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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「長州ファイブ」 青春回帰〔24〕 

長州ファイブ
幕末留学生たちの青春

 

 
【公開年】2006年  【制作国】日本国  【時間】119分  【監督】五十嵐匠
【音楽】安川午朗
【脚本】五十嵐匠
【言語】日本語 イングランド語     
【出演】松田龍平山尾庸三)  山下徹大(井上勝)  志道聞多(井上馨)  三浦アキフミ(伊藤博文)  前田倫良(遠藤謹助)  原田大二郎(大村益次郎 村田蔵六)  榎木孝明(毛利敬親)  寺島進(高杉晋作)  泉谷しげる(佐久間象山)     
 
【成分】ロマンチック 勇敢 知的 切ない かっこいい 英国 山口県 長門 幕末 1860年代前半
 
【特徴】冒頭こそ「時代劇」だが、中盤以降は密航・イギリス留学の場面。松田龍平氏がかつての沖雅也氏のような白面で野太いキャラを演じている。
 山口県の政財界がバックアップ、徳島の「バルトの楽園」や香川の「うどん」といった具合に町おこし的な側面を持つ。
 
【効能】青春回帰。一心不乱に何かに打ち込んだ青春時代を思い起こさせる。かつての青春のエネルギーを回復させる、あるいはこれからの青春を爆発させていくカンフル剤。
 
【副作用】若干ダイジェスト的な構成になって消化不良。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。
時代劇として観ないでほしい映画。
 
長州五傑
実際の長州ファイブ
後列左遠藤謹助27歳 後列右伊藤博文21歳 中央井上勝20歳 
前列左井上馨27歳 前列右山尾庸三26歳
1863年9月23日ロンドンにて撮影
本作でもこの記念写真を捕る場面がある。


 中高生の頃に読んだ歴史物にイギリス留学時代の伊藤博文の写真が掲載されていた。後に「長州五傑(長州ファイブ)」と呼ばれる事になる仲間ら五人が背広姿(フロックコート姿)になって写した記念写真だ。私が中高生だった当時、若者の多くは耳が隠れる程度の長さまで伸ばしていたので、長州五傑の髪型がとても現代的に感じ、幕末とはいえ江戸時代の侍とは思えない現代の大学生のような風貌に見えた。伊藤博文の顔など童顔で高校の級友にも居そうな少年のようだった。(余談1)

 素朴な興味として、伊藤博文や井上馨は超が付く有名人で後に明治の大政治家になる事は判っているが、他の3人はこの後どのような一生をおくったのか知りたくなった。現代の私が言うのも変な話だが、幸いにも彼らが歴史に名を残す活躍をされていたことを知り、他人事ながら安心した記憶がある。特に私の興味を引いたのは、この写真の前列右側で一番偉そうに左手をズボンのポケットに突っ込みポーズをとっている粋な青年のその後の消息だった。

 この作品は、中高生時代に私が抱いた気持ちをそのまま映画化したような作品である。格好良くポーズをきめて一番目立つその青年の名は山尾庸三で、工部卿(工業大臣・通産相のようなもの)を務め、盲人学校を立ち上げた有能な官僚となる。映画ではこの山尾を主人公に物語が進む。山尾役には松田優作氏の息子龍平氏が扮した。
 一応「時代劇」のカテゴリーに入るが、時代劇として観ないでほしい作品だ。大抵の時代劇なら付き物のチャンバラ場面は殆ど無い。明治維新モノであれば新選組との激闘や官軍と幕府軍との戦争がメインになる事が多いが、これはその手の物語ではない。青雲の志を抱いた若者たちが密航で外国に渡り、慣れない外国生活で四苦八苦しながら命がけで学業に励む青春群像として観てほしい。

 監督は私のイチオシ映画「地雷を踏んだらサヨウナラ」の五十嵐匠氏である。「地雷を・・」では70年代初頭のインドシナの雰囲気が良く出ていた。「長州・・」もビクトリア朝時代のイギリスの雰囲気、つまり小奇麗なロンドンの上流階級の家にジメジメしたスラム街の雰囲気が再現され臨場感を高める。
 長州とは山口県であり、映画制作には山口県の政財界もバックアップしていた。全国的には地味な扱いだが、山口県下では大いに盛り上がったのではないかと思う。

