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ミカエル晴雨堂の晴耕雨読な映画処方箋

晴雨堂ミカエルの飄々とした晴耕雨読な映画処方箋。 体調に見合った薬膳料理があるように、 料理に合う葡萄酒があるように、日常の節目に合った映画があります。映画の話題をきっかけに多彩な生活になれば幸いです。詳しいレビューは「続きを読む」をクリックしてください。

「ハイヤー・ラーニング」 社会問題を考えたい時に〔8〕

ハイヤー・ラーニング」 
ジェニファー・コネリー氏の社会派参入。

 

 
【原題】HIGHER LEARNING
【公開年】1995年  【制作国】亜米利加  【時間】127分  
【監督】ジョン・シングルトン
【音楽】スタンリー・クラーク
【脚本】ジョン・シングルトン
【言語】イングランド語     
【出演】オマー・エップス(メリック)  クリスティ・スワンソン(クリスティ)  マイケル・ラパポート(レミー)  アイス・キューブ(ファージ)  ジェニファー・コネリー(タリン)  タイラ・バンクス(デジャ)  ローレンス・フィッシュバーン(フィリップス教授)  コール・ハウザー(スコット)   
 
【成分】悲しい パニック 勇敢 知的 切ない 学園 社会派
 
【特徴】アメリカが抱えている問題を、コロンビア大学を舞台に凝縮して描写。入学時はノーマルだった3人の新入生は学内で様々なトラブルに巻き込まれ、様々な思想グループに感化され、悲劇へと突き進む。
 ジェニファ・コネリー氏が同性愛者のフェミニスト学生を好演。ローレンス・フィッシュバーン氏が強靭な自制心を持った大学の知性を静かに熱演する。
 
【効能】アメリカの大学事情を判り易く描写されている。日本の大学でも水面下では同様の問題を抱えているので、アカハラ・パワハラ・キャンパスセクハラ・フェミニズム・民族差別・右翼などの最前線を垣間見れる。
 
【副作用】社会派作品なので、娯楽には向かない。特にジェニファ・コネリー氏の裸体を期待している方はがっかりする。
 
下の【続きを読む】をクリックするとネタバレありの詳しいレビューが現れます。記事に直接アクセスした場合は、この行より下がネタばれになりますので注意してください。  
社会問題の縮図を大学を舞台に描写。
 
 公開当時、かつての清純派子役だったジェニファ・コネリー氏が同性愛者役で女性同士との濡れ場を演じたことが評判になっていた。当時のジェニファ・コネリー氏は清純派からの脱皮を図っていたのか諸肌魅せる役が続いていた頃だった。作品内容自体は社会派でエンターテイメント嗜好ではないから、些か不本意な評判ではあるが社会問題に関心の無い方々からの興味を惹くには妥当な売り方かもしれない。
 ジェニファ・コネリー氏にとっては、それまでは清純派アイドル・セクシー女優と務めてきたので、この作品が本格的社会派映画の出演、いよいよ重厚な女優へのステップアップを記念するモノかもしれない。

 さて、この作品の主役はジェニファ・コネリー氏ではない。特に思想的な背景をもっていない3人のノンポリ新入生が主人公である。(余談1)平凡な女子学生役のクリスティ・スワンソン氏、陸上選手としての能力を買われ奨学金を得て入学した黒人学生役のオマー・エップス氏、内向的で不精な学生役にマイケル・ラパポート氏の面々だ。3人は伝統あるコロンビア大学の門を意気揚揚とくぐる。

 入学時は同じスタートラインに立っていた3人だったが、おのおの学内生活の中で翻弄され挫折を経験し、魅力的な先輩に感化されていく。まず女子学生はボーイフレンドからデートDVを受ける。彼女はもともと男女の性行為については嫌悪感は無かったが、彼氏が避妊具無しで強引な行為に及んだため男性不信に陥り、そこへジェニファ・コネリー氏が絡んでくる。ジェニファ・コネリー氏の役柄は、主人公たちの先輩で同性愛者、性差別撤廃を叫ぶフェミニストにして学生運動家である。
 黒人学生も陸上選手として活躍することを夢見るわけだが、学内で漠然とした冷たいモノを感じるようになる。彼はアイス・キューブ氏扮する黒人学生のリーダーの情熱に感化されていき、漠然とした冷たい空気が「差別」であると認識するようになる。そんな彼に厳しく冷静な判断を求める黒人の教授に名優ローレンス・フィッシュバーン氏。
 そして、学内に馴染めず友達もできず劣等感に苛まれ引き篭もっていくラパポート氏は、坊主頭の男性たちが集うネオナチのサークルに勧誘され、白人優越主義に染まって劣等感解消の暴力行為に及ぶ。黒人や同性愛者、それを支持する学生たちに向けライフルを乱射するのだ。(余談2)

 当時の人種民族差別問題や性差別、それに伴なうドメスティック・バイオレンス、アメリカの学園をしばしば恐怖に陥れる銃の乱射、シチュエーション全体を眺めればステレオタイプのエピソードを詰め込んだ学園モノだが、ステレオタイプ臭さが無く説得力がある。今観ても作品内容は現在進行形であり、下手な同和教育用の説得力の無い差別反対映画よりも充実した完成度を誇っている。
 特に「俺は差別されている」と訴える黒人学生役のオマー・エップス氏に対し、ローレンス・フィッシュバーン氏扮する黒人教授が「具体的に何をされた。暴力を振るわれたのか? 暴言を投げつけられたのか?」と質問し、具体的な事例を説明できず「でも感じるんです」と嘆くエップス氏に「むやみに『差別』と決めつるべきではない」と諭す。この辺は差別問題の難しさをよく現している。純粋で傷つきやすいエップス学生と、理想の最高学府を目指そうと腐心する思慮深い教授の相関関係がこの作品の主軸だ。

(余談1)「ノンポリ」とは、「ノン・ポリティカル」の略で、日本では一般に学生運動に参加しない学生や政治的関心の無い学生を指す。運動家には逮捕歴を勲章とする者が多く、未だ修羅場をくぐっていない運動参加者を「ノンポリ(ノン・ポリス)」と呼ぶ人がいた。

 因みにタイトルの「ハイヤー・ラーニング」は「高等教育」という意味。いわばアメリカの大学事情を描いた作品で、それを描くことでアメリカの社会問題を浮き彫りにするのが狙いである。
 
(余談2)マイケル・ラパポート氏はプライベートで黒人の友人が多く、だからこそ学内で淀む人種差別・性差別、それにともなう暴力をテーマにした作品で敢えてネオナチ少年の役を選んだ。
 

 
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