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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「さよなら、クロ」 家族と一緒に癒されよう〔15〕 

さよなら、クロ」 犬好きには感動の佳作。


 
【公開年】2003年  【制作国】日本国  【時間】100分  【監督】松岡錠司  
【原作】藤岡改造
【音楽】岩代太郎
【脚本】松岡錠司 平松恵美子 石川勝己
【言語】日本語   
【出演】妻夫木聡(木村亮介)  伊藤歩(五十嵐雪子)  佐藤隆太(斎藤守)  三輪明日美(横川町子)  
 
【成分】泣ける 笑える 楽しい 切ない かわいい コミカル 郷愁
 
【特徴】学校に迷い込んだ野良犬がそのまま番犬として「職員」になってしまう。牧歌的ヒューマンな学園物語。信州の美しい景色と旧制中学時代からの古い校舎がノスタルジーを誘う。
 
【効能】幼い子どもがいる家族団欒の場で観ると良し。雄大な日本の尾根と、ふもとに広がる畦道が美しく癒される。
 
【副作用】話が文部科学省推薦映画のようでつまらなく思える人もいる。犬を主人公にしている割に犬の影が薄い。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
魅力的な実話を元にした映画なのだが・・。
 
 素晴らしい実話を元にしている。噂には聞いていたが、一匹の黒い野良犬クロが信州の高校に迷い込み、そのまま居着いてしまう。クロは追い出されること無く生徒や教職員に可愛がられ、いつの間にか正式に「番犬」として職員名簿に記載され、用務員室をねぐらに校庭・教室・職員室など校内どこへでも闊歩し、教員・生徒・OBたちに惜しまれながら天寿を全うした。
 映画のクロが学校に居たのは1965年ごろから10年間(余談1)である。一見すると当時の学校も現在の学校もそれほど変わりはないが、動物虐待や一部保護者の非常識クレームに悩まされる現在の学び舎事情では、もはや学校と犬との良好な関係は築く余裕は無いかもしれない。

 映画のロケーションは実際にクロが居た深志高校(余談2)を中心に行われた。信州の美しい山々に囲まれた盆地に広がる田畑、旧制中学からの伝統校らしい重厚でクラシックな校舎、生前のクロが居た頃とあまり変わっていない街並み、舞台も素晴らしい。
 キャスティングも良いと思う。映画「ローレライ」でコンビを組んでいた妻夫木聡氏と佐藤隆太氏は、ここでも友人同志だった。クロ登場時の高校生を演じている妻夫木氏らは、当時すでに23・4歳くらいになっていたと思うが、さほど違和感は無かった。
 クロの世話をする事になる用務員の井川比佐志氏も良い味が出ている。校内にある用務員宿舎で1人卵かけ御飯を食べる寂しい用務員のところにクロが食事と寝床を求めてやってくる。用務員はニコリともせず、苦虫潰したような表情のままクロに残飯を与えたり、夜中の巡回に供をさせたりする。これが、クロの臨終のときに語りかける台詞「お前のおかげで、この部屋は暖かった」につながるので、犬好きには涙を流したくなる場面だろう。

 ただ、素材の良さに比して、やはり構成と演出は好意的に見れない。一つは、最初こそクロの視点で物語が始まるが、ほどなく妻夫木氏・伊藤歩氏・新井浩文氏の三角関係が軸になる。三角関係のもつれと新井氏の交通事故の一件でヒロインの伊藤氏が校内で自殺を図ろうとするのをクロがとめるのだが、良い場面なのは判るが無理に付けたエピソードのような感は否めない。
 そして一気に10年の月日が流れ、病気のクロを助けるために在校生たちが募金を始め、獣医になった妻夫木氏がクロの手術(余談3)を担当し、かつてクロのおかげで自殺を思いとどまったヒロインは妻夫木氏やクロを励ます。クロのおかげで校内が一つにまとまっていく。そして綺麗なラストへと流れるのだが、見ていてクロだけで物語を100分もたせるのは辛いのかな、と制作者側の苦労を気にしてしまうのだ。

 犬を主人公にした佳作では「南極物語」がある。昭和基地に置き去りにされた犬たちがどのように生き抜き力尽きていったかを描いており、明らかに犬が主人公で高倉健氏らは脇役だった。「クロ」の場合は、主に妻夫木氏ら高校生たちの青春模様を傍観する脇役として存在する。だからいま一つインパクトを感じることができなかった。
 私が監督なら、いきなり時間を10年とばさず、その間の節目節目でのクロと在校生や教師たちとの触れ合いなどを白黒写真のスライドという表現で走馬灯のように描写していく手法を使いたい。そしてクロの葬儀には社会人となった大勢の卒業生たちの参列を描きたいところだ。実際のクロも大勢の生徒や教員たちの巣立ちを体育館や正門などで見送ったはず、それを表現し切れていれば良かったと思うのだが。

 いずれにせよ、犬好きには印象に残る映画である。小さな子供と一緒に観に行くのに相応しい作品だろう。

(余談1)実際は1961年。

(余談2)深志は風林火山モノでは御馴染みの地名である。

(余談3)時代を感じさせる。今の獣医なら人間なみの設備で手術をするが、映画では殺菌ライトはなく電球スタンドで照らすだけ、マスクもせず素手でオペをする。

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クロは不思議な生き物 そこにいるだけで ほんとうにあたたかい 人は誰にでも 未来を善く生きたいと願う想いが 心の奥底で眠って...
[2009/05/25 21:21] Heaven of the Cinema
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