 ただ、私にとっては残念な箇所がある。山尾たちは薩摩藩の留学生たちと親交を深め、彼らのカンパでグラスゴーへ移り造船技術を学びに行く場面があるが、あまりに簡単な描写で済ませてしまった。
 史実では、長州藩が後発で送り込んだ留学生が山尾がいた部屋に住むが、困窮と過労と厳しい寒さで肺炎になり、大学の教授たちの支援もむなしく客死する。このことはイギリスの新聞(余談2)も報じ、葬儀には薩摩藩留学生たちも参列した。山尾たちと薩摩藩留学生たちの間に友情と連帯意識があり、イギリスに於いて薩長同盟(余談3)が自然成立していたのである。
 ところが、映画ではこれら感動的エピソードは殆ど削除され、グラスゴーの紡績工場で出会った身障者の若い女性とのささやかなロマンスに差し替えられていた。また藩からの援助は乏しく資金は底をつきかけ、薩摩藩留学生たちのカンパでしのいでいたので、かなり困窮した留学生活なのだが、その厳しい状況が描写しきれていなかった。

 史実を映画化すると、シンプルに解りやすく史実を損なわない程度に「編集」する必要が出てくるので、やむを得ない処置なのは理解しているが、やはり残念だ。

(余談1)映画でもこの留学記念写真は再現されていて、松田龍平氏らは全く同じポーズで写真に写った。
 松田龍平氏のキャラはなかなか好感が持てた。荒々しいイメージの優作氏と違い色白で線が細くて頼りないイメージがあるが、ここでは生真面目・堅物で意思が強く白面だが野太いキャラだ。沖雅也氏を彷彿させる。

 映画の冒頭は有名な生麦事件から始まる。大名行列が通る際には沿道の庶民は平伏さなければならないのだが、その習慣やルールを知らない西洋人は騎乗したまま眺めていた。たちまち警備の侍に斬り殺される。
 英国側が作成した報告書には検死遺体の写真が添付されていて、惨殺死体が如何に酷いかが判る。鼻から顎にかけて欠損している遺体もあった。欲を言えば、生麦事件も時代劇的描写ではなくリアルに表現すれば、映画はもっと評判になったかもしれない。

(余談2)もともと、「長州ファイブ」の記念碑は留学先のロンドン大学では建てられていて、日本は最近になってこの事実を知った。

(余談3)幕末明治維新モノで度々取り上げられる事件。長州藩と薩摩藩は対立していたが、坂本龍馬斡旋で桂小五郎と西郷隆盛が会見して同盟が成立、討幕運動が大きく加速する。
 
晴雨堂スタンダード評価
☆☆☆ 良
 
晴雨堂マニアック評価
☆☆☆ 佳作

 
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[ 2009/05/29 11:33 ] 映画・・青春回帰 | TB(2) | CM(1)
当初、映画の題名だけしか知らなかったもので、一体どんな映画か・・と思ったのですが、長州五傑でした。
なんとも勉強不足です。
マイナーな映画館での上映だったもので、たった一人で見ました。力のある映画だったので、見た人が少なかったのは、ちょっと残念でしたね。
薩摩と長州の関係、もうちょっと掘り下げると、おもしろかったかもしれないですね。
今までは、人の帰属は藩という小さなものでしたが、もっと大きな器、日本というものを意識していかなければならない。それが次の一歩になるんだ・・というようなことも大事だったんでしょうね。
何かに突き動かされるような、強いエネルギーが、かもし出されていた時代に生きれたうらやましさも感じました。

長くなってスイマセン。
[ 2009/05/31 09:04 ] [ 編集 ]
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長州ファイブ 監督:五十嵐匠 出演:松田龍平、山下徹大、北村有起哉、三浦アキフミ、前田倫良、原田大二郎、榎木孝明、寺島進、泉谷しげる....
[2009/05/29 15:57] ひめの映画おぼえがき
5人の渡航は知っていたが、伊藤と井上・・・。ほかを知らんとは、、、迂闊だった。
[2009/05/31 08:54] 迷宮映画館
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