品を描いたのだから、これは驚くべきことだし評価すべき点である。

 しかし「恋空」を弁護できるのはここまでだ。決定的に納得できない箇所がある。納得できないというより嫌悪感に近い。それは親の描写だ。ソフィア・コッポラ氏「バージン・スーサイズ」も親の描写があまりに稚拙でステレオタイプでいい加減な描き方に不愉快だった(余談2)が、「恋空」はそれを上回る。
 原作者は大人らしい。ただプロの文筆家で壮年の男性が書いたフィクションなら、若者の需要に合わせた作品を制作できる技術に敬意を表するだろう。が、どうやら作中の主人公とほぼ等身大の人物らしい。監督も長らく思春期の子供を対象にしたドラマを手掛けてきた人で、若者にウケる構成には慣れている。
 何が言いたいのかというと、原作も映画も親の存在が希薄だからだ。居ないと不自然なので申し訳程度に存在するだけだ。社会にもまれながら子供をつくり育てることは楽ではなく、自分の娘や息子が作中のような目に遭うと、あんな物分りの良すぎる?態度にはなれない。家族を持った経験が無くても、交通事故で子供を失った親の姿や、苛めを苦に自殺した子供の遺影を前に悲痛な面もちの親がテレビニュースなどでよく出ているはず。作中の親は不自然だ。加えて病院の場面も不自然だ。(余談3)

 中高生の多くは家と学校の間の空間だけが社会だ。作品もほぼその限られた空間の中で、主人公たちは「劇的な物語」を思い描き、それを実行している。社会人から見ればヘンテコなシチュエーションも多い。原作者は未だに作中の主人公たちと同様の世界観しか持っていない可能性があるし、制作者側は思春期の子供たちをターゲットに映画を売るため、監督は自分でも可笑しいと思いながら制作者の意向を受けてワザと演出しているのかもしれない。
 「ロミオとジュリエット」はいい歳した男性作家が書いたから凄いのだ。「ベニスの商人」に登場するユダヤ人の描写も、悪役だからといってステレオタイプに描いてはいない。これがシェイクスピアが名作家である所以だ。もし「恋空」に登場する親や大人の描写が良ければ、私はむしろ絶賛する作品になったのだが、残念だ。

 この作品に感動された方は、所帯を持ち子育てに四苦八苦したり、親が大病を患ってオロオロするようになってから、もう一度ご覧になる事を勧める。印象が変わるはずだ。
  
(余談1)現在、自宅のMacのPC画面はガッキーの写真、Winでは細川直美氏、ノートパソコンには倉木麻衣氏を壁紙にしている。季節の変わり目に沢尻エリカ氏にしたり、若い頃の早見優氏・薬師丸ひろ子氏・ジェニファ・コネリー氏にしたりと気分転換している。連れ合いはそれについては極めて冷やかだ。

(余談2)娘全員が自殺するのだが、親にとってしてみればそれは人生や人格を全て否定されたに等しい衝撃であり、精神を完膚無きにまで粉砕され立ち直れない。作品では親を単なる抑圧者に描いているだけだった。作中には少女が「13歳の女の子の気持ちは解らないだろう」という趣旨の言葉を中年男性に投げかける場面があるが、少女も親の気持ちや大人の気持ちは理解できないのだ。百歩譲って「相身互い」だ。
 
(余談3)ガン患者に対する理解、レイプ被害者に対する理解も欠落している。原作者は等身大の青春を描けばいいのに、やたら波乱万丈に見せるために様々な事件を詰め込み過ぎている。そのうえ、未体験を補う想像力も乏しく、取材や勉強と行った作業も全く行っていない事が原作や映画からまる判りだ。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆ 可
 
晴雨堂マニアック評価
☆ 駄作

 

 
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そうですよね。
この映画は子供以外の視点では全く何も描かれていないんですもんね。

しかしまぁ、こんな作品で感動する中高生たちは幸せ者ですね。
まさに安上がりな感動ですね。
[ 2009/10/04 13:09 ] [ 編集 ]
 ホンモノの感動を経験した事が無い、原作者もファンもです。感動に飢えてジャンクストーリーに感動してしまう。食べ物と同じです。ちょっと可哀想ですね。

> そうですよね。
> この映画は子供以外の視点では全く何も描かれていないんですもんね。
>
> しかしまぁ、こんな作品で感動する中高生たちは幸せ者ですね。
> まさに安上がりな感動ですね。
[ 2009/10/04 18:40 ] [ 編集 ]
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誰かこの映画の面白さを教えてくれ!この映画のどこで泣くのか教えてくれ!と言いたくなるほどの駄作でした。2007年に女子中高生の圧倒的な支持を受け大ヒットしながらも、同年のワースト作品としても話題を大いに振りまいていたこの作品。いや~これで感動する人がもし『...
[2009/10/04 13:08] めでぃあみっくす
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